リオ+20:ボコバ・ユネスコ事務局長寄稿 水へのアクセス格差

毎日新聞 2012年05月21日 東京朝刊

 2010年8月、大洪水に見舞われたパキスタンを上空から視察したことを思い出します。自然災害の脅威を目の当たりにすると同時に、飲料水の確保に困っていた土地で起きた災害という皮肉に、人間の無力さを痛感させられました。

 しかし、科学と技術は水害の軽減に重要な役割を果たします。パキスタンでは現在、茨城県つくば市にある、水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)の協力で、衛星観測による雨量データなどを用いた洪水予警報を導入しています。

 ユネスコは、水関連プログラムや世界水白書を通じて国際間の科学協力を促進し、約160カ国で1万5000人以上の専門家を育ててきました。国境をまたいで循環する水の管理には、各国間で情報の共有化や話し合いが不可欠です。国連は13年を国際水協力年と定めましたが、最終的責任はおのおのの国と市民にかかっています。

 私たちの生活は、かつてない危機に直面しています。過去50年で、世界の地下水資源の活用は3倍に増えたにもかかわらず排水の80%は処理されず、日々2・5億人が汚染水による死の危険に瀕(ひん)しています。これが、水へのアクセス格差から生まれる対立を悪化させているのです。

 水はエネルギーや食料、健康に欠かせない資源であり、持続可能な方法で地球環境を再建するカギでもあります。10年に国連は、水へのアクセスを基本的人権と認めました。今年のリオプラス20も、グリーン・エコノミー実現に向けた水の重要な役割を確認する場となるでしょう。【イリナ・ボコバ=ユネスコ事務局長】

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