こんなん書きました:阿部真大さん 「地方にこもる若者たち」

毎日新聞 2013年07月12日 大阪朝刊

 ◆「地方にこもる若者たち」(朝日新書、798円)

 ◇「新しい公共」への期待託し

 岡山県倉敷市と周辺に住む20〜30代40人強の聞き取り調査やその他の大規模調査データで、「覇気がない」「内にこもっている」と批判されがちな、昨今の、特に地方の若者を擁護した。「私も地方都市の郊外出身で核家族の一人っ子。彼らに共感するんです」

 ここ10年ほど、ショッピングモールなど大型店の充実で、地方都市でも大都市圏に近い消費生活が送れるようになった。買い物だけでなく、飲食や映画もそこそこ楽しめるモールは、年収300万円以下の層が多い彼らが余暇を過ごすのに、格好の場所だ。

 だからこそ、調査対象の6割以上が、大都会でも田舎でもなくモールがあるような「地方都市に住みたい」と答えた。「適度に楽しく自然もある地方都市の魅力は高い。若者の感覚は、地方分権の時代にも即しています」

 地方は地縁がきつそうだが、実は今や地域と若者のつながりは都会より薄い。「人間関係が楽で便利な郊外型の消費生活は、ずっと人々の夢だった。その実現をただ批判しても無意味です」

 他方、東日本大震災被災地の調査では、人口10万〜20万人の地方都市で最も、「外部のNPOやボランティアが頼りになった」という声が多かった。地方の閉鎖性も変わりつつあるようだ。20代女性が全世代で最も「みんなで議論して物事を決めること」に前向きとの結果も。

 「慣習が根を張る古い地域社会から自由でバラバラの若者の方が、多様な人と『新しい公共』を築けるかも。その可能性を見ず、自分の価値観に『こもっている』のは、むしろ大人の方かもしれません」【鈴木英生】

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 ■人物略歴

 ◇あべ・まさひろ

 甲南大准教授(社会学)。1976年岐阜市生まれ。著書『搾取される若者たち』『居場所の社会学』など。=宮武祐希撮影

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