重大ニュース参考記事

文字サイズ変更
はてなブックマークに登録
Yahoo!ブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷

この人、この時:作家・栗本薫さん 物語に憑かれて/3(05年6月1日掲載)

 ◇キャラ--どこかですれ違うかも

 <書き継ぐにつれ、物語の中の人物や風景がいっそう重量感を帯びて感じられるようになった。>

 例えば、2万人の軍勢が移動する。2000人の騎馬団がいるなら、控えも含めて約3000頭の馬がいる。すると3000頭のひづめの音がして、いななきが聞こえる。寒い朝なら白い息が立ちのぼり、汗をかけば湯気が上がる。体臭もあるし、ふんもする。現実と地続きな感じがします。

 野営するなら、下士官が2万人分の食事を調達するため走り回り、料理人の炊(かし)ぎの煙が上がる。新兵が川まで洗濯物抱えて出かけたり……。全部描写するかどうかは別として、頭の中にすべて見えます。それぞれの国に独自の歴史があり、気候はこうだからこういう産物が取れ、人口はこれぐらいと分かる。メディアが未発達なので少し離れると国が滅んでいても分からない。そういう距離感も肌身で感じます。

 登場人物も私にはもはや生身の人です。主要なキャラクターなど、街を歩いていていつかどこかですれ違うんじゃないか、そんな気さえします。

 <それは読者にも伝わるという。>

 グイン・サーガのミュージカルやイベントでキャラクターに扮(ふん)した人たちがいて、よろいなどの小道具もあって、ああ、みんなの心にすでにグインやナリスやイシュトヴァーンが生きているんだなと実感しましたね。

 物語には独自の論理と倫理があって、リアルであるためにはそれが大事だと思います。吉川英治さんの「新・水滸伝」を読んだ時にちょっと優等生過ぎるのじゃないかと思いましたね。例えば中国の古典の水滸伝だと、黒旋風李逵(こくせんぷうりき)が母親を殺されて仇(あだ)を討つんですが、敵を殺したあと腹が減る。ご飯が炊いてあるがおかずがない。そこで今殺した男の肉を切って焼いて食べちゃう。そういう原始心性的というか、過激な部分が全部、吉川版だと削られている。でもそういうむちゃなことが現実だった時代があるはずです。それを現代の倫理で切り捨てると、きれい事になって、物語の呪術的な力を奪ってしまうことになります。=つづく【聞き手・大森泰貴】

2009年5月27日

重大ニュース参考記事 最新記事

重大ニュース参考記事アーカイブ一覧

 

おすすめ情報

注目ブランド