歌壇・俳壇
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毎日俳壇
西村和子・選
2/22 02:01 346文字雨はまだ雪に変はらず夜半の風呂 所沢市 堀正幸<評>雪の予報が出ているのだろう。現状を述べていながら、いつ雪に変わっても不思議はない夜気の冷えこみを語っている。盆梅や思はぬ処から一花 我孫子市 森住昌弘<評>毎日手元に置いて開花を待っている盆梅なればこそ、意外なところに咲いた一粒はうれしい。一病に負
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毎日俳壇
井上康明・選
2/22 02:01 340文字風花のひとつ砕けてガラス窓 姫路市 板谷繁<評>「風花」は晴れている日、山から雪片が舞って来ること。そのひとかけらがガラス窓に砕け散る。窓に散る雪の結晶が思い浮かぶ。右中間飛球を追つて青き踏む 東京 吉田かずや<評>右中間とは野球場のライトとセンターの間の意。ボールを追い萌(も)え出た芝を走る草野球
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毎日俳壇
小川軽舟・選
2/22 02:00 332文字探梅の胸にトリスの小瓶かな 霧島市 久野茂樹<評>昔っからウイスキーはトリスと決めて変わらない。懐中に小瓶を忍ばせての探梅は寒さも忘れて最高の気分だ。なまはげに体育教師駆り出さる 久慈市 和城弘志<評>田舎の高齢化でなまはげ役も人手不足だ。大声で体力のある体育教師は恰好の人材。息白し怒りなかなか収ま
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毎日俳壇
片山由美子・選
2/22 02:00 329文字冬山の乾ききつたる谺(こだま)かな 鯖江市 木津和典<評>冬山が返す谺を「乾ききつたる」ととらえた感覚が鋭い。声に出して読むと、この句のもつ緊張感が伝わってくる。春一番走りて渡る交差点 神戸市 柴田いつ子<評>春一番に押されて走ったというより、身も心も軽くなった季節の明るさを感じさせる。探梅や阿騎野
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毎日歌壇
篠弘・選
2/22 02:00 473文字冬の夜の漁師の町の窓々の灯の寄り合いて一つとなれり 垂水市 岩元秀人<評>海岸線に沿って、点々としていた灯火が、夕闇が深まるにつれて、ひと連なりになっていく明るさは、感傷を誘う。高齢となりて就きたる職場にて新人いびりの洗礼受くる 玉野市 松本真麻<評>職域は造船所の洗面所など。冬に水を使う仕事は、な
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毎日歌壇
米川千嘉子・選
2/22 02:00 458文字午後八時フードコートが夢の跡明日の仕込みの音も静けく 福岡市 西田浩之<評>緊急事態宣言下夜8時で閉まるフードコート。短い昼間のにぎわいを「夢の跡」とも感じつつ、無言の仕込みが続く。羊羹(ようかん)を等間隔にスッスッと切る祖母の手が経てきた時間 横浜市 友常甘酢<評>着目点が面白い。羊羹を切る手際に
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毎日歌壇
伊藤一彦・選
2/22 02:00 455文字ごりんごりん、骨けづるやうな音なればオリンピックは誰のしあはせ 千葉市 芍薬<評>何のためのオリンピックかが問われている今を「ごりんごりん」の語呂合わせで歌う。「骨けづるやうな音」とは巧みだ。マスク顔一年かけて見慣れしか床屋の犬が尾を振って来る 静岡市 柴田和彦<評>マスクの顔に人同士も慣れたが、犬
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毎日歌壇
加藤治郎・選
2/22 02:00 480文字0匹の天使が床に降りて来て過失を告げる(告げない) さいたま市 緑川皐月<評>現代アートのような作品だ。天使は0匹で存在しないが降りて来た。過失を告げたのかどうか。宙吊(づ)りの世界である。昨日今日明日明後日もザクザクザクザク車いすはゆくのだ 札幌市 橘晃弘<評>雪の道だろう。迫力のある音である。車
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ことばの五感
ベッドサイドにて=川野里子
2/22 02:00 659文字・しばらくを付ききてふいに逸(そ)れてゆく カモメをわれの未来と思ふ 黒瀬珂瀾 このところ毎日同窓会を開いている。高校の同級生であるKがいま緩和ケア病棟にいて一日一日を大事に過ごしているからだ。コロナ禍で直接面会できないぶんオンラインなら自由に会える。 Kがまだいくらか自由が利き体力が残っていた時期
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点字毎日 点毎歌壇 嶋茂代・選
2/21 10:02 1168文字もうもくの われの せかいに せんは なし そらと だいちを くぎる せんさえ 長野県 広沢里枝子 【評】「せん」は人間がつくったもの、自然界には境界線はない。世界中に蔓延(まんえん)しているコロナ菌からさえもこれを学ぶことができる。「せん」とは何かを改めてはっと気づかせてくれる。かんとうか こら
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毎日ぷらざ「年間賞」 /香川
2/20 06:37 1598文字香川面で毎月掲載している短歌、俳句、川柳の読者投稿欄「毎日ぷらざ」の2020年1~12月の優秀作品の中から、年間賞が決定した。3部門「大賞」「準大賞」「支局長賞」の受賞者には賞状が贈られる。【まとめ・佐々木雅彦】 ◆短歌 ◇大賞 めぐみさん我が子と同い年なれば我も寄り添う永き歳月 観音寺 大西寿美
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毎日俳壇
片山由美子・選
2/16 02:02 361文字春雨の降るともなしにあがりけり 東京 渡邊顯<評>降るというほどのこともなく止んでしまったというのが春雨らしい。しらべの美しさが一句の味わいとなっている。水仙の蕾(つぼみ)ほころぶ手術前 志木市 谷村康志<評>開きかけた花を前にして、きっとうまくいくはずとみずからに言い聞かせているのだろう。蠟梅(ろ
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毎日俳壇
西村和子・選
2/16 02:02 325文字遠く富士見ゆれば今日も蒲団干す 東京 種谷良二<評>東京から富士山が見えるのは寒い日が多い。晴天が続いているのだろう。「も」に生活者の喜びが託されている。熱燗や小心者と見破られ 志木市 谷村康志<評>ということは豪胆を装っているのだ。内心の忸怩(じくじ)たる思いを季語が語っている。護符添へて京より届
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毎日俳壇
井上康明・選
2/16 02:02 349文字雲多き出雲なれども春は春 島根 重親利行<評>春の到来をことほぐ国褒(くにほ)めの一句。出雲は神話の国、神集う聖なる地。宍道湖の拡がる出雲平野、春霞(はるがすみ)を思い浮かべた。店頭のレンタルバイク風光る 東京 永井和子<評>街角の風景。貸し出し用のバイクが並び、人が乗って走り出すのを待っている。風
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毎日俳壇
小川軽舟・選
2/16 02:02 318文字冬田道彼岸花の葉あをあをと 大阪 池田壽夫<評>花が終った後の彼岸花を気に掛ける人は少ない。冬田道に驚くほど青々と葉を茂らす。そこに目を留めたのが新鮮。風は火に読経高まる札納め 東京 山下留美子<評>読経とともに札を焚く。「風は火に」の表現で風にあおられた炎の勢いが見えてくる。春を待つ新幹線の窓に月
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毎日歌壇
加藤治郎・選
2/16 02:02 495文字あなたの番になって話してくれたのは床がなんども焼け落ちる夢 東京 柳本々々<評>あなたは悪夢を話してくれた。大惨事である。床が焼け落ちるシーンが執拗(しつよう)に繰り返される。深層意識を語っている。朝焼けに染められている頃だろう眼鏡を外すあなたの頰が 鹿屋市 山上秋恵<評>あなたは遠くに居る。眼鏡を
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毎日歌壇
伊藤一彦・選
2/16 02:02 445文字白鳥が北へ帰れば燕(つばめ)来る駐機場のつばさいつ世界飛ぶ 川越市 小畔川霞<評>春には白鳥は北へ飛び南からは燕が飛んでくる自然の営み。だが、駐機場の飛行機は減便のため飛べないことを嘆く。街の灯をこれ程までに飲食に委ねていたと知る午後八時 福岡市 西田浩之<評>街の灯とは飲食店の灯だったのだと改めて
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毎日歌壇
篠弘・選
2/16 02:02 459文字ドップラー効果の起こるざわめきが風に転がり消えてゆく街 高槻市 兼田静<評>波の音が伸びたり縮んだりする現象の起こる街が、深夜一人でいる時などに不意に幻覚のようによみがえる懐かしさ。わが家にて一人くつろぐわが居場所別な名前を「物置」という 高崎市 門倉まさる<評>あえて書斎と言わずに、書籍が山積する
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毎日歌壇
米川千嘉子・選
2/16 02:02 494文字牛丼をかじかむ両手でつつみこむ僕の翼で生きていきます 四日市市 早川和博<評>寒さと疲労と空腹から救い出してくれる牛丼。だがこれが自分の人生なのか。丼を包む手が翼、というのが印象深い。庭に立つ埴輪(はにわ)の口のあんぐりと現世は窮地にあるといふのに 春日市 林田久子<評>埴輪のレプリカ。コロナ禍の「
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出会いの季語
ひとり言な日々=高田正子
2/16 02:02 602文字行きつけの場所が増えた。このところ私の中でぐっと存在感を増している。なにしろバス1本で行ける。乗り換えも乗り継ぎもいらない。ただし30分に1本のバスに、30分ほど乗るのだが。 そこは谷戸ひとつ分を大きく囲んで公園となしている場所である。立春前にも赴いたが、広くて人影はまばら。花粉症でさえなければ、
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