歌壇・俳壇
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うたの雫
知らないという罪=加藤英彦
3/8 02:02 649文字<うたの雫(しずく)> 今年二月、平山良明の第一歌集『あけもどろの島』が復刊された。平山は一貫して沖縄を詠い続けてきた歌人として知られる。初版は一九七二年一月、本土復帰の数カ月前で沖縄はまだ米軍の統治下にあった。今般、現代短歌社の第一歌集文庫として再読できることを歓(よろこ)びたい。平山翁現在八十
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毎日歌壇
伊藤一彦・選
3/8 02:02 457文字震災を笑い話にした友が十年を経てコロナ禍の自死 仙台市 三本松拓<評>震災の辛(つら)い体験を逞しく乗り越えてきていたと思う友人の死。コロナ禍のさなかの死といえ震災の影響を考える作者。どの空を仰ぎても父そこにいてわが頭を撫でんと手を下ろしくる 垂水市 岩元秀人<評>空にいるだけでなく頭をなでてくれる
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毎日歌壇
篠弘・選
3/8 02:02 460文字歩み来て山峡の道にたたずめば笹鳴き谷に消えてゆきたり 鹿嶋市 加津牟根夫<評>うぐいすが冬、舌鼓を打つようにチチッと鳴く声。はからずも聞くことができた爽快感を味わうひととき。すすきの穂冬の日差しを吸ひながらガラス細工のひかり放てり 東京 浅倉修<評>凍り付いたすすきの穂先が、きらきら光るという、比喩
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毎日歌壇
加藤治郎・選
3/8 02:02 472文字生活は小川のようさせせらぎをひとり聴く日もあってセ・ラヴィ 八王子市 内山佑樹<評>生活を思う。小川のようにただ流れてゆくが、せせらぎにやすらぐ。これが人生さと受け入れるのだ。セの音が響く。植え込みに見ていた猫は近寄れば陽だまりになりそれからは春 名古屋市 古瀬葉月<評>春の訪れを歌った。猫はいつし
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毎日歌壇
米川千嘉子・選
3/8 02:02 472文字指先で働いていた人たちよ午前十時の粉雪みたか 四日市市 早川和博<評>上句は室内でパソコン中心の仕事をする人、と理解した。寒い戸外で働く人とそれぞれ見えているものが違うのだ。ママチャリもチャリンコもチャリも素敵だけどわたしが乗るのはいつも自転車 つくば市 松田幸枝<評>人や時代で呼び方はさまざま。作
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毎日俳壇
西村和子・選
3/8 02:01 338文字曲がりたる指に手袋なじみけり 米子市 永田富基子<評>柔らかな皮手袋だろう。曲がった指をいたわる心と、なじんだ手袋への愛着がさりげなく表現されている上質の句。一棟に十戸の灯避寒宿 深谷市 酒井清次<評>十戸の灯を多いと見るか少ないと取るかで味わいが変わる。昨今の状況から淋(さび)しい数と見た。座布団
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毎日俳壇
井上康明・選
3/8 02:01 351文字春風やパリ一望の丘に立つ 伊賀市 福沢義男<評>モンマルトルの丘だろう。念願がかなっての渡仏だろう。「春風」にその喜びが表れている。春風が作者とパリを大きく包む。風の日の駐輪場の寒さかな 岡山市 深井克彦<評>駅近くなどの駐輪場はがらんと暗く、風が吹くと砂埃(すなぼこり)が舞って寒い。寄る辺ない心情
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毎日俳壇
片山由美子・選
3/8 02:01 346文字料峭(りょうしょう)や焙(あぶ)れば反りて一夜干し 和歌山市 鈴木憲一<評>イカかカレイか、「反りて」が新鮮でうまそうだ。外はまだ風が冷たい頃の引き締まった気分が一句を引き立てている。風光る水上バスの二階席 東京 渡邊顯<評>ものみなまぶしく感じられる春。屋根のない二階席で風に吹かれるのも心地よいこ
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毎日俳壇
小川軽舟・選
3/8 02:01 329文字丸きこと地球に同じしやぼん玉 高知 渡辺哲也<評>そう思うこと自体が春めいている。並べることでしゃぼん玉は健気(けなげ)に、地球はあやうげに思えるのがおもしろい。一点をめがけて己れ放つ鷹 神戸市 中林照明<評>一点は獲物なのだ。狙い定めたら無心で己を放つ。作者のユニークな見方に感心した。初閻魔(はつ
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毎日歌壇
毎日歌壇 入選100首達成 沼津・後藤元子さん、16年半の道のり 音楽経験生かし創作 /静岡
3/7 05:45 863文字沼津市柳町の後藤元子さん(80)が、毎日新聞全国版の「毎日歌壇」で入選100首を達成した。後藤さんは「初めての入選から16年半の道のりでした。短歌作りの楽しみは、自分でもよい歌ができたと思えるとき。でも、それがめったにないんですけれど」と喜んだ。【石川宏】 後藤さんは県立沼津西高出身の元ピアニスト
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詩歌文学館賞決まる
3/6 02:01 139文字第36回詩歌文学館賞(日本現代詩歌文学館振興会など主催)が5日発表され、詩部門は森本孝徳さん(39)の「暮しの降霊」(思潮社)、短歌部門は俵万智さん(58)の「未来のサイズ」(角川文化振興財団)、俳句部門は宮坂静生さん(83)の「草魂」(同)に決まった。贈呈式は10月23日。
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定型の窓から
時代の大きな曲がり角=片山由美子
3/3 12:45 1264文字◇トランプの絵札のように集まって我ら画面に密を楽しむ 俵万智 ◇きのふとは一日限り鳥雲に 片山由美子 新型コロナウイルスが世界中に広がり始めて既に一年、感染予防をすべてに優先する生活が身についた。 ライフスタイルが大きく変わった人も少なくないようだ。自粛生活の間に“断捨離”を進めたという話をよく聞
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毎日俳壇
井上康明・選
3/1 02:02 352文字涅槃(ねはん)西風(にし)大樹は枝を広げたる 東京 熊坂清子<評>涅槃西風は、釈迦入滅とされる陰暦2月15日前後の西風。春寒の風に、芽吹きはじめた大樹の枝が影とともに揺れている。くろぐろと山かぶさりぬ薬喰(くすりぐい) 東京 徳原伸吉<評>薬喰は、冬、滋養のために鹿などをたべること。夕暮れの山を背景
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毎日俳壇
小川軽舟・選
3/1 02:02 329文字春隣犬の鼻先くろぐろと 香取市 多田ひろみ<評>濡(ぬ)れて艶(つや)やかな犬の鼻先を見てもうすぐ春だと感じる気分はわかる気がする。犬も春が近いと嗅ぎつけたみたいだ。ひらめきのレシピが楽し春隣 横浜市 牧野晋也<評>素材の意外な組み合わせや調味料。少々失敗しても、自分の料理だと思えば楽しい。牡丹(ぼ
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毎日俳壇
片山由美子・選
3/1 02:02 347文字春ショール鏡に見せるだけのこと 奈良 栗田秀子<評>どこへ出かけるわけでもなく、鏡の前で春ショールを肩にかけてみたのだが、「鏡に見せるだけのこと」が巧い。こんなにも小(ち)さきものまで蜆汁(しじみじる) 湖西市 宮司孝男<評>そもそも蜆は小粒だが、こんなに小さなものまで食べてしまうのかと哀れを感じた
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毎日俳壇
西村和子・選
3/1 02:02 343文字手を浄(きよ)め向ふ教室冬うらら 堺市 柞山敏樹<評>疫病禍の新たな習慣からも句ごころは生まれる。作者は講師。「浄め」の一語から清新な心が読み取れる。手のひらに泡立つシャボン春隣 加古川市 伏見昌子<評>こんなことにも季節感を覚える。日常からすくい上げる詩を大切にしたい。胸中に母のひと言雪涅槃(ゆき
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毎日歌壇
伊藤一彦・選
3/1 02:02 447文字あの頃はコロナっていうのが流行ってさ…そんな未来がいつか来ること 国立市 佐藤建<評>新型コロナウイルスの今後の行方がまだまだ心配だからこそ歌われた作。未来への希望をもつことで今日を生きぬこうと。春昼や大口開けて目を閉じて太陽飲んだ腹の底まで 東京 宇治きみとき<評>のどかな春を待望する歌だろう。「
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毎日歌壇
米川千嘉子・選
3/1 02:02 460文字イノシシの増えしとぞいう福浪線峠の熊笹さざめき聞こゆ 福島市 大槻弘<評>福島と浪江を結ぶバス路線、峠の熊笹の音に野生化して増えたというイノシシを思う。置き忘れられた多くの現実がある。生活と言えるんだろうか戦闘の前夜のような孤独な夕餉(ゆうげ)は 広島市 堀眞希<評>「戦闘前夜」は大げさだろうか。そ
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毎日歌壇
加藤治郎・選
3/1 02:02 486文字幻想の犀(さい)に降る雪やわらかで掬(すく)うとすぐに薔薇(ばら)に変わって 京都市 鹿ケ谷街庵<評>幻想の犀は寺山修司を踏まえている。結句の薔薇が魔法のように鮮やかである。白い世界に赤い薔薇が思い浮かぶのだ。あなたにはあなたの雪のわたしにはわたしの雨のゆうぐれのあり 垂水市 岩元秀人<評>あなたと
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毎日歌壇
篠弘・選
3/1 02:02 440文字使い易い部下を気楽に走らせて不意に転勤希望出されつ 東京 野上卓<評>現職中の衝撃の一つ。何かと雑用を押しつけてきた部員が、異動の希望を提出してきた痛手は、今も忘れられない。「老年性不安症候群」といふ病名もらひ米研ぐ夕べ 霧島市 久野茂樹<評>高齢者の原因不明のうつ状態で、目に見えた成果が上がるのを
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