
女性読者からの投稿欄「女の気持ち」。「男の気持ち」とともに出来事や悩みなど「時代の心」を映しています。
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油圧ジャッキ 大阪府松原市・岡野律子(無職・66歳)
2022/7/6 05:18 552文字先日、ホームセンターで油圧ジャッキを見かけたとき、ある出来事を思い出して胸が熱くなった。本来は車のタイヤ交換などをするときに車体を持ち上げるために使う工具だが、私は昔、母のベッドの下に設置していた。 今でこそ、プロの指導を受けて経験を積み、ちゃんと母を移乗できるようになった。しかし、母の介護を始め
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母の口笛 鹿児島市・岡村梨枝子(70歳)
2022/7/6 05:17 554文字曇り空の下で、水田が茶色に光っている。整列したての早苗は、まだヒヨヒヨと細く頼りなげだ。山の向こう、空の端に入道雲が立ち上がる頃には、一面の青田に変貌しているだろう。その景色を思い浮かべると、耳の奥に母の口笛が響き、風が真正面からさわさわと吹き渡ってくる。 学生時代、初めてのアルバイトで山あいの集
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清掃と私 愛知県豊川市・宇井沙織(清掃作業員・59歳)
2022/7/6 02:00 517文字私の職業は清掃作業員です。地元の総合病院で1日8時間、週5日働いています。 病棟、外来の患者さんは優しく、心温まることがたびたびあります。よくかけられる言葉は「ありがとう」です。また「元気で働けるうちが幸せなのよ」との言葉もいただきます。 病と闘うご自身だっておつらい立場なのに、清掃員の私に優しく
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孫の弁当作り 三重県名張市・竹内完子(無職・84歳)
2022/7/5 06:08 526文字娘の夫が新型コロナウイルス禍の真っただ中に単身赴任した。娘も月の半分は赴任先に行き、留守宅には男の孫2人が残ることに。上は社会人3年目、下は大学4年生だ。 幸いにというか、娘のしつけが良かったのか、2人とも男子にしては家事はうまい方だと思う。それぞれ得意分野があるようで、洗濯は、洗う、干す、取り込
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トム様! 長崎県佐世保市・中川明子(59歳)
2022/7/5 06:07 568文字軽めのランチの後、ティラミスを頰張りながらエスプレッソ2杯を飲み干して映画館へと向かった。運の良いことに、その日スクリーンへの扉は早めに開かれており、私は一番乗り。自由席だが、いつも通りの字幕がよく見えるやや右側の中央席に着席した。ロックコンサートを待つようなワクワク感があった。 今回は準備万全だ
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姉の上京 東京都足立区・松田孝子(会社員・67歳)
2022/7/5 02:00 530文字故郷の岩手から姉が上京しました。茨城に住んでいる娘が車で迎えに行き、お土産をどっさり積み込んできました。 ダイコンやジャガイモ、タマネギ、トウモロコシ、トマト、山菜などに加えて米、赤飯やパン、まんじゅう、お菓子と食料が満載です。我が家はコロナ禍の影響で収入が激減しており、姉はひもじい暮らしを心配し
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お国言葉 大阪府高槻市・山本千鶴子(無職・80歳)
2022/7/4 06:18 549文字6月2日の本欄「ハンドクリーム」に出てくるお国言葉に胸がいっぱいになりました。54歳で亡くなったお母様へのやさしさにあふれ、お母様の笑顔を想像しました。 「どんどん使いんさいよ、また買ってあげるけ」。故郷を離れ、大阪で就職された娘さんの無事を祈る中で、娘の思いやりに心満たされておられた姿が目に浮か
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夫の補聴器 福岡県宗像市・川辺美智代(69歳)
2022/7/4 06:18 551文字昨年の4月下旬、私は夫を伴って補聴器専門店へと出向いた。夫はゴールデンウイーク明けに行ってみると言っていたが、どうせ先延ばしにするのが落ちだと思い行動した。あれこれ試してみて、かなりの高額だが夫のためならと思い購入することに決めた。 ところが当の本人はうかぬ顔。それでもお願いして店を出た。帰りの車
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反省 三重県伊勢市・塚本めぐみ(主婦・61歳)
2022/7/4 02:00 550文字6月23日本欄「尊敬する母」を読み、自分の情けなさをひどく恥じた。 私の母は86歳。昨年両目の白内障の手術を、今年3月には肺がんの手術を受け、療養中だ。以前は週3回、父とグラウンドゴルフに出かけ、近くの神社の掃除に行っていたほど元気だった。 数年前から補聴器を着けるようになったのだが、時折会話がか
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青い鳥を求めて 大阪市・匿名(パート・68歳)
2022/7/3 05:54 537文字次女が孫娘を連れて戻ってきて早いもので2年になる。孫娘は3歳半になり、うるさいほどにしゃべりだし、可愛い盛りだ。毎日、元気に幼稚園に通っている。 次女もやっと落ち着いて近くの老人ホームでアルバイトを始めた。ただ、元夫からの連絡が全く途絶えてしまい、私もずっと気になっている。次女はたまりかねて、先日
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母の誕生記録 東京都調布市・秋山明美(主婦・60歳)
2022/7/3 02:00 566文字独居の母が入院中、実家の書棚をのぞくと朱墨で「永久保存」とある厚い茶封筒を見つけた。帰省のたびに同じところを開けているが初めて気づいた。母に確かめると不思議そうに「知らない」と言う。 封筒の中身は1933(昭和8)年に祖父が収めた母の誕生記録だ。紅白のこよりでとじられた和紙に、祖母の懐妊から誕生祝
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お守りとして 岡山県瀬戸内市・小林照子(無職・81歳)
2022/7/2 05:41 563文字ある日新聞を読んでいて、ある投稿が目に留まった。投稿者は介護の仕事に就いて2年。一番うれしかったのは、入浴介助の時に湯船に入った利用者さんが「ワー、うれしい」と口にされるのを聞いた時で、この仕事をやっていてよかったと思ったそうだ。 私も1993年の9月にホームヘルパー2級の資格を取得したが、修了証
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ゼニアオイの花 北九州市小倉南区・秋野和子(81歳)
2022/7/2 05:40 568文字その頃、夫は熊本でホテルを建設する作業員として働いていた。私は初めての出産を控えて小倉の産院にいた。微弱陣痛で苦しんだ後、やっと出産した。母が夫の職場に女児出産を電報で知らせた。汽車で帰ってきたのは翌日の昼過ぎ。日焼けした元気な姿を見せてくれた。 無造作に新聞紙に包んだ、たくさんの花を持っていた。
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元気に生きて 埼玉県戸田市・野本洋子(主婦・78歳)
2022/7/2 02:00 562文字6月20日本欄「迷子の恋心」を拝読し、筆者の坂本久美子さんのお気持ちが痛いくらい胸に迫ってきました。 寡婦歴33年。32歳で愛する人とお別れしたのですね。その後の人生がどんなにつらく苦しく、寂しかったことか。「燃焼しきれない思いが、行き先もわからず長い間さまよい続けている」とは、坂本さんの心の底か
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姑のこと 奈良県桜井市・上阪泰子(主婦・65歳)
2022/7/1 05:47 541文字6月14日付の本欄「徳を積む」を読んで、偉い人はいるもんだなと感心していたが、その時ふと姑(しゅうとめ)のことを思い出した。 姑は情け深く器の大きな人で、自分で作った野菜を見知らぬ人によくあげていた。 家の前を通る人に「これいらんか?」となかば強引に野菜を渡し、通り過ぎようとすると、「泰子さん、あ
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子育て終了宣言 長崎市・本村由子(自営業手伝い・63歳)
2022/7/1 05:47 561文字我が家の末っ子の三男が大学を卒業、無事就職して家を出ていった。25年間の子育てはやっと終わった。 三男の高校3年間、予備校1年間、大学6年間の合計10年間、朝は私、夜は主人が片道約15分の道のりを最寄りの駅まで車で送迎し続けた。 就職が決まった長崎県対馬に親子3人で行った。一人暮らしのための電化製
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99歳からの宿題 川崎市多摩区・玉置せつ子(ピアノ教師・93歳)
2022/7/1 02:00 521文字週1回、近くのデイサービスに行き、楽しんでいます。隣の席にはいつも、Kさんが座ります。 係の方が「きょうの誕生日のお祝いは、99歳を迎えたKさんです」と言ったので、皆ビックリしました。ハッピーバースデーの歌を歌ってお祝いしました。 私が耳元で「99歳おめでとう」と言うと「誰のこと?」との返事。「あ
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「アンネ」に思う 神戸市北区・池田かずこ(主婦・80歳)
2022/6/30 05:45 558文字人生80年生きてきて、このごろよく思うことの一つに、女として今まで、なにが生活の一大事だったか、がある。結婚や出産も考えられるが、私自身、なにが大きな変革だったかといえば、迷わず「アンネの出現」と言いたい。 アンネってなに? 今の若い女性には聞き慣れない言葉かもしれない。アンネとはずばり、女性の生
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父のアジサイ 山口県平生町・藤中清子(65歳)
2022/6/30 05:45 566文字雨の季節、私の花壇にアジサイが文字通り花を添えてくれていた。家を建てたのは33年前。当時、頼んでもいないのに夫から「これはお前の花壇だよ」と私にあてがわれた一角は1畳半ほどのスペース。花をめでるのは好きだけれど土いじりは苦手。花壇作りのセンスもない私なのだ。 ここ数年、娘からの母の日のプレゼントは
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懐かしい共存 名古屋市天白区・山中れい子(無職・77歳)
2022/6/30 02:01 555文字戸建てに住んでいたころはこの時期になると、凝視することができない、ましてや触ることなどできない小さなムカデやハチなどに苦しめられた。もともと戸建てがいいという夫の思いで建てたのであるが、夫は無責任にも先に逝ってしまった。 虫が出るとすぐに夫を呼んで処理してもらっていたが、1人になってみると頼める人
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