女性読者からの投稿欄「女の気持ち」。「男の気持ち」とともに出来事や悩みなど「時代の心」を映しています。
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デジタルの墓 北九州市八幡西区・中村みどり(美容師・74歳)
2024/4/25 05:21 553文字コロナ禍の前まで年に1回、福島のボランティアの帰りに、東京の従姉(いとこ)と一緒に食事をするのが楽しみだった。妹のように可愛がってもらっていたが、突然の死でたくさんの涙を流してから7年。やっとご主人がお骨をそばから離す決心をした。子どももいない、お墓も無い、自分も年を重ねたので永代供養のお寺を探し
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新1年生 兵庫県赤穂市・錦戸律子(主婦・75歳)
2024/4/25 05:19 513文字4月10日、満開の桜の中、地区公民館の高齢者大学に新1年生として入学しました。高校生以来の女子学生になりました。 新入生7人は、服に赤いお花を付けていただいて、名札を首にかけ、先輩たちの集まっている会場に入場しました。一人一人名前を呼ばれて、返事をし立ち上がって一礼します。 会場に入るまで、このよ
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家族写真 仙台市宮城野区・飯田道子(パート・52歳)
2024/4/25 02:01 544文字部屋に家族写真を飾るのは前からあまり好きではなかった。自分の姿を目にするのがなんとなく気恥ずかしいし、掃除の手間が増えると思っていた。 しかし今、キッチンのカウンターには、私と夫と息子2人の写真が置かれている。家で、ただ夕飯を食べているときの写真だ。これは昨年6月、夫の病気の知らせを受けた息子2人
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同世代の桜 京都市右京区・菊地美代子(主婦・76歳)
2024/4/24 05:23 532文字健康維持のために1日6000歩を心がけている。散歩していると桜の木が本当に多い。しだれ桜にソメイヨシノ、山桜、八重桜。大きな屋敷にも小さな家の庭にも桜がある。 我が家の桜はソメイヨシノ、たぶん私と同世代、幹は一抱え以上ある。食事をしながら見上げる桜は圧巻だ。家の南側のぬれ縁の近くにある。正確には、
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編み物大好き 埼玉県日高市・酒井紀代美(主婦・71歳)
2024/4/24 02:01 541文字暖かい、いや暑いと思う日もあり、そろそろセーター類のしまいどきだ。 私が物心つくころから、母は編み機でセーターを編んでいた。夜中にジャージャーという編み機の音で目が覚めたこともある。 当時は毛糸が高価だったのか何度も同じ糸を編み直し、カーディガンからセーター、次はベストへと形は変わっていった。どれ
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母の一言 大阪市淀川区・勝田理香(会社員・33歳)
2024/4/23 05:12 540文字結婚を意識したのは29歳の時だ。田舎の友だちが結婚し、私が最後の未婚の女になった。仕事も安定、一人暮らしも長くなり、心に余裕が出来た頃だった。 離れて住む母は時々電話をかけてくれた。私の体調を心配した後に、必ず続く話題が結婚だった。母は結婚して専業主婦となり、私が中学校に上がると同時に塾でパート講
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時を大切に 鹿児島市・松永あやみ(主婦・72歳)
2024/4/23 05:12 554文字高齢者というネーミングを頂いてから、時間の流れの速さに驚いてしまいます。 若い頃は、鍋を火にかける料理をしながら複数の家事を同時進行で普通にこなしていました。今そんなことをしていると、鍋を焦がすことがよくあります。外出時には何かしら忘れ物があり、家に取りに戻ることもしばしばです。動作も確実に鈍くな
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母と新聞 横浜市金沢区・沖田裕子(主婦・61歳)
2024/4/23 02:01 544文字5月で90歳になる母は、結婚前から毎日新聞を読んでいます。 結婚したとき、まだ実家で同居していた義弟や義妹を結婚させました。私たち子ども2人を育て上げ、義父母もそれぞれ見送りました。30年以上たってようやく父と2人だけの生活が始まったのです。 「新婚さんだね」とふざけて言うと「そうね」と笑っていた
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山菜パーティー 広島県庄原市・家島晶子(主婦・87歳)
2024/4/22 05:04 536文字快晴のある朝、広島市から3人、三次市から2人の友が我が家に到着しました。 「ようこそ」と熱い番茶とゆうべ作っておいた「ふき菓子」で再会を祝し、早速裏山へ。今は都会暮らしの主婦といえども、元はこの町出身の山の子たち。山を我が家の庭のように知り尽くしているご仁ばかりです。各自が好みの山菜を採ってきて、
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小さな命 福岡県糸島市・木村加代(77歳)
2024/4/22 05:02 556文字5年前、都会のマンションから築30年の和風住宅に移住した。小さな庭のどこかに季節の花が咲く。ツバキ、しだれ梅が終わり、今は新緑のもみじが柔らかだ。そばに咲く白いシャガが可愛い。なにより南向きの広縁が心地よい。 ところが先日、縁の下の掃除をしようとのぞき込んだ途端、私は「ギャー」と大声を上げて孫娘を
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幸せとは 北海道函館市・上島真紀子(公務員・50歳)
2024/4/22 02:01 535文字「今、幸せ?」 突然、同期に聞かれてあわてて考えた。 私は単身赴任中。家族と遠く離れ、孤独と向き合いながら生活している。 上司や同僚に恵まれ、趣味の登山を楽しみ、自分の時間を好きに使える今の生活は幸せといえるのかな。他人からはそうは見えないかもしれないけれど。しばらく考え「うーん、幸せかな」と答え
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福寿草の里で 山口県下松市・岩本ひろみ(主婦・75歳)
2024/4/21 05:17 576文字山口、島根県境の十種ケ峰(とくさがみね)に福寿草の自生地があると知り、花探しの山旅に出かけたのは数年前の早春だった。険阻な山中の自生地には行けそうもないが、島根県側の山麓(さんろく)の自生地なら見つかるかもしれない。ウェブサイトには木立をバックに土手に咲き乱れる花、赤い屋根の民家近くにある古木の下
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予期せぬご褒美 兵庫県西宮市・加藤由美子(主婦・63歳)
2024/4/21 05:16 543文字藤が咲いた。鉢植えの小さな木に花が30房ほど垂れている。 十五、六年前、実家に丈50センチほどに一房花がついているのが置いてあった。認知症の進んだ母が欲しがり、父が自転車の前かごに乗せ運んだらしい。「水やりは誰がするの?」。ヘルパー代わりに週3度通っていた私は大歓迎とはいえなかった。それを察してか
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娘の出産 千葉県香取市・木内初枝(主婦・66歳)
2024/4/21 02:00 539文字私には息子4人、娘1人の5人の子どもがいます。娘は台湾の人と一緒になり台湾に嫁ぎました。結婚6年目で子どもを授かり、日本と台湾のどちらで出産するか迷ったようですが台湾を選びました。 当初は自然分娩(ぶんべん)のはずが、急きょ帝王切開になりました。娘は電話口で泣き、不安で仕方のない様子。娘の夫と私は
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蕨の季節には 北九州市小倉南区・島子矩子(79歳)
2024/4/20 05:19 552文字子どもの頃から蕨(わらび)が大好きである。香川県の山あいで生まれ育った私は、小学生の頃から春になるのを待ちかねて、山へ蕨狩りに入っていった。高校入学を機に家を出て以来、それはなくなった。 60歳を過ぎてから、老いた両親に会いに帰省し、待望の蕨狩りを再開した。ある年、山に入り、袋いっぱいの蕨を抱え、
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引き出しの中に 神戸市兵庫区・佐々木恵美(会社員・60歳)
2024/4/20 05:18 547文字手帳のような、日記のようなものをB5のノートに少しずつ書いている。毎年新しいノートを買って、かれこれ10年以上も続いている。 中身は全然たいしたことはなくて、メモ書き程度で、何を食べたとか、どこへ行ったとか、何をいくつ買ったとか。ほとんどは単語や数字を書き並べているだけの備忘録のようなものだけれど
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新入生 山梨県韮崎市・山寺直美(主婦・65歳)
2024/4/20 02:00 540文字黄色い帽子の小学1年生や新しい制服に身を包んだ中高生たちが、我が家の前を通り過ぎていく。例年に比べると開花の遅かった桜は、新入生たちにエールを送るように花びらを躍らせている。 きっと、夢と希望と少しの不安も抱えての新生活のスタートだろう。頑張って!と心の中でエールを送る。 振り返れば自分自身も幼稚
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卒業 山口県美祢市・吉野ミツヱ(主婦・76歳)
2024/4/19 05:07 571文字今春、新社会人となった22歳の孫娘。その前に、久しぶりに東京から帰省したいと言ってきた。1人での帰省は中学生以来8年ぶりだ。部活や受験、リモート授業、就職活動などをくぐり抜け、どんな成長をしたのだろうか。再会はそれを確かめる良い機会でもあった。 空港の搭乗口を出てきた孫娘は不安そうに辺りを見回す。
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焼きおにぎり 大阪府羽曳野市・佐賀定子(介護福祉士・69歳)
2024/4/19 05:06 551文字数日前からトイレのタンク内でチョロチョロと水の流れる音がしていた。水漏れか? 古いから仕方ないな、と放っておいたところ、チョロチョロがジョロジョロに変わり、とうとう水が流れっぱなしになってしまった。 これは大変と、近くの水道工事屋に電話をした。息子と同じ年ぐらいの職人さんが来てくれた。いつまでもト
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アップサイクル 愛知県瀬戸市・吉田さをり(主婦・63歳)
2024/4/19 02:01 543文字私が首から下げているものを見て、家族が「何それ」と聞いた。「エメラルド」。そう答えると「ねえ、小学生だったらかわいいよ。でもね、いい年したオバサンが、それはないわ」と言われた。 私にとって色つやはエメラルドそっくりに見えるが、実は浜辺で拾ってきた緑色のシーグラスだ。元は恐らく、海に捨てられた日本酒
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