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野球を諦めない

/1 甲子園も勉強も 「二兎を追う」塾

コーチから指導を受けながら打撃練習をする子どもたち。隣の教室では勉強に打ち込む=名古屋市名東区で1月27日、大竹禎之撮影

 <第88回選抜高校野球>

 教室のホワイトボードに英単語が並ぶ。壁の向こうではグラブをつけた少年が肘の高さに気をつけながら投球練習に励んでいる。名古屋市名東区の「BE−ZONE」は勉強と野球を同時に学ぶユニークな塾だ。市内の小中学生約60人が「甲子園」と勉強の両立を目指している。

 「二兎(にと)を追ってほしい」と代表の杉浦弘文さん(45)が2013年末に開いた。塾の名前は、野球(baseball)と教育(education)の頭文字を取った。屋内練習場の一角に教室があり、平日の夕方に子どもたちがグラブと筆記用具を持って集まる。教室で勉強をし、練習場で元プロ野球選手らから指導を受ける。

 少子化の影響や、サッカーなど他競技との競合で、子どもたちの野球離れが進んでいる。日本中学校体育連盟の調査では、15年度の軟式野球部員は全国で20万2470人。5年ほどで約10万人減った。硬式野球をしているなど、この数字に表れない野球少年もいるが、深刻に受け止める指導者が多い。高校と中学の団体が連携して少年向けの講習会を開くなど、地道な努力が続いている。

 「野球だけしていればいい時代ではない」と保護者らは勉強との両立を願うが、子どもたちは「甲子園に出てプロになりたい」と夢見る。「BE−ZONE」に通う名古屋市の小学5年生、山田彬人君(10)もその一人。祖父と叔父は甲子園の出場経験がある。少年野球チームに入って間もない2年前、入塾した。最初のうちは「算数と国語を1時間頑張れば、好きな野球ができるよ」と励まされた。今も本音は「勉強より野球」だが、学習のリズムもできた。「去年、夏の甲子園を見てあそこでプレーしたいと思った。投手になりたいから投球練習をして、漢字の勉強も頑張る」と話す。母美季さん(45)は「甲子園の夢は応援する。でも勉強もしっかりしてほしい」と期待する。

 杉浦さんは野球漬けで育った。父藤文さん(故人)は中京商(現中京大中京・愛知)の監督として甲子園春夏連覇に導いた経験がある。杉浦さんも小さい頃からボールを追い続けた。ふと「野球ばかりでいいのか」と疑問が湧き、視野を広げるため大学2年で米国に半年留学した。学生が勉強とスポーツを両立させていることに刺激を受けた。

 帰国して不動産会社に就職し、資格を取るにも勉強のしかたが分からず苦労した。プロ選手になった知人が引退後の人生に迷う姿も見た。野球が好きだから、子どもたちに伝えたい。「野球だけでは社会では通用しない。それでも野球を諦めないでほしい」【武内彩】=つづく

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 野球を続けていると勉強、けが、加齢……といろいろな壁にぶつかる。そこで諦めてしまうのは惜しい。3月20日の第88回センバツ開幕を前に、力強く壁を打ち破り、あるいは勝利を目指し、野球を楽しむ人たちを追った。

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