メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

未踏の頂へ

静高センバツ’17 静高、優勝候補と互角 健闘たたえ温かい拍手 /静岡

【大阪桐蔭-静岡】一回裏静岡無死満塁、成瀬の二塁打で生還した走者3人を笑顔で出迎える静岡のベンチ=阪神甲子園球場で、平川義之撮影

 <第89回選抜高校野球>

     第89回選抜高校野球大会に出場している静岡高は、27日の2回戦で大阪桐蔭(大阪)と対戦。初回から激しい打ち合いになり一時はリードしたが、先発のエース池谷蒼大(そうた)投手(3年)が終盤につかまって逆転を許し、8-11で敗れた。悲願のセンバツ初優勝はかなわなかったが、優勝候補の強豪と互角に戦ったナインに、アルプススタンドの応援団は温かい拍手を送って健闘をたたえた。【古川幸奈、小鍛冶孝志】


     ▽2回戦

    大阪桐蔭 600000032=11

    静岡   610000100=8

     一回表、池谷投手が打者一巡の猛攻に遭い6失点。調子は悪くなかったが、決め球の変化球が狙われた。

     出だしから劣勢の展開になったが、静高ベンチは前向きだった。「まだ初回。必ずひっくり返せる」。主将・小柳廉右翼手(3年)はそう信じた。直後、打線が反撃に出る。先頭の村松開人遊撃手(2年)から3人連続で出塁し無死満塁にすると、4番・成瀬和人左翼手(同)は左中間に走者一掃の二塁打。スタンドは両腕をつき上げて喜びを爆発させ、成瀬選手と同じクラスの石原沙和さん(同)は「打席に入った瞬間人が変わったみたい。かっこいい」と跳びはねた。

     その後も勢いは止まらず、藤田誠也二塁手(3年)、稲角塁一塁手(同)の連続安打と小柳主将の右前打で一気に同点に追いついた。藤田選手の父智典さん(44)は、「試合は振り出しに戻った。よし、ここからだ」とメガホンを強く握りしめた。

     「仲間が追いついてくれた。絶対に抑えてやろう」。池谷投手の目の色が変わった。直球のキレは増し、二回は3者凡退で切り抜けた。

     二回、大石哲平三塁手(3年)の四球、成瀬選手の二塁打で無死二、三塁の好機を作り、打順は森康太朗捕手(同)に。母典子さん(47)は「蒼大を助けてあげて」と祈った。すると、森捕手は勝負強く右前打を放ち勝ち越し。吹奏楽部の影山実紀副部長(3年)は「めちゃくちゃテンションが上がる。泣きそうです」と顔を覆った。

     その後は投手戦に。二回以降は制球が安定した池谷投手は、六回1死一、三塁のピンチも三振と左飛に打ち取り後続を断ち切ると、「よっしゃー」と喜びの声がスタンドに飛び交った。

     池谷投手の踏ん張りに打線も応える。七回に藤田選手の右前適時打で8点目。勝利を確信したスタンドでは、生徒らが肩を組みながら応援歌「希望の歌」の大合唱を始めた。

     ところが八回、疲れから球威が落ちた池谷投手は4安打を浴びて逆転を許した。九回にも2点を失って降板。交代した竹内奎人(けいと)投手(同)が2人の打者を打ち取ったが、反撃は及ばなかった。

    兄の雄姿見守る

     〇…一塁側アルプススタンドには、藤田誠也二塁手(3年)の弟駿斗(はやと)さん(11)も応援に駆けつけた。藤田選手に憧れ約2年前に野球を始め、兄が小学生時代に所属した浜松市のリトルチームでプレー。守備位置も兄と同じ二塁だ。この日は兄から受け継いだリトルチームの帽子を着用して雄姿を見守り、最後まで声援を送り続けた。「自分も静高に入って甲子園に立ちたい。最後まで頑張ってくれてありがとう」

     ■熱球譜

    父への恩返し胸に 藤田誠也二塁手(3年)

    藤田誠也二塁手

     父智典さん(44)への恩返しを胸に打席に立った。

     智典さんは、小学生の頃から練習場まで1時間かけて車で送り迎えし、打撃不振に陥ると夜遅くまで猛特訓につき合ってくれた。「野球をやめたいと思った時も精神的な支えになってくれた。野球をする中で大きな存在だった」と振り返る。

     智典さんは浜北西高で内野手。県大会4強が最高だったため甲子園出場はかなわなかった。大学で野球を続けたが、1年の夏、練習中に不整脈で倒れた。医師に「ペースメーカーを入れないと、野球は続けられない」と言われ、悩み抜いた末に野球人生にピリオドを打った。

     2013年には、突然に心停止を引き起こす難病「ブルガダ症候群」にかかっていることが分かった。入退院を繰り返したが、昨秋の地区大会の途中で体調が悪化。手術のため入院を余儀なくされた。

     母正美さん(43)に事実を告げられた時、「お父さんが行けなかった甲子園におれが連れていく」と固く決意した。手術は無事成功し、静高は東海地区大会で優勝を果たした。

     この日はスタンドで見守る智典さんの前で、4打数2安打2打点と勝負強さを発揮。目標とする1試合3安打には届かなかったが、藤田選手の顔は晴れやかだった。最後の夏は、智典さんに優勝をプレゼントする。【古川幸奈】

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    関連サイト