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高校野球・新世紀

第4部 カントク模様/3 「男の世界」挑む女性

捕球練習を指導する市川監督(左)=安田光高撮影

 女子マネジャーが甲子園練習でグラウンドに出られるようになるなど、女性の存在感が増している高校野球。ただ、女性監督となるとほとんどいない。日本高校野球連盟の実態調査によると、2008年度には3人、13年度は1人。現在でも数えるほどだ。その一人、東京電機大高の市川麻紀子監督(44)は「長く続けるのが難しい」と実感している。

 市川監督は中学と大学でソフトボール経験があり、東京電機大中で軟式野球の監督を務めていた。前任者の異動に伴い、11年4月に高校の監督に就任。16年には夏の西東京大会で初勝利を挙げた。ただ、就任当初、女性監督としての難しさに直面したという。

 勝った相手の監督がベンチで「どんなチームに負けたか分かっているのか」と暗に女性が監督をしているチームを見下すような発言をしているのを耳にした。前任者が組んだ練習試合後、来年の試合を依頼すると、体よく断られた。「その翌年も断られ、迷惑かなと思ってあきらめた」。大学時代の人脈を頼りに試合相手を探した。

 昨夏、宮崎大会で8強入りした鵬翔の長田夏美部長(26)は14年に同校教諭となり、野球未経験の男性監督と二人三脚で強化に努めている。野球経験があり、グラウンドで実技指導に当たっているものの、「監督になりたいとは思わない」と言う。

 長田部長は中学時代、地元・宮崎のクラブチームで男子に交じって野球をしていた。甲子園の存在を知り、「女は甲子園に出られない。それなら、指導者になって行きたい」と思ったという。埼玉栄の女子野球部を引退後、学生コーチができる大学を探し回った。断られ続ける中でたどり着いたのが東海大。監督も説得し、同校初の女子コーチになった。

 豊富な野球経験があるにもかかわらず、長田部長が監督となることに二の足を踏むのは、体力差を感じているからだという。肩の弱さなどで男子高校生レベルのプレーを見せられない部分もあり、「選手に物足りなさを感じさせてしまわないか」と懸念する。また結婚や出産で現場から離れる可能性があることも理由に挙げる。「自分の事は二の次で、選手のために指導するのが高校野球の監督。その責任を果たせない」。その底流には、強い使命感がうかがえる。

 2人から出た共通の言葉が「高校野球は男の世界」。その中で戦う難しさを感じつつも、甲子園への憧れと、「生徒の成長を一番身近に感じられる」(市川監督)というやりがいを持ちながら指導している。選手を育てようとする情熱に、性差はない。【安田光高、生野貴紀】=つづく

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