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高校野球・新世紀

第4部 カントク模様/5 野球未経験でも新風

打撃練習で指導する遊学館の山本監督(左)

 「名選手、名監督ならず」とはよく言われる言葉だ。ところが名選手どころか、高校野球経験が無いにもかかわらず、チームを甲子園に導いた監督がいる。

 2012年春、センバツの21世紀枠で甲子園初出場を果たした石巻工(宮城)を率いた松本嘉次監督(50)は、小学校から大学までバスケットボール部に所属した。プロ野球阪神のファンだったが、経済的な理由から高校で野球部に入ることをあきらめた。

 転機は1995年、気仙沼向洋に赴任し、部長を任されたことだった。ルールブックを読み、投手の配球を一球一球調べた。試合では野球の常識にとらわれず、送りバントで走者を進める場面で打たせたり、点差があるのに盗塁したりと型にはまらない野球で新しい風を吹き込んだ。

 「野球のセオリーが分からない自分でもできたのだから、未経験者でもやればできる」と話す松本監督。現在は勤務先の仙台工で指揮を執る一方、宮城県高野連の副理事長も務め、大会運営などに尽力している。

 02年夏、創部からわずか1年4カ月で遊学館(石川)を甲子園に導いた山本雅弘監督(66)もスキー、陸上競技のほか、軟式野球の経験こそあるが、高校の硬式野球とは無縁だった。

 星稜中の軟式野球部の監督として、11年間で全国大会に9回出場し、3回の全国制覇を成し遂げて「中学野球の名将」として名をはせた。49歳の時、女子校から男女共学になるのを機に創部された遊学館の監督に就任すると、競技経験がない分を知識で補った。

 空気力学や航空宇宙工学などの本を読み、球の回転や軌道について理論的に選手に説明。動画解析ソフトを使って、視覚的に分かりやすく修正点を示した。「部の歴史は浅くても、選手は自信とプライドを持って試合に臨めた」と自負する。

 少子化の進行とともに、地方では教職に就くことは狭き門となっている。必然的に、高校野球の指導者の高齢化も進む。18年度の鳥取県の公立高校の教員採用予定数10人に対し、志願者は90人を超えた。鳥取県高野連の田村嘉庸理事長は「教科によっては数年間、教員採用がない時もある」と言う。県内には20代の監督はおらず、もっとも若い監督でも30代後半だ。

 そのような傾向の中、すでに部長では野球未経験者が増えてきているという。田村理事長は「野球未経験の人は、貪欲に知識やノウハウを得ようとする」と話す。高校野球経験のない指導者が、これまでの常識にとらわれない発想で新しい風を高校野球に吹き込むことが期待される。【長田舞子】=つづく

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