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高校野球・新世紀

第5部 変わる常識/5(取材後記) ベンチ前のキャッチボール 試合の流れを左右 

右腕にテーピングした状態で、ブルペンで投球練習する松坂。八回にベンチ前のキャッチボールで肩をならし、九回から登板した=阪神甲子園球場で1998年8月21日、森顕治撮影

 ベンチ前のキャッチボールと聞いて、20年前の夏を思い出す。1998年の第80回全国選手権準決勝。右腕・松坂大輔を擁した横浜(神奈川)が、明徳義塾(高知)にサヨナラ勝ちした一戦だ。

 センバツ王者の横浜は、前日のPL学園(大阪)との準々決勝で延長十七回、250球を投げ抜いた松坂が先発を回避。0-6から2点差まで追い上げた八回裏、松坂が三塁側ベンチ前で右腕のテーピングをはがしてキャッチボールを始めた。明徳義塾の馬淵史郎監督は「あのあたりから、球場がざわつきだした」と振り返る。満を持して登板した松坂が九回表を3人で抑えると裏の攻撃で3点を奪い、熱戦に終止符を打った。松坂は翌日の決勝で無安打無得点試合を達成し、史上5校目の春夏連覇を達成した。

 横浜監督だった渡辺元智氏は「甲子園で初めて負けを覚悟した。(最後は)最高のメンバーでという思いで、キャッチボールを指示した」と明かす。一方の馬淵監督は「あれがあったから負けたということはないけれど、(雰囲気が)変わり、嫌だった」という。明徳義塾の選手も重圧を感じたであろうことは想像に難くない。ベンチ前のキャッチボールが禁じられていれば、「平成の怪物」の伝説は生まれていなかったかもしれない。

 ボールが常に動くサッカーなどに比べ、野球は「間」のスポーツとも言われる。試合の流れを左右するものは、ダイヤモンド内のプレーだけではない。キャッチボールする投手の様子を観察し、代打や継投を予想し合うのも重要な戦略だ。そして、それはファンの楽しみでもある。【野村和史】

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