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おもしろ数楽:/13 新幹線の座席、2人掛けと3人掛け /京都

 ◇過不足なく席を割り振り

 まもなく11月になります。京都は多くの観光客であふれかえる季節です。夏から秋にかけての気候の関係で、今年の紅葉は例年よりきれいであるという説もあり、観光地での大にぎわいが予想されます。

 先日、JR東京駅のみどりの窓口で京都行きの切符の予約をしようとしている五、六十代とおぼしきオバサマがたの集団に出くわしました。リーダーらしきその中の一人が、携帯電話でメンバーに連絡をとりながら人数の把握につとめ、ようやく確定したのか、窓口で人数を告げ「ヨソの人といっしょにならないように、うまく座席を割り振ってくださるかしら?」などとオーダーをしていました。

 駅員さんは慣れたもので、「はい、10人でしたらこれでいかがでしょうか?」と、座席表を示しながら説明をします。「はいはい、じゃあこれでお願いします」と落着しそうになったところでリーダーの携帯電話が鳴りました。

 「あらそう~、よかったわねぇ、じゃあ、行きだけ11人ね」と言って電話を切り、駅員さんに変更を申し出ます。「すみません、1人増えることになりましてね、でも行きだけなんです。なんでも、京都に嫁いだ娘さんのお宅にそのあとお邪魔して何泊かさせていただけることになったそうなのよ、ダンナさま優しいわねぇ。あ、それでね、さっきは座席がうまい具合にピッタリいきましたけど、11人になると1人あぶれちゃうかしら?」とリーダーさんはまくしたてます。

 「いえいえ大丈夫ですよ、これでいかがですか?」と駅員さん。

 「あらぁ、ありがとう~、さすがプロねぇ」とオバサマがたは大満足で切符の予約を完了した様子でした。

 新幹線の座席というのは、片側が2人席、もう片側が3人席であるのが主流です。ですので10人の集団の場合は3人席と2人席を二つずつ確保すると10人が過不足なく座ることができます。急に「11人に変更」を言い渡されても、2人席を一つに減らし3人席を一つ増やすことで対応が可能でした。

 新幹線がなぜ2人席と3人席になっているのか、それまであまり深く考えたことがありませんでしたが、この場面に遭遇してその謎が解けたのです。そう、2人席と3人席があれば、2人以上のどんな人数の団体にも、過不足なく席を割り振ることができるからなのですね。

 このことを数学的に申しますと、「2と3を使えば足し算だけですべての整数(自然数)を作ることができる(1以外の)」ということになります。一見、なんの変哲もないことなのですが、なかなか奥の深い話をはらんでいるのです。

 類似するものとして、こんな話題があります。

 「4以上の偶数はすべて、二つの素数の足し算で作ることができるのではないか?」。4=2+2、6=3+3、8=3+5、10=3+7、12=5+7、14=3+11、16=5+11、18=5+13……と、どこまでいってもそのように表すことができそうです。

 これは、これを思いついた18世紀の数学者の名にちなみ「ゴールドバッハの予想」と呼ばれています。「予想」のままであるということは、そうなんです、こんなに単純な言明なのにいまだに証明されていないのです。

 中身は単純なのになかなか証明できない難問、というのが数学界にはたくさんありまして、有名なのが1995年に証明された「フェルマーの最終定理」。これは、nが3以上の整数の場合、xのn乗+yのn乗=zのn乗を満たす自然数x、y、zは存在しない、という、これまた予想自体はさほど難しくないものでしたが、世界中の数学者をして証明に350年を要したわけです。また2006年に、100年のときを経て解決した「ポアンカレ予想」も、解決者であるロシア人数学者が賞金や栄誉を拒否して数学界から去ってしまったこととあわせて話題になりました。

 「一見単純なのに奥が深い」というのは、数学のひとつの特徴であると言えましょう。私はといえば……、一見単純、実際にも単純であるというのが自他共に認めるところなのに。<文・日沖桜皮(サイエンスライター)、イラスト・柴田英司>=隔週掲載

毎日新聞 2009年10月29日 地方版

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