<広げよう おはなしの輪>
灰(はい)色(いろ)の人(ひと)は、すてきな家(いえ)の写(しゃ)真(しん)の載(の)ったパンフレットを開(ひら)いて、いろいろ説(せつ)明(めい)していきました。パンフレットの写(しゃ)真(しん)は、みんなぴかぴかにきれいで、おじいちゃんもおばあちゃんも、すっかり感(かん)心(しん)して、見(み)とれています。
「太(た)郎(ろう)さま。これはどうです。このタイプなら、すてきなロフトがついています。隠(かく)れ家(が)みたいで、楽(たの)しいでしょう」
灰(はい)色(いろ)の人(ひと)は、たくさんしゃべって帰(かえ)っていきました。太(た)郎(ろう)は、その間(あいだ)、ずうっとよく見(み)ていましたが、耳(みみ)も歯(は)も伸(の)びなければ、しっぽも出(で)てきませんでした。
夜(よる)になって、太(た)郎(ろう)が二(に)階(かい)で一人(ひとり)で寝(ね)ていると、寒(さむ)さで家(いえ)がキシキシ音(おと)を立(た)てました。太(た)郎(ろう)はこわくなって、おふとんを頭(あたま)からかぶりました。すると、きゅうにおふとんが重(おも)くなって、胸(むね)が苦(くる)しくなりました。悪(あく)魔(ま)が胸(むね)の上(うえ)に乗(の)っかっているような気(き)がして、太(た)郎(ろう)は恐(おそ)ろしくて声(こえ)も出(で)ません。
すると、にゃあ、と声(こえ)がしました。
「な、なんだ、おまえか、キジ」
おふとんをはねのけてみると、猫(ねこ)のキジがふとんの上(うえ)でまん丸(まる)い目(め)をして、座(すわ)っていました。
「もう、重(おも)たいじゃないか。ぼくはてっきり、あの悪(あく)魔(ま)だと。あ、そうか! ぼく、こわがっていたから、キジのことを悪(あく)魔(ま)だなんて思(おも)ったりしたんだな。やっぱり、おばあちゃんのいうとおり、みんな気(き)のせいなんだ」
「気(き)のせいじゃありませんよ」と、いきなり、キジが人(にん)間(げん)の言(こと)葉(ば)で答(こた)えたので、太(た)郎(ろう)はびっくりして、目(め)玉(だま)が飛(と)びだしそうになりました。
「まさか。おまえ、いま、口(くち)をきいたよね。それとも夢(ゆめ)かな」
「夢(ゆめ)じゃありませんよ」とキジは平(へい)然(ぜん)としゃべっています。
「ええーっ!」
キジは、太(た)郎(ろう)の目(め)の前(まえ)に前(まえ)足(あし)をそろえて、おぎょうぎよく座(すわ)りなおすと、はっきりいいました。
「いいですか、太(た)郎(ろう)さん。あなたには使(し)命(めい)があるんです。だから、ふつう、人(ひと)の目(め)には見(み)えないものが見(み)えるんです。聞(き)こえないものも、聞(き)こえるんです。さあ、ぼくといっしょに、鬼(おに)退(たい)治(じ)に出(で)かけましょう!」
「お、鬼(おに)退(たい)治(じ)だってぇーっ?????」
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毎日jp(http://mainichi.jp/life/edu/yonde/)にも掲載
毎日新聞 2009年11月19日 大阪朝刊