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的川博士の銀河教室

宇宙開発の歴史や宇宙に関する最新ニュースについて、JAXA名誉教授の的川泰宣さんが解説する長寿連載です。

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447 三つ子の星-火星編(1)-

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太陽風たいようふうにはがされた大気たいき

 先々週せんせんしゅうの「ほし金星編きんせいへん-」ではなしたように、金星きんせい地球ちきゅうの100ばいもの大気たいきつつまれているわけですが、じつ火星かせいには反対はんたい地球ちきゅうの100ぶんの1くらいしか大気たいきがないのです。地表ちひょうみずてています。しかし、かつては分厚ぶあつ大気層たいきそう大量たいりょうみずがあったとかんがえられていて、NASA(アメリカ航空宇宙局こうくううちゅうきょく)は火星かせいから大気たいきがなくなった理由りゆう調しらべてきました。

 NASAが2013ねんげた火星探査機かせいたんさきMAVEN(1)が、ついにたしからしい理由りゆうめた模様もようです。MAVENが目的もくてきとしたのは、そのものずばり「火星大気観測かせいたいきかんそく太陽風たいようふう関連かんれん」の研究けんきゅう火星かせい周回しゅうかいしながら獲得かくとくした観測かんそくデータを分析ぶんせきした結果けっか太陽系たいようけい初期しょきに、太陽たいようからている太陽風たいようふう(プラズマのながれ)が非常ひじょうはげしかったために、そのつよ太陽風たいようふうによって、火星大気中かせいたいきちゅうのイオンが大量たいりょうきずりされたというのです。

 でもそうだとすると、火星かせいよりも太陽たいようちか地球ちきゅうからは大気たいきがなくならないのでしょうか。その理由りゆうつぎとおりです。地球ちきゅう一番中心いちばんちゅうしんには、てつとニッケルでできた固体こたい部分ぶぶん内核ないかく)があるのですが、そのすぐ外側そとがわではてつとニッケルが液体えきたい状態じょうたい存在そんざいしており(外核がいかく)、そこには非常ひじょう高温こうおんながれがあります。そのながれが強力きょうりょく磁場じばしているので、地球ちきゅうおおきなひとつの磁石じしゃくになっているのです(ダイナモ効果こうか)。その磁場じばが、地球ちきゅうおそってくる太陽風たいようふうふせいでいるのですね。

 そして火星かせいにもむかしはつよ磁場じばがあったらしいのですが、なぜかダイナモ効果こうかよわまって、磁場じばよわくなってしまったのです。磁場じばうしなった火星かせい現在げんざいよりもはるかにはげしい太陽風たいようふうをじかにび、次第しだい大気たいき宇宙空間うちゅうくうかんげてきました(2)。そして空気くうきうすくなったことで地表ちひょうみず蒸発じょうはつしてしまったとかんがえられます。なぜダイナモ効果こうかよわくなったのでしょう。それはみなさんの世代せだいめるばんですよ。それはともかく、つぎ火星かせいみずについておはなししましょう。(つづく)

的川泰宣まとがわやすのりさん

 ながらく日本にっぽん宇宙開発うちゅうかいはつ最前線さいぜんせん活躍かつやくしてきた「宇宙博士うちゅうはかせ」。現在げんざい宇宙航空研究開発機構うちゅうこうくうけんきゅうかいはつきこうJAXAジャクサ)の名誉教授めいよきょうじゅ

日本宇宙少年団にほんうちゅうしょうねんだんYACヤック

 年齢ねんれい性別問せいべつとわず、宇宙うちゅう興味きょうみがあればだれでも団員だんいんになれます。 http://www.yac-j.or.jp

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