松田喬和の首相番日誌:政権維持の知恵学べ

毎日新聞 2011年11月26日 東京朝刊

 懸案の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の参加協議に加え、消費税率引き上げを柱とする税と社会保障の一体改革など「一内閣一仕事」クラスの難問が山積している野田政権。野田佳彦首相は極めて前向きだが、政権基盤は盤石ではない。首相の格闘ぶりと決断に注目しよう。

 「消費税は鬼門」といわれ、それがトラウマとなり、税制改革は先延ばしされてきた。最初に一般消費税を総選挙で提唱したのは79年の大平正芳首相。目指した安定多数に届かず、自民党の「40日抗争」で立ち消えになった。86年の衆参同日選で大勝した中曽根康弘首相も消費税(売上税)に挑戦したが「公約違反」との野党攻勢に阻まれ、断念した。3%の税率で導入を決めたのは次の竹下登首相。89年4月にスタートさせたが、消費税の不評にリクルート事件の余波も重なり、程なく退陣した。細川護熙首相は7%の「国民福祉税構想」を発表したが、反発を受けすぐに撤回、辞任に至った。

 5%への引き上げを決めたのは、自社さ政権の村山富市首相だった。引き上げは97年に実施されたが、当時の橋本龍太郎首相は翌年の参院選に惨敗し辞任。以来「消費税鬼門説」が生まれ、高い内閣支持率を得た小泉純一郎首相も手を付けなかった。

 野田首相は「リーダーとしての責任感を」「慎重な中にも大胆さを持った決断を」と自らを鼓舞し、難問解決にまい進する覚悟のようだ。一体改革は負担する側と受給する側の世代間対立。もう一つの難問であるTPP問題は、争点を農業問題に絞れば、農村と都市の地域間対立になる。こうした対立の枠組みは民主党だけでなく、自民党にも共通する。政界再編につながってもおかしくはない。

 自民党政権時代、党議決定機関は党総務会だった。非公開の会議だったが、廊下で耳をそばだてる記者に聞こえるよう、大声で自説をぶつ面々が少なからずいた。地元や支援団体向けのアリバイ証明に過ぎなくとも、執行部は辛抱強く聞いた。政権維持の知恵だった。24日の民主党両院懇談会は淡泊すぎる。(専門編集委員、66歳)

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