社説:廃炉事業 国の責任で前進させよ
毎日新聞 2012年08月22日 02時31分
「脱原発依存」の議論に伴い、原発施設の解体・撤去・除染といった廃炉の本格化を求める声が強まっている。ただ廃炉自体は、原子力への依存度を仮に維持したとしても、設備の老朽化により当面、確実に増えていくものだ。安全かつ効率的に行う技術やノウハウを国として意識的に高め、蓄積していく必要がある。
国内では「運転開始から40年で廃炉」を原則とすることになった。一方、世界には現在、400基を超える原子炉が運転中で、今後、先進国を中心に“高齢炉”が次々と寿命を迎える。まさにこれから、国内外で本格的な廃炉時代に入るのだ。
さて、その時代への備えが日本にできているだろうか。
国内の商業炉で実際に廃炉工程にあるのは、今のところ日本原子力発電の東海発電所のみである。1966年に運転を開始した日本初の商業用原発だ。98年に運転を終え、01年に廃炉作業が始まった。計画では、20年に完了することになっている。
だが、大きな難題が立ちはだかっている。解体により発生する放射性廃棄物の埋設処分先が未定なのだ。
炉心やその近辺の設備は放射能レベルが高いため、約10年かけて放射能の減衰を待ち、解体に入ることになっている。この間、タービンや発電機など炉心から遠い設備を撤去する。ところが、14年開始予定の炉心近くの本格作業は、そこから出る廃棄物の処分先を確保するまで着手できないことになっている。
日本原電の自主ルールと言うが、処分場が決まらないと、廃炉作業が中断しかねないのだ。
廃炉は、各電力会社の責任で行う、というのが国の基本方針である。しかし、安全性確保や周辺住民の説得などを考えると、処分場は国が選定や管理の責任を持つのが筋だ。
特に廃棄物の中でも地中50〜100メートルの深さで300〜400年管理することになっている炉心関連廃棄物の埋設を、長期的な保証がない民間企業に任せるというのでは、地域住民も不安で容認できないだろう。
廃炉は、放射能管理など特殊なノウハウを必要とする。東海発電所での経験を他の発電所で生かすなど、技術を戦略的に集積していく方法を考えた方がよい。競争力がつけば増大が見込まれる海外での需要もビジネスとして取り込むことができるのではないか。
だが、国内で放射性廃棄物の処分問題が解決しなければ必要な経験も積めない。政府が民間任せや先送りで逃げていては、廃炉分野でも他の先進国に先を越されてしまう。