スキル・キャリア「学ぶこと働くこと」現代就活模様

就活をやめ、大学院を選んだ24歳のチャレンジ

内山勢 / 毎日新聞編集委員

日高夏希さんのケース(2)

 日高夏希(ひだか・なつき)さん(24)は2年前の2013年秋、約1年間のスペイン・セビリア留学を終え、帰国して立教大学の4年生に復学した。

 12月に就職活動が解禁された。志望はマスコミ業界だったが、帰国前に立ち寄ったイスラエルで、国連で働く日本人女性と出会い、国連の職員になりたいという中学生の頃の夢がよみがえった。帰国して母校に戻ると、大学院に進学し、その後に国際機関で活躍したいという気持ちが強くなった。

就職の勧めを蹴って大学院を志望

 一方、親や親戚からは「1年留学したのだから、それを生かせる会社に就職しなさい」というプレッシャーを感じた。迷う気持ちで何度か企業説明会に参加した。だが、「中途半端なことはできない」と実感し、就活をやめて、大学院に絞って勉強を始めた。

 目指したのは、中米コスタリカにある「国連平和大学(UPEACE)」の修士課程と、グローバルな研究を行っている東京大学大学院の研究科。国連平和大学は14年8月に試験がある。東大大学院は、学士論文の提出と15年1、2月の筆記と面接試験がある。どちらも通学期間は2年だ。

 UPEACEは、原則として、職歴が必要でハードルは高い。就職を希望していた両親からは、「せめて、日本の国立の大学院に行ってほしい」と言われるが、UPEACEは学費や生活費も奨学金で賄われるのが魅力だ。将来は、国連で働きたいといい、中でもユニセフ(国連児童基金)を希望している。発展途上国や紛争地の子供たちの生活支援事業に携わりたいという。

今できることを探し、挑戦

 自由に羽ばたいているように見える日高さんだが、「そうでもないです。親のことは心配だし、大学の友達は就職して、まじめに働いているのに、私だけフワフワしていていいのかなと思って、結構不安なときもあります」。

 それでも海外を目指すのは、「親が病気になったり、日本で大地震が起きたりしたらきっとすぐに帰ってくると思うんです。でも、10年先のこととか考えても分からないじゃないですか。だから、今できることをしたいんです」。

 日高さんは14年2月、「ソーシャルイノベーション(社会変革)」研究の最先端である米スタンフォード大学に、10日間の短期留学もしている。ソーシャルイノベーションとは、社会的弱者の支援に、ボランティア活動以外の新たな発想で取り組む考え方。「人を助ける仕事っていろいろあるんだということが分かり、将来の選択肢が広がりました」と、手応えを感じていた。

将来の選択肢を広げるための、何か

 14年12月下旬、日高さんは、UPEACEの試験結果をじれながら待っていた。その結果が来たのは、12月19日朝。

 メールでその通知を受け取ったとき、「あーだめか」と思った。「でも、職業経験を求められると書いてあったので、受かったらもうけものぐらいに思っていました。それほど落ち込みませんでした」

 あとは、東大大学院を受験する選択肢が残っていた。東大大学院に受かれば、2年間学び、その後は、中南米などの発展途上国や紛争地域の子供の生活支援事業に携われればという思いがあった。記者の仕事にも関心があった。

 「海外の貧困の事情を、世界に発信していければ」。海外の経験を重ねれば将来の選択肢が広がっていく。希望で胸が膨らんだ。(続く)

 <「現代就活模様」の第1シリーズは3回連載です。前回の第1回「国際機関への夢と就職と 揺れる女子大生」に続き、今回は2回目です。第3回は6月6日掲載です>

内山勢

内山勢

毎日新聞編集委員

1983年、毎日新聞社入社。山形支局を振り出しに、週刊「サンデー毎日」、大阪本社社会部、東京経済部各記者、週刊エコノミスト編集委員、BS11プロデューサーなどを経て、2010年4月から、毎日新聞夕刊紙面の「キャンパる」編集長兼編集編成局編集委員兼「教育と新聞」推進本部委員。宇都宮大学客員教授。

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