ハッカドール・プロデューサーの岩朝暁彦氏
ハッカドール・プロデューサーの岩朝暁彦氏

IT・テクノロジーニュースアプリ最新事情

オタクの関心を購買につなげるミッション

まつもとあつし / ジャーナリスト

ハッカドール岩朝暁彦プロデューサーに聞く(3)

 ハッカドールは、マンガ・アニメの多種多様な情報を収集し、ユーザーの好みに合わせて届けることを目指している。一般的なニュースと異なり、好みが細分化されるこの分野で、一定水準の精度を保ち続けるのは並大抵のことではなく、当然コストがかかる。広告を掲載せず、ユーザー課金もしていないハッカドールは、現時点では収益を目的としていない。だが、着々とその布石を打っているという。今後はいかに収益化を図るのか。この率直な疑問をプロデューサーの岩朝暁彦(いわさ・あきひこ)氏にぶつけた。

 コンシューマー(一般の消費者)向けのITサービスは、まず無料公開してユーザー数やコンテンツ提供者数を増やし、プラットフォーム(人が集まる場)としてのその有用性や魅力を高めようとする。その上で収益化を図るのが定石だ。そのカテゴリーでナンバーワンの地位を築けば優位に立てる。ITはワン・テイク・オールの弱肉強食の世界でもある。

 ハッカドールもその例外ではない。プロデューサーの岩朝氏は「まだマネタイズ(もうけ)のタイミングではありません。ユーザーに届ける情報の精度を高める段階です」と言う。しかしながら、「いずれニュースサービスとして広告を取り入れたい」と、その胸の内を明かした。

ハッカドールアプリの記事面
ハッカドールアプリの記事面

 アニメやマンガ、ライトノベルといったとがった情報を扱うハッカドールだが、広告の引き合いは多いという。「アニメやマンガのメーカー、つまり出版社やアニメ・ゲーム会社、グッズ製造販売会社からの問い合わせが驚くほど多い。ハッカドールのユーザーは、これらの広告主にとって筋が良いと思われているようです。つまり、広告への反応率が高く、購買につながる可能性が高い」

購読者の行動を促すことがゴール

 ハッカドールのこうした状況は、ニュースメディア全般のマネタイズを考える上で示唆に富んでいる。価値観や好みが多様化する現代において、万人受けする広告メッセージを万人に届けるのは難しいからだ。

 例えば、本連載第2シリーズで取り上げたNewsPicksは経済ニュースに特化しており、可処分所得の高いビジネスパーソンと、その層を狙う広告との組み合わせに挑戦していた。専門メディアによるカテゴライズ(ユーザー分類)と広告メッセージが合致すれば、広告効果は高まる。ハッカドールが目指すのも構造としては同じだ。

 専門特化した「狭くて深い」情報を強く求めるユーザーを抱えるからこそ、岩朝氏が述べるように、広告が消費者の購買行動へとつながりやすい。それがハッカドールの特徴なのだ。

 もちろん、情報感度の高いユーザーは提示される情報の「ハズレ」を嫌う。美少女キャラクターの力を借りつつも、提供する情報の精度向上に投資し続けるのは、ハズレを少なくすればユーザーに喜ばれ、行動へとつながるからだ。それが広告などのマネタイズの面からも、ハッカドールの生命線になると理解しているからだろう。

 「ニュースなどのビジネスに役立つ情報は多くの場合、ツールとして消費される印象があります。でも、エンターテインメントはそれとは違う。情報を得れば得るほどユーザーの消費意欲が高まるんです。そうした相乗効果があるのが面白いところです」(岩朝氏)

 広告(マネタイズ)であれ、記事(ジャーナリズム)であれ、読者の思考や感情に訴えかけて、行動を促すことに一つのゴールがある。ハッカドールのように特定のカテゴリーに特化するメディアでは、読者層と彼らに起こしてほしい行動、そのために訴えるべきメッセージが比較的明確なのだ。

効果が最大化される広告配信とは

 とはいえ、SmartNewsがそうであったように、ハッカドールも記事と広告を同じアルゴリズムでユーザーに提示することは難しいと認めている。

 「記事との出合いが一期一会なのに対して、広告は重層的にコミュニケーションをすることが大事。効果が最大化される広告配信の仕組みを作る必要があります」と岩朝氏。

 キュレーションサービスは、カテゴリーに特化した、あるいはパーソナライズの精度を高めただけで、その成功が約束されるわけではない。広告によるユーザーの購買行動などの効果が認められてこそ、新しい形のメディアとしての未来があるのだろう。道半ばではあるが、ハッカドールの事例はそれを如実に示している。

 <次回は7月24日掲載です>

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まつもとあつし

まつもとあつし

ジャーナリスト

ITベンチャー、出版社、広告代理店、映像会社などを経て、現職。ASCII.jp、ITmedia、ダ・ヴィンチなどに寄稿。著書に「知的生産の技術とセンス」(マイナビ/@mehoriとの共著)、「ソーシャルゲームのすごい仕組み」(アスキー新書)など。取材・執筆と並行して東京大学大学院博士課程でコンテンツやメディアの学際研究を進めている。

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