1983年、東京・新宿の雑踏
1983年、東京・新宿の雑踏

社会・カルチャー青春小説の系譜

宮本輝「青が散る」の残酷すぎるラスト

鶴谷真 / 毎日新聞学芸部記者

 「太宰治や三島由紀夫を読んだころを思い出しましてねえ」。50代半ばの男性銀行員は小さく笑い、「火花」を手に取った。お笑い芸人の又吉直樹さんが書き、7月に芥川賞に選ばれた小説だ。

 受賞決定の翌朝、私は東京・神田神保町の書店へ取材に出かけた。書店員は鼻息荒く、本を店頭に積み上げている。「火花」は、売れない若い芸人2人が、笑いの神髄を求めてもがいた日々を回想する青春小説だ。冒頭の銀行員はそうと知って気になっていたところへ、芥川賞受賞のニュースを聞き、出勤前に買いに来たのだという。

 青春小説は40代、50代になって読み返してこそ輝くのではないか、ふとそう思った。自らの「現在地」を…

この記事は有料記事です。

残り1183文字(全文1473文字)

鶴谷真

鶴谷真

毎日新聞学芸部記者

1974年、神戸市出身。2002年毎日新聞社に入社し、岡山支局、京都支局を経て08年に大阪本社学芸部。13年秋から東京本社学芸部。文学を担当している。

イチ押しコラム

知ってトクするモバイルライフ
iPhone XS、XSマックスと同じく9月21日に発売されたアップルウオッチ「シリーズ4」

アップルウオッチ4「大画面で薄く進化」緊急通報も

 アップルウオッチの4世代目となる「シリーズ4」が9月21日、iPhone XS、XSマックスと同時に発売された。「シリーズ3」か…

職場のトラブルどう防ぐ?

パートの休憩問題で「労基署から指導」管理部長の窮地

 A雄さん(48)は、従業員数約230人の食品スーパーの管理部長です。ある店舗のパート従業員の休憩時間について労働基準監督署から是…

ニッポン金融ウラの裏
東京証券取引所=2015年5月8日、関口純撮影

日本の取引所の国際競争力が高まらないウラ事情

 わが国の資本市場をめぐっては解決が先送りされたままに置かれている課題が少なくない。そのひとつが証券取引所の「国際競争力」である。…

藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」
バルパライソ港を見下ろす丘の一つで、画家が絵を売っていた(写真は筆者撮影)

世界遺産バルパライソ 斜面に広がる明るい港町に感激

 ◇チリ・サンティアゴとバルパライソ編(3) 高校時代だっただろうか。何かの本で写真を見てから、いつか行きたいと思っていた。真っ青…

メディア万華鏡
韓国旅客船セウォル号の沈没事故を報じる2014年4月17日付の毎日新聞東京朝刊

日本で「モリカケ映画」は? 米韓映画人が見せる底力

 「世の中が変わった時に真実が明かせるようにこの映画を作りました」。304人の死者・行方不明者を出した2014年の韓国旅客船セウォ…