社会・カルチャーベストセラーを歩く

直木賞「流」が20年に1度の傑作と称賛されるわけ

重里徹也 / 文芸評論家、聖徳大教授

 人間が生きていくよりどころとは何だろう。家族だろうか。仕事だろうか。民族や国を挙げる人も世界にはいるだろう。イデオロギーや宗教だという人もいることだろう。

 人のアイデンティティーをどこに求めればいいのか。直木賞を受賞した東山彰良(ひがしやま・あきら)の長編小説「流(りゅう)」(講談社)を読みながら、何度もそんなことを考えた。時代の流れに翻弄(ほんろう)されながらも、矜持(きょうじ)を持ちながら、国境を越えて生きる人々の姿が生き生きと描かれていたからだ。

この記事は有料記事です。

残り1871文字(全文2100文字)

重里徹也

重里徹也

文芸評論家、聖徳大教授

1957年、大阪市生まれ。大阪外国語大(現・大阪大外国語学部)ロシア語学科卒。82年、毎日新聞に入社。東京本社学芸部長、論説委員などを歴任。2015年春から聖徳大教授。著書に「文学館への旅」(毎日新聞社)、共著に「村上春樹で世界を読む」(祥伝社) などがある。