スキル・キャリア部下を伸ばす上司 ダメにする上司

変革への「社内の抵抗」を防ぐ四つの処方箋

細川義洋 / ITコンサルタント

 今回は「チェンジマネジメント」について解説します。前回お伝えしたとおり、組織や仕事のやり方、ツールを変える際に社内の抵抗がある場合、変更当初の生産性の落ち込みを少なくし、早く改善効果を得るための手法です。

 決して目新しいものではありませんが、私が勤めていた外資系IT企業では、頻繁に行われていました。実際に効果が上がっていた手法です。

変革への抵抗感を分析・分類する

 チェンジマネジメントの第一歩は、社員がなぜ改善策に抵抗感を持つのかを分析することです。抵抗の理由はさまざまだと思えるかもしれませんが、彼らの話をよく聞くと、大きく四つに分類できます。

 抵抗の理由(1)目的がわからない

 抵抗感を持つケースで最も多いのが、そもそも何を目指した改善なのかわからない、という理由です。

 抵抗の理由(2)効果が見込めない

 次に多いのが、目的は理解できるが効果が上がるとは思えない、という理由。人間誰しも新しい物事には不安を感じるものです。

 抵抗の理由(3)新しいプロセスや組織、ツールに慣れない。単純に面倒だ

 目的を理解して、効果があるだろうと頭ではわかっていても、「新しく作成された書類に何を書いて誰の承認をもらうのかわからない」、「新しいITシステムの使い方がわからない」、あるいは「単純に面倒だ」という理由で抵抗が起こる場合もあります。

 抵抗の理由(4)期待しすぎていた

 少数派でしょうが、「大きな効果を期待していたがやってみたら大したことがなく、がっかりした」というケースもあります。

抵抗の理由に応じた対策を

 改善に対する社員や部下たちの抵抗感の分類が終わったら、その分類に応じた対応策を立てて実行します。

 対応策(1)地道な啓蒙(けいもう)活動

 これは、ずばり地道な啓蒙活動に尽きます。まず、現状で組織やチームが抱える問題が何なのかを明確にします。そして、その問題を放置するとどうなってしまうのか、改善するとどんな良いことがあるのかを説明するのです。理解してもらえるまで何度も繰り返します。時には、経営トップからメッセージを発信してもらうのも効果的です。

 対応策(2)成功事例を示す

 目的を理解している社員たちに、成功事例を示します。同じような問題のあった他の組織が、改善策実行で問題を解決したケースをできるだけ詳しく伝えます。

 対応策(3)実践の場を設ける

 必要なのは実践する場です。研修や実務を通じて覚えるまで、何度も教え込む必要があります。やり方に慣れれば抵抗感は自然と減るでしょう。

 ただし、いつまでも「面倒だ」と言い続ける人には、<1>で紹介した啓蒙活動を行ったり、報奨を与えたり、あるいはペナルティーを科したりすることを考える必要があります。

 対応策(4)実施前に目的と効果を把握してもらう

 実はこのケースがもっとも厄介です。改善策を導入する前に目的と効果をしっかりと把握してもらう必要があります。つまり、実施前が大切なのです。始めた改善策に落胆した場合、気持ちを切り替えてもらうのは困難です。<2>で紹介した改善策の効果についての説明を繰り返すしかありません。

変化できない組織は衰退する

 冒頭で述べたように、チェンジマネジメントは決して目新しくなく、時間もかかります。しかし、確実に効果を上げる手法です。抵抗に遭わずにスムーズに進められるのはまれなことでしょう。しかし、変化できない組織は必ず衰退します。

 <「部下を伸ばす上司 ダメにする上司」は毎週火曜日掲載です。次回は9月8日です>

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細川義洋

細川義洋

ITコンサルタント

1964年、神奈川県生まれ、立教大学経済学部経済学科卒。NECソフト(現NECソリューションイノベータ)、日本IBMでシステム開発やコンサルティングを行う。著書に「なぜ、システム開発は必ずモメるのか?」「IT専門調停委員が教える モメないプロジェクト管理77の鉄則」(日本実業出版社)などがある。

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