未来機械のソーラーパネルお掃除ロボット
未来機械のソーラーパネルお掃除ロボット

IT・テクノロジー躍動する科学ベンチャー

科学ベンチャーを育てる起業ファンドの「でっかい夢」

丸幸弘 / 株式会社リバネス最高経営責任者

対談:未来機械・三宅×リアルテック育成ファンド・永田×リバネス・丸(4)

 機械、ロボット、バイオなどの物理的なモノをつくる「リアルテック系」ベンチャー企業に対する投資環境は、厳しい。そんな中、リアルテック育成ファンド(正式名称:合同会社ユーグレナSMBC日興リバネスキャピタル)は、第1号の投資先に「未来機械」を選んだ。ベンチャー支援の狙いはどこにあるのか。リバネスの丸幸弘・最高経営責任者(CEO)と、リアルテック育成ファンドの永田暁彦代表に語ってもらった。【司会・構成、サイエンスライター本丸諒】

技術系起業家への厳しい投資環境に風穴を

 ──4月に誕生した「リアルテック育成ファンド」について教えてください。

 ◆リアルテック育成ファンド・永田暁彦代表 名前の通り、「リアルテック系ベンチャーへの投資」を目的としたものです。私は最初、「インスパイア」という投資ファンドに入り、ミドリムシ培養のバイオベンチャー「ユーグレナ」への投資を担当しました。その後、自らユーグレナに入り、東京大学発ベンチャーとして初の東証1部上場を果たしました。今回、ユーグレナ自体が他社と協力して、リアルテック系ベンチャー企業への投資を専門とするファンドを作ったのです。

ソーラーパネル清掃ロボットの量産化を目指す未来機械の三宅徹社長(右)ら=香川大工学部で2015年8月28日、道下寛子撮影
ソーラーパネル清掃ロボットの量産化を目指す未来機械の三宅徹社長(右)ら=香川大工学部で2015年8月28日、道下寛子撮影

 ──ユーグレナの成功で、リアルテック分野へのファンドの姿勢は変わりましたか?

 ◆永田 いまでこそ、「ユーグレナは素晴らしい、ウチに来れば投資していたのに」と言う人もいます。しかし、いまもしユーグレナが起業しても、お金を出してはくれないでしょう。残念ながら、10年たってもリアルテック分野に対する投資環境と意識は変わっていません。

 ただ、IT系ベンチャーへの盛んな投資を見ているとヒントがあります。ファンドは過去にIT系ベンチャーに投資して成功しているんです。それをもう1回やろうとしているわけです。

 ◆リバネス・丸幸弘CEO 成功体験に基づいているんですね。

 ◆永田 そうです。しかし、リアルテックの分野はそうはなっていない。まず、大企業は自前主義が強く、ベンチャー投資に積極的ではありません。ベンチャーキャピタルもサービスの内容がわかりやすく短期的に収益の見込めるネット系ベンチャーのほうに魅力を感じている。リアルテック系ベンチャーは10年単位で技術を開発するので、じっくり見ていかないといけません。時間がかかるのです。

 ──長期的な視点が必要な投資を、なぜユーグレナが始めたのですか?

リアルテック育成ファンドの永田暁彦代表
リアルテック育成ファンドの永田暁彦代表

 ◆永田 ユーグレナはミドリムシによる健康食品、ジェット燃料というリアルな技術を実現して多くの支援を受け、1部上場にまでこぎ着けました。今度は恩返しをする番だと考えたのです。「次のミドリムシ」を発掘し、芽が出るような環境をつくり、社会に還元していくべきだ、と。

 ◆丸 大事なのは、リアルテック系ベンチャー育成のための「培地」です。僕自身、それをつくりたいと思っていたとき、永田さんのリアルテック系ベンチャーへの熱い思いを聞き、協力したいと思ったんです。このファンドは資金を提供するだけでなく、われわれの持つ経営ノウハウも提供し、総合的に支援するところが特徴的です。

ニーズを満たす技術を持つ企業に投資

 ──リアルテック育成ファンドの審査では何に重きを置いていますか。

 ◆永田 「そこにユーザーの確かなウォンツやニーズがあるかどうか」です。言い換えると、地球上のどこかで困っていることがあり、それを解決できる技術が別のところにある。その将来性に投資しているんだと考えています。

リバネスの丸幸弘CEO
リバネスの丸幸弘CEO

 中東では太陽光という素晴らしい自然エネルギーがありながら、砂塵(さじん)によってパネルの発電効率が40%も落ちるという問題が存在する。一方、その課題を解決できる会社が国内にある。それが未来機械でした。丸さんの推薦はありましたが、優先的に採用するなんてことはありません。

 ◆丸 永田代表は、いい意味でドライなんですよ。僕はテクノロジーと経営者の熱ぐらいしか見ないウエットタイプです。けれども、永田さんは違う。「ニーズが確かにそこにある。その企業が社会に対して良い問題解決の方法を提案できるのか」と、客観性を持って見ています。

 ──リアルテック系ベンチャーに対して、アドバイスがあれば聞かせてください。

 ◆永田 リアルテック育成ファンドの技術評価は厳しいです。だからこそ、あのファンドが評価した会社であれば、「素晴らしい技術を持っているんだ」と言われるようにしたい。ただ、実現する技術の成否以上に、経営者が自らの技術を信じて前に進む力が重要だと思っています。

 <リバネス・丸CEOが案内役を務める「躍動する科学ベンチャー」は、原則、月1回のシリーズで掲載します。次回は、ジーンクエストを取り上げる予定です>

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丸幸弘

丸幸弘

株式会社リバネス最高経営責任者

1978年神奈川県生まれ。東京大学大学院在学中の2002年6月にリバネスを設立。「最先端科学の出前実験教室」をビジネス化した。大学や地域に眠る経営資源や技術を組み合せて新事業のタネを生み出し、200以上のプロジェクトを進行させている。著書『世界を変えるビジネスは、たった1人の「熱」から生まれる。』(日本実業出版社)がある。

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