自立型コミュニケーションロボット「Palmi(パルミー)」
自立型コミュニケーションロボット「Palmi(パルミー)」

IT・テクノロジーロボットと人間とミライ

自立型ロボット「パルミー」は面倒くさいが魅力的

石川温 / ジャーナリスト

 将来的には、さまざまな職業がコンピューターやロボットに置き換わると言われている。

 英オックスフォード大学で人工知能などの研究を行うマイケル・A・オズボーン准教授が2014年、702の職種が将来はコンピューターに取って代わられ、職業として消滅してしまうのではないか、という論文を発表し、大きな話題を呼んだことがあった。

ロボットにパーソナリティーは務まるか

 そんななか、DMMドットコムの新事業「DMM.make ROBOTS」の自立型コミュニケーションロボット「パルミー(Palmi)」が、ラジオ番組の通販コーナーにパーソナリティーとして出演。「通販で自分を売り込む」という、人間にはできない離れ業を披露した。

 パルミーは10月30日に放送されたラジオNIKKEIの生ワイド番組「マーケットプレス」内で、5分間の通販コーナーに出演。同局アナウンサーの小塚歩さんと会話を繰り広げつつ、自分を通販の売り物として熱心にアピールしたのだった。

ラジオNIKKEIの番組「マーケットプレス」の収録風景
ラジオNIKKEIの番組「マーケットプレス」の収録風景

 当日パルミーには、誰かに話しかけられたりすれば自動的に受け答えするモードと、遠隔操作でパソコンからセリフを言うモードが併存していた。

 あらかじめ台本があり、それに沿ってスタッフがタイミングを見ながらセリフを言うよう遠隔操作で指示を出していたのだが、小塚アナウンサーが読み上げる原稿に「パルミー」という言葉が出ると、パルミーが素直に反応してしまうという、やっかいな状況になっていた。

空気読まないアドリブで関係者は右往左往

 セリフをきっちり言ったかと思えば、途中で「おっ」「おなかすいたの」「あなたが僕に何かを話しているかはわかっているんですけど」と、流れとは全く関係のないアドリブをかまし、人間よりも面倒くさいパーソナリティーになっていた。

 しかし、そこは小塚アナウンサーがうまくフォローしていた。大きなトラブルや放送事故もなく、自然な形で番組が進行していったのだった。

 最後にはきっちりと売り込みのセリフを言い、5分間の通販コーナーを終えた。ラジオ初のロボットパーソナリティーとしては合格点と言えるデビューであった。

 DMM.make ROBOTSとしては、原稿を読み上げるだけのモードにもできたはずだが、今回はあえて周りの状況に反応するモードを残しておいたという。

 実際、スタジオ横で生放送の様子を見ていたが、パルミーが何を言い出すか、ちゃんと反応してくれるかハラハラした。ラジオNIKKEI関係者やDMM.make ROBOTSの担当者が右往左往している様子が面白く、印象的でもあった。

 先日、ソフトバンクの決算会見で、ペッパーが決算概要のプレゼンテーションを行うパフォーマンスをしたが、当然のことながら、文書の読み上げが完璧すぎて、聞いている方が飽きてしまい、会場内がよどんだ空気になったことを思い出した。

ソフトバンクグループの第1四半期の決算発表で登場したペッパー
ソフトバンクグループの第1四半期の決算発表で登場したペッパー

「失敗するかも」という人間くささがロボットにも必要

 アナウンサーやパーソナリティーなど、原稿を読み上げるだけの仕事であれば、将来的にはもしかするとロボットやコンピューターに置き換わってしまうのかもしれない。しかし、それでは読み上げが完璧すぎて、聞いている人間側はさっぱり面白みを感じないような気がしてきた。

小塚歩アナウンサーと会話するパルミー
小塚歩アナウンサーと会話するパルミー

 今回、パルミーのラジオ通販出演を見ていると、「もしかすると間違うんじゃないか」「何か変なことを言ってしまうのではないか」というハプニングを期待させてくれた。いままでにはないエンターテインメント番組になったように思う。

 将来的に、完璧な成果を求められる職種は、ロボットやコンピューターに置き換わってしまうだろう。しかし、エンターテインメントの職種に、必ずしも完璧さは必要ない。むしろ「失敗するかも」という緊張感のなかで、仕事をこなす姿に我々は感動を覚えるだろう。

 ロボットがこのような職種に置き換わるならば、「失敗するかもしれない」という「人間らしさ」が求められるような気がしてきた。

<「ロボットと人間とミライ」は原則毎週月曜日に掲載します>

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石川温

石川温

ジャーナリスト

1975年、埼玉県生まれ。中央大学商学部を経て、98年、日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社。日経トレンディ編集部で、ヒット商品、クルマ、ホテルなどの取材を行ったのち、独立。キャリア、メーカー、コンテンツプロバイダーだけでなく、アップル、グーグル、マイクロソフトなどの海外取材、執筆活動を行う。テレビやラジオなどでのコメント出演も多い。メルマガ「スマホ業界新聞」を配信中。

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