改正マイナンバー法で2018年から、預金者の同意があれば、銀行口座とマイナンバーをひも付けることが可能に
改正マイナンバー法で2018年から、預金者の同意があれば、銀行口座とマイナンバーをひも付けることが可能に

くらし経済プレミア・トピックス

マイナンバー「預金とひも付け」で資産は丸裸

岩佐孝彦 / 税理士

マイナンバー制度開始の衝撃(2)

 国民一人一人に付される12ケタの番号通知が年内に終われば、いよいよ2016年からマイナンバー制度開始のゴングが鳴ります。ただ、いきなり本格稼働するわけではなく、段階的に世の中に浸透させていく流れになるでしょう。

 製品ライフサイクルには、「導入期・成長期・成熟期」があります。マイナンバー制度も同様で、時系列に示すと次のようになります。

 ▽導入期=16〜17年▽成長期=18〜20年▽成熟期=21年以降、です。今回は、この三つの期間それぞれで何が起こるのかをまとめます。

マイナンバーの通知カードを配達する郵便局員(左)=2015年11月9日、宮原健太撮影
マイナンバーの通知カードを配達する郵便局員(左)=2015年11月9日、宮原健太撮影

導入期はカードの交付とポータルサイト開設

 まず、マイナンバー制度の導入期(16〜17年)を考えてみましょう。

 16年1月に始まるのは、ICチップ付きカードの交付です。15年内に簡易書留で「通知カード」が郵送されます。これを自分の顔写真とともに市町村の窓口に提出すれば、無償でICチップ付きカードを受け取ることができます。また、年金の照会、相続税の申告などでマイナンバーの利用が開始されます。

 17年からは、マイナンバーの玄関サイト「マイナポータル」が開始されます。個人番号カードのICチップに搭載される公的個人認証を用いたログイン方法が採用され、具体的には以下の三つのことができるようになります。

1)自分の個人情報をいつ、誰が、なぜ提供したのかの確認

2)行政機関などが持つ自分の個人情報の内容確認

3)行政機関などから提供される、個々人に合った行政サービスなどの確認

マイナンバーの利用範囲を広げる「改正マイナンバー法」が2015年9月3日に成立した=藤井太郎撮影
マイナンバーの利用範囲を広げる「改正マイナンバー法」が2015年9月3日に成立した=藤井太郎撮影

預貯金とのひも付けが始まる18年がターニングポイント

 マイナンバー制度は2年間の導入期を経て、18年に成長期へ移行します。このころになれば、マイナンバー制度は国民に広く浸透しているでしょう。

 ですが、筆者はこのタイミングで恐ろしいことが始まると考えています。

 それは、「預貯金口座のナンバリング」です。つまり、預貯金口座とマイナンバーのひも付けが始まるのです。これは、マイナンバー制度の大きなターニングポイントになると言えます。

 15年の相続大増税により、世間では生前贈与対策が過熱しています。将来の相続税の支払い(納税)を敬遠したいばかりに、生前に前倒しで子供や孫に預貯金など資金を移転させる動きが活発化しているのです。

 確かに年間110万円以下の生前贈与であれば、贈与税はかかりません。ただし、年間110万円を超える贈与の場合、贈与税の申告が必要です。中には「税務署にいちいち申告するのは面倒でバカらしい。110万円を少し超えるぐらいだったら税務署にバレないだろう」と、安易な贈与を繰り返すケースも少なくないようです。

少額の申告漏れ、遠隔地預金も簡単に把握される

 例えば、東京都内に住むAさんは息子に250万円を贈与したいと考えました。

マイナンバーの通知カード(見本)
マイナンバーの通知カード(見本)

 そこで、Aさんは都市銀行Bに90万円、都市銀行Cに60万円、地方銀行Dに100万円というように、総額250万円を110万円以下に分割して、息子の三つの口座に振り込みました。こうすれば、税務当局も贈与税の対象なのかどうか一瞬では判別しにくいと考えたのです。

 地方銀行DはAさんの生まれ故郷に本店があり、Aさんはいわゆる「遠隔地預金」の口座として活用していました。こうした存在は、今まで税務調査官の目も届きにくいものがありました。

 よって、相続税の調査では、家に上がった時が調査官の腕の見せどころでした。「東京に住んでいるのに、なぜ地銀のカレンダーが部屋に飾ってあるのか?」といった具合に、遠隔地預金の手掛かりをあの手この手で探っていたのです。

 しかし、マイナンバーが預金口座とひも付けされれば、税務調査官の職人技も過去のものになるでしょう。Aさんが口座を分割していても、税務調査官がマイナンバーで名寄せすれば、一瞬にして「名義預金」も「遠隔地預金」も、その存在を把握することができます。今まで手間がかかり、お目こぼしとなっていた少額の申告漏れにまで手を伸ばすことができるようになるのです。

21年以降に、口座とのひも付けを義務化?

 預貯金口座へのマイナンバーのひも付けは、18年時点では「任意」ですが、21年に完全義務化の方向で検討されているようです。完全義務化となれば、マイナンバー制度は21年に成熟期に突入します。

マイナンバーと自動車登録情報のひも付けも検討が始まっている
マイナンバーと自動車登録情報のひも付けも検討が始まっている

 そして実施時期はまだ明確ではありませんが、預貯金口座の次に不動産の登記情報や自動車の登録情報とのひも付けの検討も始まっています。特に影響が大きいのは、不動産です。国税庁の調査によると、13年度の相続財産の構成比で最も大きい土地が41.5%で、預貯金の26.0%、有価証券の16.5%を大きく引き離しています。

 将来的に、預貯金口座と不動産登記情報の両方をひも付けられれば、国税庁は資産のフローとストックの主要部分をカバーできることになります。こんな話をすると、「自分の資産を銀行に預けていては危険だ。預貯金を全部下ろしてきて、金庫の中に隠さないと……」と考える人がいるかもしれません。

 しかし、これも「焼け石に水」です。通帳に多額の引き出し履歴が残る以上、大きな買い物をしたことが確認できなければ、自宅内の隠し金庫の存在を疑われるでしょう。

 私は、このマイナンバー制度の導入期の2年間(16〜17年)で、資産防衛シナリオの設計を完了させておくことがミッションであると考えています。

 <マイナンバーは段階的に範囲を広げていきます。資産を持つ人にはどんな対応が必要なのでしょうか。次回「マイナンバー制度開始の衝撃(3)」は、マイナンバー制度導入期に資産防衛対策を進めるヒントをお伝えします>

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岩佐孝彦

岩佐孝彦

税理士

1969年、兵庫県生まれ。金融資産1億円以上・年収2000万円以上の経営者をはじめ、百年企業の3代目社長、創建600年以上の寺院住職など富裕層がクライアントの8割以上を占める。サラリーマン大家さんのキャッシュフロー改善のコンサルティングも手掛ける。最新刊は、「ずっとお金持ちの人 成金で終わる人」(日本実業出版社)。

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