スキル・キャリア部下を伸ばす上司 ダメにする上司

素人にプロジェクトを任せた上司の責任とは

細川義洋 / ITコンサルタント

 ある製造業の会社が、自社の基幹業務システムの開発を業者に依頼しました。しかし、発注した側のシステム担当社員4人が、開発業者に十分な情報提供や協力をしなかったため、プロジェクトは失敗。費用支払いを巡って争われた裁判で全面敗訴した事件がありました。

発注者側に適任者がいないこともある

 発注者側の4人の担当者は、自社の経費勘定項目を開発業者に全く説明できないなど、システムに関する知識が決定的に不足していました。他の仕事の都合を理由に、開発業者との打ち合わせでも欠席を繰り返しました。

 実は、担当者4人は、情報技術(IT)に詳しいわけでもなく、経理業務の経験もない営業部や人事部の社員でした。彼らにとって、新システム開発担当になることは、寝耳に水だったそうです。筆者はプロジェクトの失敗は避けられなかったと思います。

 失敗の責任を問われるべきは、4人をプロジェクトに送り込んだ上司でしょう。担当者を指名しただけで、具体的な指示を出したりフォローしたりすることも少なかったようです。発注者側には、ITに精通した適任者が必ずしもいるわけではありません。このような状況の時、発注側上司はどうすればいいでしょうか。

素人にプロジェクトへの知識や意欲を持たせる工夫

 まず、プロジェクトを円滑に進めるための知識を身につける必要があります。例えば、社内勉強会を開いて、システム化の対象業務やITについて教え込むことも一手です。そして、担当者たちの仕事量を調整して、プロジェクトに割く時間を確保する必要もあります。

 ただ、それだけでは十分ではありません。実は、4人の担当者は、深夜残業や休日出勤を繰り返すほどに多忙だったわけではありませんでした。その気になれば、自ら仕事量を調整したり、多少の残業をしたりして、勉強や打ち合わせの出席時間を確保することができたはずなのです。

 もう一つ大切なのは、担当者に指名した部下にプロジェクトへ参加するための意欲を持ってもらうことです。特に本来の仕事を抱えながら専門外のことまで任せる場合、この点が難しいでしょう。例えば、本業以外の業務に携わる社員に特別手当を支給する制度を備えた会社もあるようですが、これはまれなケースのはずです。

「君のためになる」ことを具体的に示す

 効果的なのは、一見、本業とは無関係に思える専門外の業務が、部下自身のキャリアにつながることを明確に示すことです。

 「後々、役に立つよ」といったあいまいな言い方ではダメです。営業担当であれば、「プロジェクトを通じて得られる経理の知識が、管理職になったときには必ず求められる」。人事担当であれば「ITの知識を得て、人事管理システムの精度向上に役立ててほしい」といったように具体的に示します。つまり、部下にとってのキャリアパスに役立つことを伝えるのです。

 多くのビジネスパーソンにとって、キャリアパスは大きな関心事です。本業との関連が見えにくい業務を任される部下は、自身のキャリアにどう生きるのかを考えることもあるでしょう。ただ、上司からしっかりとそれを示されることで、現実的に捉えることができるのです。

 <「部下を伸ばす上司 ダメにする上司」は毎週火曜日掲載です。次回は12月1日です>

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細川義洋

細川義洋

ITコンサルタント

1964年、神奈川県生まれ、立教大学経済学部経済学科卒。NECソフト(現NECソリューションイノベータ)、日本IBMでシステム開発やコンサルティングを行う。著書に「なぜ、システム開発は必ずモメるのか?」「IT専門調停委員が教える モメないプロジェクト管理77の鉄則」(日本実業出版社)などがある。

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