経済プレミアセミナーで講演する竹川美奈子さん=2015年12月9日、戸嶋誠司撮影
経済プレミアセミナーで講演する竹川美奈子さん=2015年12月9日、戸嶋誠司撮影

マネー・金融経済プレミア・トピックス

低コストのインデックスファンドで世界に分散投資

編集部

第1回経済プレミアセミナー(3)

 東京都千代田区の毎日ホールで開かれた「第1回デジタル毎日・経済プレミアセミナー」詳報の3回目。経済プレミアで「今日からはじめる投資信託」を連載したファイナンシャルジャーナリストの竹川美奈子さんは、ご飯、主菜、副菜、漬物などを詰め合わせたお弁当のように、いろいろな金融商品を選んで詰め合わせる「分散投資」を提案しました。【構成・亀井和真】

家計の損益計算書で収入と支出を知る

 私は「今からはじめる自分年金づくり」をテーマにお話しします。まず、投資を始める前にやっていただきたいことがあります。家計の損益計算書と、資産と負債のバランスシートを作ることです。今の収入と支出、資産と負債を「みえる化」することから始めましょう。

 まず損益計算書です。働くことで収入を得ている現役世代は、全体の年収から税金や社会保険料をどれだけ支払い、手取りがいくら残るのかを押さえてください。毎月いくらあれば生活できるのかを確認するためです。

 投資を始める際に基本的な収入と支出を比較すれば、リスクに対する許容度が分かります。相場が下がった場合、どれだけ耐えられるか。老後リタイアしてから今の収入より下がっても生活できる基準が判断できます。リタイア後の支出は、50歳半ばの支出の7割ほど。リスクマネジメントの観点から、もともとの支出を把握しておきましょう。

資産と負債のバランスシートを作る

 そして、いまわが家に資産がどれぐらいあるのか。バランスシートで分かります。金融資産なら定期預金や株式。有価証券は買った時の値段ではなく、時価です。住んでいるマンションなら売却した場合の資産価値、車も売却した場合にいくらになるか。年金資産も計上してください。負債の部は、短期負債のほかにマンションのローンといった長期負債の残高が対象です。

 ファイナンシャルアドバイザーとして企業を訪ね、この作業をしてもらう機会が多いのですが、同じ会社で働く同じ年代の人たちの間に、天と地ほどの違いがあることに驚きます。同じ会社ですから給与にさほどの差がないはず。10年、20年、30年の長い期間を経て積み上げた結果、健全なバランスシートになっている方と、そうでない方の違いがくっきりと出るんですね。

熱心にメモをとる参加者
熱心にメモをとる参加者

 損益計算書とバランスシートの次は、基礎年金や厚生年金といった公的年金、退職一時金や企業型確定拠出年金などの企業年金を調べてください。老後に受け取れる金額を把握した上で、リタイアまでに負債をゼロに。公的年金、企業年金の次に、自分で準備する「自分年金」について学びましょう。

日本で買える投資信託は5500本以上

 日本で販売されている投資信託は5500本以上あります。売れているものが必ずしもいいとは限りませんし、仕事をしている人は、忙しくて調べる時間がありませんね。自分のお金をどこに預けて資産を形成するか。日本だけでなく海外に目を向けてほしいと思います。

 日本なら「東証株価指数(TOPIX)」や「日経平均株価」のような、代表的な株価指数に連動した「インデックスファンド」のような投資信託があります。1社だけでなく、まとまったパッケージで、マーケットの平均的な動きに連動しています。

 一般的に投資は「まとまったお金をためてから」「投資イコールお金持ち」というイメージですが、今は一つの商品について500円、1000円といった少額の積み立てができるようになり、ハードルが低くなりました。しかも株式や債券、上場不動産投信などに分散して投資できます。

 私が伝えたいイメージは「お弁当」。ご飯、主菜、副菜、漬物などを詰め合わせたお弁当のように、株式や債券、不動産投信、コモディティーと呼ばれる金融商品、日本だけでなく、欧米先進国や新興国の地域を選んで、詰め合わせるのです。

 債券なら国内型か外国型か。株式であれば国内か外国か。インデックスファンドを組み合わせることもできますし、国内外の株式、債券にまとめて投資するグローバルバランス型1本というセット商品もあります。

LIFE MAP,LCC提供
LIFE MAP,LCC提供

世界のどの地域のインデックスに連動させるか

 たとえば、TOPIXに連動する日本の投資信託は、1万円で1900社に分散して投資されます。加えて、先進国株のインデックスに連動する投信、新興国株のインデックスに連動する投信の三つを持てば、46カ国の約4000社の株主になれるのです。

 先進国株のパッケージなら欧州・北欧・中東・アジア・オセアニア、北米の計22カ国約1300社、新興国ならロシアと東欧、アジアやアフリカ、中南米地域の計23カ国約850社のマーケット指数に連動する商品があります。

 株式や債券、投信などの金融商品を配分して運用する「アセット・アロケーション」という言葉があります。世界の株への分散投資は効果が大きく、低コストのインデックスファンドが合理的。資産形成の中核に据えるといいでしょう。

 地域に加え、株式と債券の割合も選択できます。株式3割と債券7割、株式5割と債券5割、株式7割と債券3割といったように組み合わせ配分(ポートフォリオ)によって値動きも異なりますし、1年間の投資で元本を割る回数も24〜33%とそれぞれ異なるので注意が必要です。

無理のない範囲で生活に「投資」を組み込む

 そして、手数料もコストとして意識してください。2008年ごろから低コストのインデックスファンドシリーズが出始め、15年に確定拠出年金専用のファンドの一般販売が始まって、手数料が引き下げられました。

 手数料には、購入時にかかるものや保有中にかかる運用管理費用(信託報酬)などがあり、運用管理費用が安く、購入時の手数料がゼロのものを選ぶよう心がけてください。家電を購入する時に省エネの数値やネットで価格を比較するのと同じような注意を払えばいいのです。乱立のあまり、繰り上げ償還される商品も出始めています。信託期間が無期限のものを選ぶようにしてください。

 これら投信は、老後に備えた個人型確定拠出年金なら掛け金がすべて所得控除の対象になりますし、リターンの高いモノを非課税の口座に振り分けるなどの方法を覚えてほしいですね。

 投資は、相場のいい時に始めることが多いので、下がった時のことも想定して忘れないでください。投資にあてるお金と万が一に備えるための投資に回さないお金の配分を決めましょう。長く続けるためには、生活の中に「無理のない範囲」で組み入れるのがコツ。そして、毎月コツコツ続けましょう。

 <12月9日に毎日ホールで開かれた「第1回デジタル毎日・経済プレミアセミナー」の模様を3回に分けてリポートしました。今回で最終回となります>

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編集部

編集部

長く経済分野を取材してきた今沢真・毎日新聞論説委員を編集長にベテラン・若手編集者が経済・社会の最新情勢を追います。
twitter 毎日新聞経済プレミア編集部@mainichibiz
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