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「スマホ&固定」セット割が常にお得とは限らない

石野純也 / ケータイジャーナリスト

 携帯電話と固定通信をセットで安くする割引は、大手3キャリアーで一般的になった。auでは500万世帯以上、ドコモでは100万契約と、ユーザーからの支持も集めている。一方で、注意しなければいけない点もある。携帯電話料金だけを見ると安くなると思われがちなセット割だが、固定通信との合計で見ると、かえって割高になってしまうケースもあるのだ。

 分かりやすくするために、筆者の実例を紹介しよう。筆者の自宅は都内のマンションで、光回線は各家庭に電話回線を使って分配されている。いわゆる、「VDSL」と呼ばれるしくみだ。この場合、NTT東日本では、契約が見込める戸数によって、料金を変えている。筆者のケースだと、戸数が多いため、料金は一番安い「プラン2」が適用されている。2年単位で継続契約を約束する「にねん割」を適用させているため、料金は月2750円になる。

 これは光回線そのものに支払っている値段で、インターネットに接続するためには、プロバイダーも必要だ。こちらに関しては、回線速度を重視して、インターリンクの「ズートネクスト」というサービスを契約している。IPアドレスを固定にするというやや特殊なサービスがついているため、一般的なプロバイダーよりも割高だが、料金は1200円となる。固定回線に支払っているのは、合計すると、毎月3950円だ。

セット割が割高になる場合とは?

 この回線を、ドコモ光に変えたとしよう。ドコモ光では、マンションタイプは一律月額3800円。プロバイダーとセットで契約すると、4000円もしくは4200円になるが、インターリンクはどちらにも含まれていない。そのため、ドコモ光の3800円と、インターリンクの1200円で、5000円が毎月の支払いになる。固定回線だけを見ると1050円高くなってしまうのだ。

 モバイル側の割引で相殺できればいいが、筆者の契約している5ギガバイト(GB)の「データMパック」は、800円しか割引を受けられない。そのため、差し引きで250円、料金が高くなってしまう。ドコモの場合、1050円以上の割引を受けられるのは、「データLパック」以上だが、毎月8GBも使うことはなく無駄になる。携帯電話側を家族でまとめて契約すれば得になる可能性はあるが、シェアを組める家族と同居していなければ、料金はセット割の方が割高になってしまう。

 一般的に、戸数の多いマンションは、NTT東西の料金が安く抑えられている傾向にある。その場合、ドコモ光に乗り換えると、かえって割高になることがある。

ドコモ光は、利用するプロバイダーによって料金が異なる。回線のみも3800円で提供しているが、契約形態によっては割高になることも
ドコモ光は、利用するプロバイダーによって料金が異なる。回線のみも3800円で提供しているが、契約形態によっては割高になることも

 同様に、「auスマートバリュー」も、回線によっては割高になる可能性がある。このサービスのマンションタイプは月3800円でプロバイダー代も含まれている。ただ、auスマートバリューの適用には500円の固定電話を使うことが条件だ。合計すると4300円になる。筆者はもともと3950円だったので、固定電話を使っていなければ、auスマートバリューにすると350円高くなる。auスマートバリューの携帯電話の割引分1410円を考慮すると、トータルでは安くなるものの、得する金額は1060円になる。ソフトバンクも、割引の条件に電話サービスが入っている。

 auの場合は以前からauひかりを使っていればいいが、ドコモ光やソフトバンク光は、NTT東西の「光コラボレーションモデル」を使って、新たに昨年から始まったサービスとなる。そのため、ほとんどの利用者は、固定回線をこれらのサービスに変更しなければならない。

auスマートバリューは、固定電話を使うことが適用の条件。ソフトバンクも同様。元々こうしたサービスを利用していない人にとっては、割引額が小さくなる
auスマートバリューは、固定電話を使うことが適用の条件。ソフトバンクも同様。元々こうしたサービスを利用していない人にとっては、割引額が小さくなる

セット割をすると身動きがとりにくくなる

 NTT東西の回線から光コラボレーションモデルの回線に切り替える際には、「転用」と呼ばれるしくみを使うことになる。大本の回線が同じNTT東西であるため、回線そのものを入れ替えるわけではないので、大がかりな工事は必要がない。一方で、一度転用してしまうと、再転用ができず、別の会社と契約する場合は、いったんサービスを解約することになってしまう。この点にも、注意が必要となる。

 また、固定回線は一度契約すると、なかなか変更しづらいものだ。割引を受けていると、他社からおもしろいサービスが登場したときや、今の携帯電話事業者に不満があるときなどにも、身動きが取りづらくなる。固定回線ごと他社に移るのは、骨が折れるからだ。そのため、セット割には、解約率を下げる効果があると言われている。何年かに一度、番号ポータビリティーを利用して携帯電話事業者を変える人は、こうした点にも気をつけておくようにしたい。

 <「知ってトクするモバイルライフ」は、毎週火曜日に掲載します>

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石野純也

石野純也

ケータイジャーナリスト

1978年、静岡県生まれ。慶応義塾大学総合政策学部卒。2001年、宝島社に入社。当時急速に利用者数を伸ばしていた携帯電話関連のムック編集に携わる。05年には独立してフリーランスのジャーナリスト/ライターに転身。通信事業者、携帯電話メーカー、コンテンツプロバイダーなどを取材、幅広い媒体に原稿を執筆する。業界動向を記したビジネス書から、端末の解説書まで著書も多い。

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