関口純撮影
関口純撮影

なぜ資産形成が必要か(3)

 投資にあまり良くないイメージを持っている人は少なくないのが現状です。

 「投資家」というと、どんな人物像が浮かんでくるでしょうか。一日中パソコンと向き合い、何をやっているのかもよく分からないのになぜか大金を得ている、まじめな労働者とは対極の存在−−。資産運用会社の人間としては大変残念ですが、このようなイメージを持っている人はまだまだいるようです。

 株式投資がらみの犯罪でメディアをにぎわせた人やリーマン・ショックの影響もあり、「投資=悪い、怖い」という誤解がはびこっています。お金とは汗をかいて労働で稼ぐもの、という先入観も、日本人が投資を敬遠する一因でしょう。

 最も多い誤解は、投資とギャンブルの混同です。確かに、両者共に、出したお金より多くのリターンを得ることが可能という共通点はあります。しかし、投資とは資産形成手段であり、ギャンブルは単なる個人の娯楽です。

 また、投資のリスクはコントロールできます。知識や方法論を身につけることにより、理論上の失敗確率を小さくすることができます。ギャンブルの場合、そうはいきません。断じて、投資は単にラッキーに期待するだけのマネーゲームではないのです。

投資をすることで社会人としての知見が広がる

 投資のメリットは金銭面だけにとどまりません。ビジネスにも「効く」のです。

 例えば、トヨタ自動車の株式を100株でもよいので保有してみてください。すると、世の中の見方が大きく変わります。

 トヨタ自動車といえば、日本を代表するモノづくりの会社です。年間の自動車生産台数は世界1、2位を競っています。グローバル企業ですから、その収益は世界中の国の消費者からもたらされます。つまり、トヨタ自動車の業績は、世界経済から大きな影響を受けるのです。

 したがって、トヨタ自動車の株式を保有すると、トヨタ自動車の業績はもちろんですが、世界経済の動向に対する関心が、自然と高まっていきます。何しろ、自分の損得が世界経済と直結しているようなものですから、興味が湧いてくるのは当然のことです。

 株式に投資するということは、その企業の株主になるということです。配当を受け取る以外に株主総会に参加する権利もあります。参加すれば、自分が投資している企業の経営者から直接、会社の経営状態や、それを取り巻くビジネス環境に至るまで、さまざまな話を聞くこともできます。

ビジネスの現場で生きる投資の知識

 投資によって得た知識はビジネスの現場でも生きてきます。個別企業の株式に投資していれば、企業の財務諸表や損益計算書への興味も出てくるでしょうし、これらの数字を読めるようになれば、自分のビジネスで取引先の業績を読み込む場合に役立ちます。また、投資によって得た知識は、自分の仕事と直接関係のない分野であっても、新たなビジネスチャンスを見つけるきっかけになるかもしれません。

 投資を通じて自分自身のビジネス力を高めることができるのです。

 預金だけではなかなかこの効果は期待できません。

 株式にしても債券にしても、あるいは投資信託にしても、投資商品の多くは常に値動きがあり、それによって損益が大きく左右されるため、損失を小さく、利益を大きくするため、投資先をしっかり調べるようになります。

 これを20代、30代のうちから続けている人と、何もせずにただ預金にお金を置いておくだけの人とでは、さらに10年後、20年後に持っている知識の幅に歴然とした差が開いてくるはずです。つまり投資で勝てる人は、ビジネスの現場でも勝てるだけの強力な「武器」を身につけられるのです。まさに一石二鳥といえるでしょう。

 まずは第一歩を踏み出してみてください。投資にリスクはつきものですが、そのリスクを少しでも軽減するための方法は、この連載を通じて説明していきます。

    ◇    ◇

 三井住友アセットマネジメント社長の横山邦男さんが、若い世代向けに、「資産形成」についてわかりやすく解説します。

 <「30歳ではじめる資産形成」は毎週月曜日に掲載します。次回は2月1日です>

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横山邦男

横山邦男

前三井住友アセットマネジメント社長

東京大学卒、1981年に住友銀行(現三井住友銀行)入行。日本郵政専務執行役、三井住友銀行常務執行役員を歴任し、2014年4月から三井住友アセットマネジメント社長、16年6月から日本郵便社長。住友銀行とさくら銀行の合併によるメガバンク誕生の際に腕を振るった金融界のビッグネーム。著書に「今こそはじめる資産形成」(幻冬舎メディアコンサルティング)がある。

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