東芝の不正会計問題で新経営陣から提訴された歴代3社長。左端から西田厚聡氏、田中久雄氏、佐々木則夫氏=2013年2月26日、木葉健二撮影
東芝の不正会計問題で新経営陣から提訴された歴代3社長。左端から西田厚聡氏、田中久雄氏、佐々木則夫氏=2013年2月26日、木葉健二撮影

政治・経済東芝問題リポート

<東芝不正>“暴走”社長に誰が鈴をつけるのか

編集部

ジャーナリスト山口義正さんインタビュー(2)

 東芝の不正会計問題をはじめ、過去の大企業の不正会計事件を振り返ると、社長、会長ら経営トップが深く関わっているケースばかりだ。2011年にオリンパス巨額損失隠し事件を月刊誌でスクープした経済ジャーナリストの山口義正さんに聞くインタビューの2回目は、不正とトップとの関わりがテーマとなった。【聞き手は今沢真・経済プレミア編集長、写真は川村彰】

 −−東芝は、歴代3社長が部下に「チャレンジ」を求め、強引に利益を上積みさせていました。山口さんがスクープしたオリンパス事件の場合は、過去に財テクなどで生じた損失を、当時の会長や副社長らが隠していました。カネボウの場合も、当時の社長が粉飾を続けていた。必ず経営トップが絡んでいます。トップの暴走をどう抑えたらいいのでしょうか。

社長が次の社長を指名する人事慣行に問題がある

 ◆山口義正さん 社長が次の社長を指名する企業が多いですが、そもそも、そこに問題が潜んでいるのではないでしょうか。例えばオムロンは、早くから社長指名諮問委員会という組織を作り、社外取締役が中心になって、その委員会で次の社長を指名するやり方をしているわけですね。

オリンパス元社長のマイケル・ウッドフォード氏。オリンパスの過去の不正を調査したことで社長を解任された=2011年11月23日、久保玲撮影
オリンパス元社長のマイケル・ウッドフォード氏。オリンパスの過去の不正を調査したことで社長を解任された=2011年11月23日、久保玲撮影

 −−オムロンは、創業家の立石一族に経営に対してしっかりした考え方があるからそうした仕組みが機能しているんでしょう。ただ、東芝だって指名委員会という組織があった。でも、実態としては社長経験者が決めていたようです。

 後継を育てるのがトップの大きな仕事の一つなら、そもそも社長が次の社長の指名権を持つのは良くないことなのでしょうか。それとも、きちんと業績を上げた社長であっても、後継選びは第三者に任せたほうがいいのでしょうか。

 ◆いい社長が、ずっといい後継社長を選べればいいですが、そうならないこともあります。例えばある大手企業で、とてもトップの器ではないと周囲に思われる人が社長に就いた。その社長は、副社長らライバルを子会社に次々飛ばした。自分より優秀な人に寝首をかかれないために。「イエスマンで、俺より劣っているやつは誰だ」という基準で人事をしたのです。

企業経営者「性善説」で法律が作られているのも問題

 −−それはさすがによくないとは思いますが。

 ◆もう一つ、会社法など日本の法律や企業経営のあり方は、企業のトップになる人物は悪いことをしないという性善説を前提としているように思います。でも、オリンパスでもそうでしたが、大会社の社長だって、判断を誤ったり、法律に触れることをやってしまう。もう性悪説を前提にしないといけないところまで来ていると思います。

 −−性善説を前提とした制度のどこが問題でしょうか。

 ◆甘いところです。企業のトップに鈴をつける人を制度として担保しておかないといけないと思います。いざというときに誰か声を出してくれるよねっていうことではダメなんじゃないでしょうか。

 −−その鈴をつけるのは監査役とか監査委員会でしょうか。

 ◆監査役は、社長から指名されて給料をもらっている。だから、社長のクビを飛ばすことはできません。

 −−ということは、取締役会の形式化、形骸化が問題なんですね?

オリンパスの巨額損失隠し事件を2011年にスクープした山口義正さん
オリンパスの巨額損失隠し事件を2011年にスクープした山口義正さん

 ◆そこです。ある商社は社外取締役の制度を充実させていて、優秀な人物を社外取締役に据えていました。でも、オリンパス事件が起き、その社外取締役が「うちの会社でもコーポレートガバナンスをもっと厳しく捉え、取り組みを充実させないといけない」と強く意見を述べたところ、2年だった任期がいきなり1年に変わり、その人は交代させられました。

再生を目指したはずのオリンパスは今も問題だらけ

 −−社外取締役は名誉職ではなく、実質的な仕事をすべき職です。東芝の新しい経営陣は、取締役11人中、社外取締役が7人と過半数になりました。オリンパスも粉飾事件の後、取締役11人中社外が6人になり再生を目指しました。うまく機能したのですか。

 ◆全くしていません。私に言わせれば0点です。

 −−どこが0点でしたか。

 ◆純粋な社外取締役と、銀行から派遣された役員も含めての話になるのですが、実はオリンパスでは1年ほど前から、損失隠しとは別の問題が起きているんです。それは中国などでの贈賄疑惑です。月刊誌「FACTA」の昨年10月号、11月号に書きましたが、中国工場が輸入する部品のトラブルをめぐる疑惑です。

 それに絡んで、銀行から来た役員たちが、中国で賄賂を使うことにゴーサインを出したメールが残っており、それが社内調査委員会に見つかった。それを調べた弁護士たちの社内調査委員会報告書がある。でも、その報告書は公表されていません。

 報告書を公表するかどうかを社内で議論し、社外取締役たちが公表に反対したと聞いています。経営トップらのお目付け役である社外取締役が問題を隠す側に回ったのでは、制度の根幹を揺るがしかねません。しかも社外取締役の提案で、社員に対し、パソコンを調べて情報の漏出元を調査するとのお達しが出たと聞いています。

 −−オリンパスの損失隠し事件は、山口さんが「FACTA」に記事を載せて、それを見た当時のウッドフォード社長が問題にしたが、他の役員は一人も同調しなかった。逆にウッドフォード氏は社長を解任されました。当時と変わっていませんね。法律に触れる可能性があることを問題にしないのは、社内、社外関わらず問題じゃないですか。それはオリンパス特有のことではないんでしょうね。

 ◆そうでしょうね。

 <山口義正さんインタビュー(3)は1月30日に掲載します>

編集部から:「東芝 不正会計 底なしの闇」を出版します

 経済プレミアで昨年6月から随時掲載した「東芝問題リポート」を大幅に加筆、編集した「東芝 不正会計 底なしの闇」(毎日新聞出版、消費税込み1080円)が1月30日に出版されます。東芝不正会計の表と裏を報告してきた今沢真・経済プレミア編集長のこん身の一冊です。全国の書店やアマゾンで購入できます。どうぞご一読ください。

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長く経済分野を取材してきた今沢真・毎日新聞論説委員を編集長にベテラン・若手編集者が経済・社会の最新情勢を追います。
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