第3四半期決算について会見する東芝の室町正志社長=2016年2月4日、亀井和真撮影
第3四半期決算について会見する東芝の室町正志社長=2016年2月4日、亀井和真撮影

政治・経済東芝問題リポート

東芝1万人リストラで来期V字回復の「タヌキ算」

編集部

東芝赤字拡大・7100億円(3)

 日本の事業会社で史上最悪の赤字額は、日立製作所が2009年3月期連結決算で計上した7873億円の最終(当期)赤字だ。半導体事業の業績悪化や円高による為替差損拡大で赤字が膨らんだ。パナソニックも12年3月期に最終赤字7721億円を出した経験がある。

 同じ電機業界であり、東芝と並び立つ日本を代表する会社だ。長年、韓国や中国企業との競争激化で業績悪化に苦しんできたことも共通する。

 東芝も16年3月期決算で7100億円の連結最終赤字を見込む。ただし、子会社の米原子力大手ウェスチングハウスの「のれん」の減損処理が現実味を増している。これが加われば、日立製作所を抜いて過去最悪の赤字額になる可能性が十分にある。

 その読みを裏付ける質疑が、東芝が2月4日に行った第3四半期決算記者会見であった。

大赤字の翌年度「V字回復」が経営の常道

 記者から「自己資本が3%を下回り、危機的水準だ。債務超過のリスクが高まるが、資金繰り等で、金融機関の条件は?」との質問が出た。これに対し、室町正志社長が次のように答えた。

 「資金繰りについては、金融機関とわたし自らが折衝している。金融機関からは『今年度、なんとしてもウミをすべて出し切ってほしい』と言われている。株主資本がマイナスになっては困るし、まして純資産がマイナスになったらとんでもない話だが、そういうことでなければ、『金融支援には全力を尽くす』と言われている」

東京都江東区で2015年10月、中村琢磨撮影
東京都江東区で2015年10月、中村琢磨撮影

 この発言にはさまざまな意味が込められている。まず「ウミを出し切る」とはどういうことか。

 東芝は不正会計で表面化した経営危機を脱するため、1万人の人員削減や不採算事業撤退といったリストラを行っている。リストラで15年度は赤字が膨らむが、悪い部分は今年度中に手当てして持ち越さず、16年度に「V字回復」を果たす狙いなのだ。

 経営悪化により大幅な赤字決算に転落する場合、その期に不採算事業を切り出し、翌年度一気に黒字化を目指すのは、上場企業の経営の常道でもある。室町社長と取引銀行の幹部はそうした考えで一致しているとみられる。

 東芝が抱える最大のウミとは? それは、ウェスチングハウスの「のれん」の減損問題にほかならない。東芝の旧経営陣は、ウェスチングハウス単体で行った減損を、東芝の連結決算には反映しないという、とんだ「お荷物」を残した。

 社外取締役が過半数を占める現経営陣が、一刻も早く当たり前の会計処理に戻したいと考えるのは当然のことだ。この点では、銀行も同じ考えなのだ。

 ただし、ウェスチングハウスの減損をするには条件がある。自己資本がゼロになったり、債務超過になったりしないことが「大前提」だ。

富士フイルムやキヤノン、三井物産らが名乗り

 この問題に手をつけていないのに、東芝の年度末の自己資本は1500億円に減る見込みだ。ここでウェスチングハウスを減損すると、自己資本がマイナスになりかねない。このため、自己資本を大幅に増強する唯一の手段として、成長分野である医療機器子会社、東芝メディカルシステムズの株式売却を進めているのだ。

 富士フイルムホールディングスやキヤノン、三井物産と、米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)の企業連合などが買収に名乗りを挙げている。1月に1次入札を終え、売却先を絞り込み、2次入札を予定していることも、この日室町氏は説明した。

 東芝メディカルシステムズの売却額は、一部報道では4000億〜5000億円とも言われているが、室町社長は「少し高めになる」と述べた。

 売却額がそのまま資本増強になる訳ではない。東芝メディカルシステムズの株式の資産価値は、東芝の資産として計上されている。それを差し引かなければならない。東芝メディカルシステムズ売却の成否が、東芝の行方を左右するカギになっている。

 <「東芝赤字拡大・7100億円」は今回で終わります。「東芝問題リポート」は随時掲載します>

編集部から:「東芝 不正会計 底なしの闇」を出版

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編集部

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長く経済分野を取材してきた今沢真・毎日新聞論説委員を編集長にベテラン・若手編集者が経済・社会の最新情勢を追います。
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