北海道小樽市の川嶋鮮魚店は、iPad1枚で魚を売り歩く「何処でも、魚屋」を展開している
北海道小樽市の川嶋鮮魚店は、iPad1枚で魚を売り歩く「何処でも、魚屋」を展開している

IT・テクノロジーITが変えるビジネスの近未来

タブレットで顧客開拓「警備機器も魚もプレゼンも」

林信行 / ITジャーナリスト

 スマートフォンやタブレットの登場で、それまでITと縁がなさそうだった業界のIT化が一気に進んでいることを紹介する本連載。前回からは個別の業界事情ではなく、スマートフォンやタブレットのどんな特性が変化をもたらしているかにスポットライトを当てている。

実機の使用感をタブレットのアプリで再現

 タブレットは何百ページの資料、何十冊の資料を入れても重さが数百グラムのまま変わらないという特徴から、営業職の人の人気が高い。すでに会社が資料を電子化していれば、それらをタブレットに移しておけばよいだろう。他の商品の情報などもすぐに呼び出して相手に見せることができる。

 だが、どうせタブレットを使うならと、紙にはできない表現に挑戦する企業も多い。

 岐阜県で警備事業を展開する日本ガード(本社・岐阜市)は、以前は総重量が20キログラムを超える大掛かりなホームセキュリティー機器をそのまま持ち歩いて営業していた。しかし、iPad登場後は、セキュリティー機器の操作パネルの動作や音など操作感をリアルに再現するアプリを開発、それを使って営業をしている。以前と比べて営業で回れる先が1.5倍ほどに増えたという。

 ≪iPad導入で営業スタイルを変えた日本ガード(YouTubeのページにリンクします)≫

タブレットの特性を生かした新ビジネス

 タブレットは、ただ資料の携帯性を高めるだけでない。文字や写真といった平面的な情報だけでなく、音や動画、場合によってはその場のやりとりに応じてインターネット検索して関連情報を表示できる。そして、スカイプやフェイスタイムなどのビデオ通話越しに、専門スタッフが応対をすることも可能だ。これらすべてを1枚に閉じ込めて持ち歩けること自体が、その強みだと言える。

 こうした特性は、資料のプレゼンテーションだけに使われるものではない。北海道小樽市の川嶋鮮魚店は、iPad1枚で魚を売り歩く「何処でも、魚屋」を展開している。

 ≪何処でも、魚屋!iPad 小樽三角市場 川嶋鮮魚店(facebookページにリンクします)≫

 三軒茶屋や渋谷の街角でiPad越しのビデオ通話機能で旬の魚の魅力を語り、受注、発送するというスタイルだ。

新たな活用法を見つけるのはあなた次第

 教育の世界でも注目されている。動物の生態や鳴き声までわかるインタラクティブ(双方向的)な電子百科事典や、電子教科書などの形でその機能が生かされているのだ。「百聞は一見にしかず」というが、写真が動画になるとさらに理解が早まることも多い。前回紹介した飛行機のキャビンアテンダントの事例でも、新しい機材のドアの開閉方法などの解説が動画で入っていることも、重要なポイントだ。

 自分の普段の仕事を見て、顧客に対して、あるいは同僚の間でうまく伝わっていないことは何かに着目すると、あなた自身もこうした新しいタブレット活用法の発明者になれるかもしれない。

≪ 視 点 ≫ タブレットの多彩な表現

 我々は日々の仕事が忙しいと、ついつい面倒で非効率的でも昔ながらのやり方で仕事をやり続けてしまう。しかし、スマートフォンやタブレットといった道具を使えば、同じ仕事をはるかに簡単に、効率良く、そして高品質にできることも多い。

 チャレンジするための時間を工面すれば、その後の仕事の効率が劇的に向上するケースもあるだろう。それにそのチャレンジをしていないと、後に新しいやり方で参入してきた新興のライバルに負けてしまうこともある。

 良い事例をつくるには、今の自分の仕事で「本心では面倒臭いと思っていること」「本心では無駄、あるいは非効率と思っていること」は何かという素直な声に耳を傾けることだ。そうした悩みの多くは、今日の技術を使えば簡単に解決できるものも多く、その先には大きな飛躍が待っている。

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林信行

林信行

ITジャーナリスト

1967年生まれ。アップルやグーグルの動向や技術、製品を継続的に取材対象としており、情報技術分野のテクノロジーに明るい。近年は、自動車やファッションなどのさまざまな業界におけるIT活用の取り組みに関心を持ち、人々の暮らしや社会にもたらす変化をテーマとしている。著書多数。

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