それぞれの思いを胸にゴール
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社会・カルチャー東京マラソンを走る

走ることは生きること「いつも前を向いて」

編集部

2月28日東京マラソン開催(3)

 1月に108キロ、2月に100キロ。東京マラソンに備えて私(経済プレミア編集長、今沢真)はそれなりに練習を積んだ。そして、目標タイムを「5時間30分」に設定した。

 「目標タイム」。多くのランナーが、レースに出るとき、自分の実力に合わせて目標を設定する。目標を設けなくても、大会には制限時間がある。市民ランナーが出場するフルマラソンの大会は、「6時間」が多い。東京マラソンは「7時間」。他の大会より少し余裕を持って走れることが、人気が高い理由の一つでもある。

42キロを走り切るのは簡単ではない

 「20キロ、30キロは誰でも走れる。でも、42キロを走り切るのは簡単なことじゃないんですよ」

スタート前の荷物預かりでボランティアが大活躍
スタート前の荷物預かりでボランティアが大活躍

 数年前、千葉県佐倉市で開かれたフルマラソンの大会に出場した際、開会式でゲストの小出義雄さんが話していた。シドニー五輪で金メダルを獲得した高橋尚子選手の指導者である。小出さんは、5キロごとのラップタイムを取り、30キロ以降にタイムが落ちないように走ることが、目標タイムを達成する秘訣(ひけつ)だと説明していた。

 21キロのハーフマラソンなら、スタートの5キロとゴール手前の5キロをほぼ同じペースで走ることはそう難しくない。だが、42キロになるとまったく違う。私はふつう5キロを30〜35分のペースで走る。4時間37分のベストタイムで走った時は、最後までそのペースで通すことができた。

 ところが、途中で少しでも歩いてしまうと、5キロのラップタイムはたちどころに40分を超えてしまう。ゴールタイムもあっという間に5時間をオーバーするのだ。

ブロックごとに整列してスタート地点へ
ブロックごとに整列してスタート地点へ

目標に掲げたタイムよりも……

 2月28日「東京マラソン2016」の本番。朝方から日差しがあり、この時期にしては暑くなりそうだったが、冷たい雨が降るよりもよほどいい。体調も良好。その私の結果はどうだったか。

 案の定、終盤に激しく失速したのである。想定タイムで進んだのは25キロまで。足が上がらなくなった。膝の屈伸をしようとしたが、道ばたの柵につかまらないと膝が曲がらないのだ。

 それでも足を引きずるように前に進んだ。25キロ以降の5キロごとのラップタイムは44分、53分、49分。そして最後の2キロ余りに19分かかった。歩いた方がよほど速かったかもしれない。5時間43分9秒という、目標より13分遅いタイムでのゴールだった。

 それでも、上り坂や給水ポイントを除き、最後まで歩くことはしなかった。気力だけは最後まで続いた。「それだけで満足」。フルマラソンの楽しみ方をまた一つ覚えたかもしれない。

完走に向け給水をとる=18キロ付近
完走に向け給水をとる=18キロ付近

ランニングにはまった三つの理由

 2009年の七夕の夜、皇居1周で始まった私の総走行距離は、この日の42キロを加え、5335キロに達した。なぜ、これだけランにはまったのか。いま整理すると理由は三つあると思っている。

 第一に、走っている間は、「無心」になることができる。仕事で嫌なこと、気になることがあっても、走っている間は、それを忘れてしまうのだ。

 そして、第二の理由。それは、物事に前向きになれる気がすることだ。走っている間、仕事のことを考えることも時としてある。不思議だが、何か前向きなアイデアが浮かんでくる。

「あと8キロか…」と気力を奮い立たせつつ34キロ地点を通過する筆者
「あと8キロか…」と気力を奮い立たせつつ34キロ地点を通過する筆者

 なぜ、前向きになれるのか。それは、前を向いて走っているからではないか、と冗談みたいなことを考えている。立ち止まることはあっても、決して後ろに向かって走ることはない。それが頭にいい働きを与えているのかもしれない。

 ときどき、大きな満足感を得られる。それが三つ目の理由だ。いつもではない。例えばレースに10回出て1〜2回だ。最近は、スタートラインに立つことで喜びを感じるようにもなった。「フルマラソンに出られるなんて、どれだけ幸せなことなんだろう」という思いでいっぱいになる。

 あの喜びをまた味わいたい。それが次のレースに向けて練習を積むエネルギーになるのだ。

 <「2月28日東京マラソン開催」は今回で終わります>

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編集部

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長く経済分野を取材してきた今沢真・毎日新聞論説委員を編集長にベテラン・若手編集者が経済・社会の最新情勢を追います。
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