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直木賞「つまをめとらば」が描く、女という現実

重里徹也 / 文芸評論家、聖徳大教授

 男は自意識にからめ捕られやすい。あれこれ考えて、身動きできなくなってしまう。自意識というのは底なし沼で、他者が見えなくなる。だから、何のために生きているのかわからなくなる。生き続ける意味を見失ってしまうのだ。

 一方、女はそんな男にとって、現実そのもののように姿を現す。生命力に満ちている。生き続けることは女にとっては大前提なので、何のために生きるのか、とはあまり悩まない。それよりも、いかに生きるのかという課題に取り組む。

 こんな図式を描いた古今東西の名作は枚挙にいとまがない。これは本当に正しいのだろうか。ある種の論者に…

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重里徹也

重里徹也

文芸評論家、聖徳大教授

1957年、大阪市生まれ。大阪外国語大(現・大阪大外国語学部)ロシア語学科卒。82年、毎日新聞に入社。東京本社学芸部長、論説委員などを歴任。2015年春から聖徳大教授。著書に「文学館への旅」(毎日新聞社)、共著に「村上春樹で世界を読む」(祥伝社) などがある。