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370Mbps「LTEアドバンスト」で通信速度競争過熱?

石野純也 / ケータイジャーナリスト

 スマホの通信速度は、年を追うごとに上がっている。とくに高速通信規格「LTE」が導入されてから、各社が速さを競うようになった。2016年から、総務省の主導で、理論上の最高値ではなく、実測値を広告、宣伝に使うことも始まっている。

 そのスマホの通信速度が、この夏、さらに大きく上がろうとしている。NTTドコモは、LTEより受信時の速度を出しやすい「TDーLTE」と呼ばれる方式を使って、受信時最大370メガビット秒(Mbps)の「LTEアドバンスト」を6月に開始する。同時に既存のLTEの方式を拡大して375メガビット秒のエリアを作る予定だ。

ドコモは、6月から受信時最大375メガビット秒、370メガビット秒のサービスをそれぞれ開始する
ドコモは、6月から受信時最大375メガビット秒、370メガビット秒のサービスをそれぞれ開始する

 auも、6月からドコモと同じ方式でのサービスを提供し、技術的には受信時最大370メガビット秒を出すことができるようになる。ソフトバンクはまだ正式な時期を表明していないが、同様に高速化を図る可能性は高い。

新たな周波数の割り当てで実現

 3社が通信速度を高速化できる主な理由は、3.5ギガヘルツ帯というこれまでより高い周波数帯を、総務省から新たに割り当てられたためだ。3社ともこの新しい周波数帯を「TDーLTE方式」で利用でき、既存のLTEの周波数と合わせる技術を用いて、高速化を実現する。道路で例えると、車線が増えて速度が出やすくなるようなことだ。

auも、3.5ギガヘルツ帯を使ったサービスを6月に開始する予定
auも、3.5ギガヘルツ帯を使ったサービスを6月に開始する予定

 ただし、広いエリアで一律に通信速度を上げることは難しい。3社とも、東京都心のターミナル駅のような、人が密集して通信速度が遅くなるような場所で、ピンポイントに快適性を上げるために、3.5ギガヘルツ帯を活用する方針だ。

 この周波数を使えば、そのような場所で人が混雑していても、家庭内の光ファイバーを超える速度が出るようになる。ファイル容量の大きな動画などのデータを数秒でダウンロードできるようになるのだ。

対応する端末はこれから登場

 ただし、既存の端末は3.5ギガヘルツ帯に対応していない。メリットを受けるには、この周波数に対応する端末の発売を待ち、買い替える必要がある。現状ではどのような端末がいつ出るのかは明らかになっていないが、おそらく、スマホの夏モデルとして登場するはずだ。

 2月にスペイン・バルセロナで通信技術の展示会「モバイル・ワールド・コングレス」が開催された。展示会では、新しい周波数に対応したサムスンの「ギャラクシーS7」「S7エッジ」や、ソニーの「エクスペリアXパフォーマンス」などが発表されている。こうした機種は、日本にも導入されるだろう。

 例えば、14年にドコモが発売した最新モデルの機種は、下りの最高速度が150メガビット秒だった。その端末を持っている人が機種変更すれば、最高速度は倍以上になる。そして、混雑したエリアで快適さが上がる。

3.5ギガヘルツ帯の基地局は、混雑エリアの快適性向上のために導入される
3.5ギガヘルツ帯の基地局は、混雑エリアの快適性向上のために導入される

 速度が上がると、そのぶん同じ時間で扱えるデータの量も増える。このため、契約している通信容量の限度を超えないよう注意は必要になるが、通信速度が遅いと感じている人なら、買い替える価値はあるのかもしれない。

 通信事業者にとっては、ネットワーク全体の容量が拡大していることになる。将来的には、たとえば、3ギガバイト(GB)のプランが5GBに増えたりといった形で、利用者に還元されるようになるかもしれない。新しい端末の購入者に、何GBかを追加でプレゼントするキャンペーンなどにも、期待したい。

 <「知ってトクするモバイルライフ」は、毎週火曜日に掲載します>

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石野純也

石野純也

ケータイジャーナリスト

1978年、静岡県生まれ。慶応義塾大学総合政策学部卒。2001年、宝島社に入社。当時急速に利用者数を伸ばしていた携帯電話関連のムック編集に携わる。05年には独立してフリーランスのジャーナリスト/ライターに転身。通信事業者、携帯電話メーカー、コンテンツプロバイダーなどを取材、幅広い媒体に原稿を執筆する。業界動向を記したビジネス書から、端末の解説書まで著書も多い。

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