マネー・金融30歳ではじめる資産形成

知っておきたい景気循環サイクルと市場の動き

横山邦男 / 前三井住友アセットマネジメント社長

景気とマーケット(2)

 景気の変動はマーケットにどのような影響を及ぼすのでしょうか。

 ここでいうマーケットは、株式市場、債券市場、為替市場等の金融市場のことを指しています。資産運用は、マーケットの値動きによって、損益が左右されます。したがって、好景気と不景気によって、マーケットがどのような動きをするのかといった点は、きちんと把握しておいた方が良いでしょう。

 景気の良し悪しと、これらのマーケットの値動きには、おおむね次のような関係性があります。

 好景気→株価上昇、債券価格下落(長期金利上昇)

 不景気→株価下落、債券価格上昇(長期金利低下)

 景気のサイクルを四つに分けて考えてみましょう。景気回復局面、景気のピーク、景気後退局面、景気のボトムです。それぞれ、マーケットにどのように影響するのでしょうか。

「景気の底」では金利は低下する

 まずは景気のボトムを考えてみましょう。景気のボトムでは、景気が冷え込んでいるため企業業績は低迷しており、その結果、株価も上がりにくい環境が続きます。このような局面では、一般的に金利が低下し、為替は円安方向へと動きます。

 また、景気が低迷していく中で中央銀行は金融緩和を行い、景気を刺激しようとします。債券市場では債券が買われ、長期金利が低下します。

 そうすると徐々に投資対象が変わってきます。より高いリターンを求め、株や外国債などのリスク資産にお金が集まり始めるのです。

 そのような流れが出てくると、景気は段々と回復局面に向かいます。株式相場が上昇してきても当初は低金利のままですが、やがて景気回復が本格的になると、株価の上昇スピードが上がるとともに、長期金利も上昇します。

 こうして景気は回復のスピードを速め、やがてピークに達します。

 ただ、景気が過熱すると、インフレが進む恐れが生じてきます。インフレは、緩やかに進んでいる限りはそれほど問題になりませんが、急速に進むと、さまざまな問題を引き起こします。物価が上昇すると、株式や不動産等のインフレによって値上がりする資産を持っている人と、持っていない人との差が広がります。

現金の価値が目減りするのがインフレ

 物価が上昇するということは、相対的に現金の価値が目減りすることでもありますから、インフレによって値上がりする資産を持っていない人は、お金を使っていなくても実質的に預貯金が減ってしまうことになるのです。

 こういったインフレの影響を避けるため、景気拡大がピークに達する局面では日銀が金融の引き締めを行い、金利水準が高くなります。その結果、債券価格は景気が悪いときに比べて値下がりします。

 すると今度は徐々に景気が冷え込み始めます。例えば金利水準が高くなると、企業の借入資金や個人のローンに至るまで、お金を借りるコスト(借入金利)が上がるため、設備投資や個人消費が落ち込んでいくからです。

 さまざまな景気指標には景気後退を表す数字が並び、景気後退に伴う企業業績の低迷で株価は下落します。日本の景気拡大に対する期待がなくなってくれば、海外の投資家も日本への投資を抑制するため、円が売られて円安が進む場合もあります。

 そして、景気後退が厳しくなるとともに、インフレが落ち着いてきたと判断した時点で、日銀は金融緩和を行います。そのため、景気後退局面の最終段階から徐々に金利は低下し、やがて景気の底に達するのです。これが景気循環のサイクルです。

    ◇    ◇

 三井住友アセットマネジメント社長の横山邦男さんが、若い世代向けに、「資産形成」についてわかりやすく解説します。今回は「景気とマーケット」シリーズの2回目です。

 <「30歳ではじめる資産形成」は、毎週月曜日の掲載です>

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横山邦男

横山邦男

前三井住友アセットマネジメント社長

東京大学卒、1981年に住友銀行(現三井住友銀行)入行。日本郵政専務執行役、三井住友銀行常務執行役員を歴任し、2014年4月から三井住友アセットマネジメント社長、16年6月から日本郵便社長。住友銀行とさくら銀行の合併によるメガバンク誕生の際に腕を振るった金融界のビッグネーム。著書に「今こそはじめる資産形成」(幻冬舎メディアコンサルティング)がある。

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