ロンドン市内のケータイショップ=写真はいずれも筆者撮影
ロンドン市内のケータイショップ=写真はいずれも筆者撮影

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長く使う人にも買い替える人にも公平な料金とは

北俊一 / 野村総合研究所上席コンサルタント

 首相の携帯電話値下げ指示を受け、総務省は「スマートフォンの料金軽減と端末販売の適正化」の方針を打ち出した。その結果、2月1日から、全国の携帯電話ショップで、端末価格を上回るような過度な販売補助金は規制され、いわゆるゼロ円を“もぐる”安売りは一気に減った。

 端末補助金の定義など細かい規定をまとめた「ガイドライン案」は、現在パブリックコメント募集を終え、総務省で最終調整中だ。

 ガイドライン案へのリンクはこちら

 この3月商戦では、各携帯電話事業者が「ガイドライン案」を独自に解釈してキャンペーンをしているため、ゼロ円をもぐる販売も散見されるが、ガイドラインが有効となる4月1日以降、ゼロ円未満の販売はなくなるはずだ。

常軌を逸した販売が「行き過ぎた販売」に改善

 新聞各紙やネットメディアでは、今回の端末価格上昇をネガティブに捉える報道が多いが、ゼロ円まではOKなのであり、それすら国際的に見るとまだ行きすぎた状態で、海外の通信キャリアーに説明すると「クレージー」と言われる状態だ。なぜ「クレージー」と言われるかというと、端末を買い替えずに長く使っているユーザーが、端末を買い替えるユーザーの端末代金を通信料金の中で負担しているという、不公平な状態だからだ。

 つまり、海外の事業者から見れば、今回は「常軌を逸した状態」から「行きすぎた状態」にやや改善されるだけであり、今後数年をかけて、より公平な料金プランに移行していく必要がある。もちろん、徐々に削減される端末補助金が、料金値下げなどでユーザーにしっかりと還元されることが大前提だ。

 さて、ガイドライン案の「端末購入補助の適正化に関する基本的な考え方」の注釈部分に、次のような一文がある。

 「電気通信役務の料金プランにかかわらず、一定となっている端末購入補助を見直すことも考えられる」。これはどういうことか、説明しよう。

 日本では現在、例えば月3GB、5GBといった携帯電話のデータプランのどれを選ぶかによらず、端末補助金は一定となっている。しかし、大容量のデータを使う=高い通信料金を支払うユーザーは、低い通信料金を支払うユーザーよりも、端末を安く買えるということがあっても良いのではないか、ということである。この販売プランは、イギリスの販売プランを念頭に置いたものだ。

端末を安く買ったら差額を毎月の料金で返すイギリス流

欧州最大手の携帯電話販売代理店「カーフォンウェアハウス」の店頭
欧州最大手の携帯電話販売代理店「カーフォンウェアハウス」の店頭

 筆者は2月末、ロンドンのケータイショップを回り、端末がどのように売られているかを視察してきた。写真は、欧州最大手の携帯電話販売代理店「カーフォンウェアハウス」のショップ店頭のものだ。

 左側のSamsung GalaxyS6 Edge+は比較的新しいスマホであるが、三つの価格が表示されている。一番左がHandset Only、端末だけを購入する場合の価格であり、599.99ポンドである。1ポンド160円で計算すると約9万6000円だ。

 一番右はPay as you go、プリペイド端末として購入する場合の価格であり、Handset Onlyと価格は変わらない。そして真ん中がPay Monthly、月払いタイプの契約を行った場合であり、月々の料金が35ポンド(約5600円)からとなっている。その上にUpfront Cost69.99ポンドとある。初めに69.99ポンド支払い、24カ月間は35ポンド以上のプランに入ってください、ということだ。

 つまり、本当は599.99ポンドのスマホを69.99ポンドで買いたいなら、毎月35ポンド以上のプランに2年間入らないとダメですよ、差額の約530ポンドを回収する2年間は解約しないでくださいね、ということだ。これを逆にとらえれば、毎月高い料金を支払う人ほど、よりスマホを安く買えるということになる。ただし、2年縛りの途中で解約すると、未回収分のコストに相当する高額なETF(Early Termination Fee)が課されることになる。

 旧機種については、月々の料金プランのハードルが下がり、端末補助金に相当するものが増えていくが、新機種については端末補助金に相当するものはほとんどなく、安く買った分の差額は、自分が毎月の料金から返していく構造であり、新機種からゼロ円で売られている日本に比べると、公平なプランと言えるだろう。

 わが国のスマホ販売の適正化はまだスタート地点に立ったばかりだ。今後、各携帯電話キャリアーから、より公平でユニークな料金プランが次々と登場することを期待しよう。

 <「最適メディアライフ」は原則、金曜日に更新します>

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北俊一

北俊一

野村総合研究所上席コンサルタント

1965年、横浜市生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科修了。90年株式会社野村総合研究所入社。四半世紀にわたり、情報通信関連領域における調査・コンサルティング業務に従事。専門は、競争戦略、事業戦略、マーケティング戦略立案及び情報通信政策策定支援。総務省情報通信審議会専門委員。

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