成人式を迎え、会場前で記念撮影する振り袖姿の新成人たち=2016年1月11日、手塚耕一郎撮影
成人式を迎え、会場前で記念撮影する振り袖姿の新成人たち=2016年1月11日、手塚耕一郎撮影

くらし20年後の暮らしとお金

年金を受け取れないと思う若者が多いがたぶん大丈夫

塚崎公義 / 久留米大学商学部教授

知っておきたい公的年金(3)

 日本の年金制度は、現役世代が高齢者を支える仕組みになっています。仕組みができたのは現役世代が多く、高齢者が少ない時代でしたが、今では少子高齢化が進み、今後は一層高齢者の比率が高まっていくことが確実です。果たして今の若者が高齢者になった時に、年金を受け取れるのでしょうか?

 年金制度自体が資金不足に陥った時には、政府が財政で助けてくれると期待されますが、頼みの政府も毎年の財政が大幅な赤字で、結果として巨額の借金を抱えています。

 そこで、「若者は年金保険料を支払っても老後には年金が受け取れない」と考える人も少なくありません。今回は、この問題について考えてみましょう。

国民年金の支給額は月額6万5000円

 国民年金は全員が加入することになっているので、原則として誰でも65歳になれば毎月6万5000円程度を受け取ることができます。ただし、払うべき年金保険料を支払わなかった場合は減額、もしくは年金ゼロになってしまいます。

 サラリーマンの年金は、今少し手厚くなっています。夫がサラリーマンとして40年間平均的な収入で働き、妻が専業主婦の場合、夫婦2人で毎月22万円程度の年金を受け取れます。現役時代の所得が高い人ほど保険料も高く、老後の年金も多く受け取れます。

 高齢者の年金受取額は、原則としてインフレになれば増加していくので、生活水準は一定に保たれることになっていますが、少子高齢化などの影響から、毎年0.9%ずつ増加幅が抑制されることになっています。これを「マクロ経済スライド」と呼びます。したがって、その分だけ年金が目減りすることになります。

 さらに、5年ごとに見直しが行われるので、予想以上に少子高齢化が進んだ場合や経済成長率が予想以上に低下した場合などには、目減りのペースが早まることもあり得ます。

サラリーマン夫婦の年金額は月額約22万円

 厚生労働省が2014年に発表した見通しでは、さまざまなケース分けが行われていますが、最も悲観的なケースでは、サラリーマン夫婦の年金額が2014年の21万8000円から55年には17万8000円に減少するとされています。生活水準が2割程度低下する試算になっています。この試算には物価上昇は考慮されておらず、実際には物価の動きを勘案した年金額になります。

 最も悲観的なケースでも、まだ前提条件が甘すぎるという人もいますが、年金が受け取れなくなるということではなさそうです。

 ここからは筆者の予測です。万が一、厚生労働省の予測が大きく外れて年金がほとんど支払われないことになったと仮定してみましょう。政府は万難を排して年金の支払いを支援するはずです。なぜなら、年金が支払われないと、ほとんどの高齢者が生活保護を申請することになり、政府の財政はかえって悪化してしまうからです。

 日本政府には、増税の余地が充分にあるので、最後の最後には大胆な増税が行われるでしょう。極端な話をすれば、相続税率を100%にすれば、高齢者の持っている資産は30年程度で国庫に入ります。日本では金融資産の多くは高齢者に保有されているので、それで十分な財政再建になるわけです。

 もちろん、増税は相続税が良いのか所得税が良いのか消費税が良いのか、という点は充分な議論が必要ですが、何とかなりそうだ、というイメージはお持ちいただけたと思います。

それでも年金が支払われないと思っている人に

 筆者と異なる予想をしている人も多いことでしょう。以下では、そういう人々に、筆者からアドバイスをしておきましょう。

 年金が受け取れないのなら、国民の多くが生活保護を申請し、それによって政府の財政が破綻します。

 そんな国の通貨は誰も持ちたくないですから、きっと円を米ドルなどの外貨に換える人が殺到して、米ドルなどの値段が何倍にも値上がりするでしょう。お手持ちの資産は早いうちに、具体的には今後10年ほどの間に、少しずつ米ドルなどに換えておきましょう。

 <「20年後の暮らしとお金」は毎週金曜日の掲載です。久留米大学教授の塚崎公義さんが、老後の生活に困らないようにするにはいま、どうしたらよいのかを解説します>

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塚崎公義

塚崎公義

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関係の仕事に従事した後、2005年に銀行を退職して久留米大学へ。「退職金貧乏 定年後の『お金』の話」「老後破産しないためのお金の教科書」「増補改訂 よくわかる日本経済入門」「世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書」「なんだ、そうなのか! 経済入門」など著書多数。

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