くらしマンション・住宅最前線

マイホーム購入「年収の5倍まで」はもう古いのか

櫻井幸雄 / 住宅ジャーナリスト

 自分は、いったいいくらの住宅を買うことができるのか。マイホームを買おうとするとき、誰もが最初に考えることである。

 その目安として、「購入できるマイホームは年収の5倍まで」というものがある。年収400万円であれば、2000万円まで。年収500万円であれば、2500万円まで、となるわけだ。

「年収の5倍」は住宅ローン金利5%時代の考え

 分かりやすい目安だが、じつはこれ、昭和時代につくられたもの。住宅ローンの金利が安くても5%台。6%、7%の金利も珍しくなかった時代の目安だ。

 これに対し、現在の住宅ローンは変動で1%未満、固定でも1%前後。昭和時代よりも大幅に下がり、低金利はまだしばらく続きそうだ。となると、「目安」も更新されなければならない。

 ちなみに、私が昭和末期にマンションを購入したとき、年収500万円程度で、3300万円のマンションを購入し、3000万円の住宅ローンを組んだ。年収の6倍以上のマイホームを買ったわけだ。

 「年収の5倍まで」という枠を超えているが、当時はそれが当たり前だった。「年収の5倍まで」は、“無理なく購入できる目安”であり、家を買うときは多少無理をする人が多かったのである。

 3000万円のローンを組んだ私は毎月15万円(ボーナス併用なし)の返済をした。現在の金利水準ならば、同じ返済金で4500万円程度の住宅ローンを組むことができるだろう。

 つまり、現在は年収500万円の人が4500万円のローンを組み、頭金を500万円用意することで5000万円の物件が購入可能となる。

 年収500万円で5000万円の住宅が購入できるなら、「年収の10倍まで」が目安ということになる……のだが、これは“多少無理をしたときの目安”。

大手企業の共働きなら3LDK7000万も射程内

 安全策をとれば、それよりも毎月の返済額を減らしたい。毎月12万円の返済なら3600万円程度のローンを組むことができ、頭金400万円で4000万円の住宅を購入可能。となると、「年収の8倍まで」が穏便な目安といえる。

 年収が800万円なら6400万円の高額物件も無理ではない……。大手企業に勤める人や夫婦共働きの世帯であれば7000万円台の3LDKも射程圏内ということなのだろう。

 今、首都圏の郊外エリアでは、駅に近い場所で、「3LDKが7000万円」という価格レベルの物件が増えている。それらは、価格の高さをものともせず、好調に売れている。

 その背景には、「年収の8倍までの物件は購入可能」と判定する世帯が増えているという事情があるのかもしれない。

<「マンション・住宅最前線」は毎週木曜日更新です。次回は4月21日です>

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櫻井幸雄

櫻井幸雄

住宅ジャーナリスト

1954年生まれ。年間200物件以上の物件取材を行い、首都圏だけでなく全国の住宅事情に精通する。現場取材に裏打ちされた正確な市況分析、わかりやすい解説、文章のおもしろさで定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞、日刊ゲンダイで連載コラムを持ち、週刊ダイヤモンドでも定期的に住宅記事を執筆。テレビ出演も多い。近著は「不動産の法則」(ダイヤモンド社)。

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