東芝の志賀重範・次期会長=2016年5月6日、今沢真撮影
東芝の志賀重範・次期会長=2016年5月6日、今沢真撮影

政治・経済東芝問題リポート

減損隠して「若干グレー」新会長は東芝を再生できるか

編集部

東芝・新体制発足へ(4)

 今年のゴールデンウイークは飛び石連休だった。その谷間の5月6日金曜日、東芝は室町正志社長(66)に代わって新生・東芝の顔になるトップを発表した。社長には綱川智副社長(60)が就任し、空席だった会長に志賀重範副社長(62)が就任する。室町氏は特別顧問に退く。いずれも6月末の株主総会後に正式に決定する。

 東芝本社ビル39階の会見室は、連休の谷間とあって、報道陣の数はいつもより少ない。壇上には、室町、綱川、志賀の3氏と、指名委員会の委員長を務めた小林喜光・三菱ケミカルホールディングス会長も加わった。

報道陣の数がいつもより少ない東芝本社ビル39階の会見室=2016年5月6日、宮武祐希撮影
報道陣の数がいつもより少ない東芝本社ビル39階の会見室=2016年5月6日、宮武祐希撮影

 会見では、次のような質問が出た。「昨年11月に公表された役員責任調査委員会の報告書で、志賀さんは(不正会計の)関与者と認定されている14人のうちの1人だ。過去との決別という意味では別の人を選ぶべきだったのではないか」

 志賀氏は「私としては当時の役割、責任の中ではきちっと対処したと考えている」と短く答えた。そして、小林氏も次のように答えたのである。

「過去を議論していたら……」

 「若干のグレーという思われ方、その辺は今後、明確にすることが必要だと思うが、そういった過去を議論していたら、なかなか外から連れてくるのがいいのか、内部がいいのか(決まらない)」「今後、本当に強い東芝になるには、これだけグローバルの実績と原子力という国策的な事業をやるについては、余人をもって代え難いという、そちらを重く見た」

指名委員会の委員長を務めた小林喜光・三菱ケミカルホールディングス会長=2016年5月6日、今沢真撮影
指名委員会の委員長を務めた小林喜光・三菱ケミカルホールディングス会長=2016年5月6日、今沢真撮影

 さらに次のように付け加えた。

 「電力会社等を含め、副社長より外に向かっては会長という肩書で対応する方が適当だろうということ。分担を明確にした形でやっていただく。対外的なブランドの回復に働いていただくということで、志賀さんを会長にした」

 もちろん、過去の議論ばかりしていたら前に進むことはできないだろう。ただ、外部から「グレー」と見られている人に、対外的なブランド回復の役割を担わせることに無理はないのか。東芝はいま、信頼回復を最優先にしなければならない状況なのである。

「開示については十分な認識がなかった」

東芝の志賀重範・次期会長=2016年5月6日、今沢真撮影
東芝の志賀重範・次期会長=2016年5月6日、今沢真撮影

 別の記者からも質問が続いた。「ウェスチングハウスが2012年度と13年度に減損をし、その開示責任があったのは志賀さんだ。ウェスチングハウスの中だけでとどまっていたのか、ウェスチングハウスの会長としてどういう判断だったか」

 志賀氏は、「昨年11月に話したように、開示については十分な認識がなかった。ウェスチングハウスの中でとどまっていたという事実はない。東芝にはすべての財務諸表は提示している」と答えた。

 10億円や20億円の問題ではない。ウェスチングハウスの減損は2年間にわたり13億ドルにのぼる。1000億円を大きく超える巨額の損失なのだ。「十分な認識がなかった」だけですませようとすることは、どう考えても無理があるように思われる。

 社外取締役で構成した指名委員会がこうした人事選考を行った、ということは、減損の隠蔽(いんぺい)も、グレーなまま放置する、ということなのだろうか。新生・東芝の船出を打ちだそうとしたせっかくの記者会見にも、グレーな雲がたれこめた印象だったのだ。

記者会見後、報道陣に囲まれる東芝の綱川智・次期社長=2016年5月6日、宮武祐希撮影
記者会見後、報道陣に囲まれる東芝の綱川智・次期社長=2016年5月6日、宮武祐希撮影

 <「東芝・新体制発足へ」は今回で終わります>

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長く経済分野を取材してきた今沢真・毎日新聞論説委員を編集長にベテラン・若手編集者が経済・社会の最新情勢を追います。
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