参院予算委員会で質問に答える安倍晋三首相=2016年5月17日、長谷川直亮撮影
参院予算委員会で質問に答える安倍晋三首相=2016年5月17日、長谷川直亮撮影

政治・経済須田慎一郎の「一刀両断」

安倍首相6月1日解散断行で「4兆円減税」の論理

須田慎一郎 / 経済ジャーナリスト

 官邸発の複数の情報を総合すると、安倍晋三首相は「解散、総選挙、消費増税延期」を決断する意向を固めたようだ。

 スケジュール的には国会会期末となる6月1日、安倍首相は解散に踏み切ると見ていいだろう。そしてそのことは、言うところの「ダブル選挙」になることを意味する。

須田慎一郎さん=関口純撮影
須田慎一郎さん=関口純撮影

 そしてこの「ダブル選挙」の争点は、ズバリ、経済・景気対策ということにほかならない。

「10兆円超の経済対策」を公約に

 安倍首相は、伊勢志摩サミットの成果、結果を踏まえる形で10兆円超となる大規模な財政出動策の策定に動くことになる。

 この財政出動の大義名分は、「アベノミクスは一定の成果を見せつつあるが、世界的な景気後退リスクが高まりつつある。そのリスクに備える必要がある」というもの。

 そして「消費増税延期」は、この財政出動とワンセットのものとして位置づけられていると言っていいだろう。

 そのロジックは、以下の通りだ。

 増税延期の意味、それは「本来増税が決まっていたのを、延期する」ということだ。そして、「増税延期」ということは「増税分を還付する」ということになる。つまり、「減税」。

増税しないのが「4兆円の減税」

 少々強引な論理立てだ。人によっては「牽強付会(けんきょうふかい)」(道理に合わないことを無理にこじつけること)と強く批判するかもしれない。しかし、これが安倍政権が今回、消費増税を延期し、同日選を断行する際の、よって立つロジックなのだ。

参院決算委員会で質問に答える安倍晋三首相=2016年5月23日、藤井太郎撮影
参院決算委員会で質問に答える安倍晋三首相=2016年5月23日、藤井太郎撮影

 予定通り消費税率を2%引き上げ、10%としたならば、年間約5.4兆円の税収増につながる。しかし今回の税率アップによって軽減税率が適用され、そのことで約1兆円ほどが減殺されるため、実際の税収増は約4兆円強ということになろう。

 安倍政権としては、消費増税の先送りを約4兆円強の「減税」ととらえている。この「減税」に加えて、数兆円規模の真水の財政出動を実施することで、総額10兆円超の経済対策と位置付けている。

 そして与党サイドとしては「ダブル選挙」において、この一連の経済対策を公約に掲げて選挙戦に臨む方針だ。

野党が「対案」を打ち出せなければ与党の思うツボ

 そうなってくると野党サイドとしては、どうしてもその代案を策定する必要が出てくる。

 民進党及び共産党は、来年4月の消費増税に対して反対のスタンスをとっている。

 しかしその出発点が、与党サイドとまるで異なる。特に消費増税に関して「3党合意(旧民主、自民、公明)」の当事者である民進党に関して言えば、「アベノミクスは失敗に終わり、増税ができる経済環境にない」という形でアベノミクスを完全に否定する立場に立つ。

党首討論で岡田克也民進党代表(左)の発言を聞く安倍晋三首相=2016年5月18日、藤井太郎撮影
党首討論で岡田克也民進党代表(左)の発言を聞く安倍晋三首相=2016年5月18日、藤井太郎撮影

 だとしたら民進党はアベノミクスに代わる、経済・景気対策を打ち出す必要があることは言うまでもない。

 果たして有権者の支持を得られるような選挙公約、もしくはマニフェストの策定ができるのかどうか。民進党を中心に野党各党は、次の衆院選に関して言えば、参院選と同様に野党共闘の枠組みの中で臨むことになる。

 しかし消費増税延期を巡るスタンスは、野党間でもバラバラだ。

 もし経済対策に関して野党間の合意が成されないままに「野党共闘」が進められるとするならば、それは単なる"野合"と見なされ、間違いなく批判を浴びることになるだろう。

 そうした状況に陥ることは、それこそ与党の思うツボだ。さて、野党はどのような対抗軸を打ち立ててくるのだろうか。ダブル選挙の結果を占う上でも、その点には要注目と言えよう。

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須田慎一郎の「一刀両断」

須田慎一郎

須田慎一郎

経済ジャーナリスト

1961年、東京生まれ。日本大学経済学部卒。経済紙の記者を経て、フリー・ジャーナリストに。「夕刊フジ」「週刊ポスト」「週刊新潮」などで執筆活動を続けるかたわら、テレビ朝日「ビートたけしのTVタックル」、読売テレビ「そこまで言って委員会NP」ほか、テレビ、ラジオの報道番組等で活躍中。

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