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au「海外データ1日980円」で国際ローミング革命

石野純也 / ケータイジャーナリスト

 夏休みに、海外旅行に行こうとしている人もいるだろう。今年はオリンピックもあり、現地に行こうとしている人もいるはずだ。大手通信事業者と契約していれば、海外でも、普段使っているスマホを、そのまま利用できる。音声通話はもちろん、データ通信も定額で利用可能だ。こうしたサービスを、「国際ローミング」と呼ぶ。

 ただし、データ通信の料金は割高だ。大手通信事業者3社とも、料金は最大2980円。データの利用量に応じて、段階制になっているが、スマホを普通に使えばすぐに上限に達してしまう。

 10日間使うと、3万円近くかかるため、プライベートの旅行で使うのは、二の足を踏んでしまうだろう。

 NTTドコモは、データの容量を低く設定し、そのぶん料金を980円から1580円に抑えた「海外1dayパケ」というサービスを行っているが、逆に30メガバイトと容量が少なく、すぐに通信速度に制限がかかるのが難点だ。

24時間980円で海外データ通信ができる

 こうした中、auが8月から新たなサービスを導入する。夏モデルと同時に発表した、「世界データ定額」がそれだ。世界データ定額は、24時間、980円で海外でデータ通信を利用できるサービス。ドコモの海外1dayパケと料金は同じだが、使える容量は大きく異なる。

 auの世界データ定額は、使ったぶんだけ、国内用に契約しているデータパックから容量が引かれるのだ。

 つまり、5ギガバイト(GB)のデータパックを契約していれば5GB、3GBのデータパックを契約していれば3GBまで、海外でもデータを使えることになる。24時間ごとに980円払えば、国内にいるのと同じ感覚でデータ通信が可能になるというわけだ。

 これまでの海外データ定額やドコモの海外1dayパケは、海外ぶんのデータ通信が別計算になっており、この部分が大きな違いだ。

 世界データ定額を利用して、海外に10日滞在したとすると、料金は9800円。従来型の海外データ定額の約3分の1で、利用のハードルが低くなったといえるだろう。

24時間980円で、海外データローミングが可能になる新サービスの「世界データ定額」
24時間980円で、海外データローミングが可能になる新サービスの「世界データ定額」

日本人渡航先の7割をカバー

 使い勝手の面でも、世界データ定額は優れている。これまでの海外データ定額は、日本時間が基準で、1日単位で計算されていた。そのため、時差が大きな国にいると、朝から夕方まで、1日使っただけで、2日ぶんとカウントされてしまうこともあった。

 これに対し、世界データ定額は、利用者が自分で利用開始の設定を行う。そこから24時間、データ通信が利用できるのだ。たとえば、到着初日に世界データ定額をオンにしても、翌日の同じ時間まで、無駄なくデータ通信できる。

 逆に、帰国の24時間前にオンにすれば、飛行機に搭乗してフライトモードに切り替えるまで、きっちりデータ通信できることになる。

 利用対象国は、アメリカ、ドイツ、フランス、イギリスなどのヨーロッパ、韓国、台湾、タイなどの32カ国・地域。日本人の渡航先エリアの約7割というが、隣国でもある中国は含まれていないなど、まだ穴はある印象だ。

 また、料金は安くなるが、これまでの海外データ定額は、無制限にデータ通信が利用できた。出張などでパソコンをつないで通信するようなときは、お金はかかるが利便性は高いという考え方もできる。

 ただし、auも従来の海外データ定額をやめるわけではなく、世界データ定額も並行して提供される格好だ。安いが容量に限りのある新サービスか、高いが無制限にデータが使える旧サービスかを使い分けることができるのだ。

アプリで、自ら利用を開始する仕組み
アプリで、自ら利用を開始する仕組み

選択肢広がった海外でのスマホ利用

 1日980円という料金は、見方によってはまだ高いと感じるかもしれない。海外で現地の通信事業者が提供しているプリペイドのSIMカードを買い、SIMフリー端末に挿せば、もっと料金を節約することができる。

 一方で、プリペイドのSIMカードを簡単に買えるかどうかは、国によって大きく異なる。空港に自販機がある国もあれば、通信事業者のショップに並んで契約をしなければならない国もあり、安いからといって誰にでも勧められるものではない。

 ツアー旅行などでは、SIMカードを購入する時間を取れないかもしれない。また、SIMフリー端末を別途用意するのも、利用者にとってはハードルが高い。

 旅慣れた人や、海外に長期滞在する人などには現地のプリペイドSIMのメリットも大きいが、ちょっとした旅行であれば、国際ローミングの利用を検討してもいいだろう。

 そう考えられるレベルまで料金が下がったという意味では、auの世界データ定額は画期的だ。長くこの分野では競争が起こっていなかったが、auの新サービスがきっかけになり、他の大手通信事業者が国際ローミングの料金にメスを入れてくることにも期待したい。

「CHANGE!」をキャッチフレーズに掲げるauだが、旧プランももちろん残される
「CHANGE!」をキャッチフレーズに掲げるauだが、旧プランももちろん残される

 <「知ってトクするモバイルライフ」は、毎週火曜日に掲載します>

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石野純也

石野純也

ケータイジャーナリスト

1978年、静岡県生まれ。慶応義塾大学総合政策学部卒。2001年、宝島社に入社。当時急速に利用者数を伸ばしていた携帯電話関連のムック編集に携わる。05年には独立してフリーランスのジャーナリスト/ライターに転身。通信事業者、携帯電話メーカー、コンテンツプロバイダーなどを取材、幅広い媒体に原稿を執筆する。業界動向を記したビジネス書から、端末の解説書まで著書も多い。

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