資本業務提携の発表のため、記者会見場に入る日産のカルロス・ゴーン社長(左)と三菱自動車の益子修会長=2016年5月12日、徳野仁子撮影
資本業務提携の発表のため、記者会見場に入る日産のカルロス・ゴーン社長(左)と三菱自動車の益子修会長=2016年5月12日、徳野仁子撮影

政治・経済自動車不正リポート

日産頼みで体質が変わるか 三菱再生への疑心暗鬼

編集部

相次ぐ企業不正(2)

 不正が発覚した東芝、三菱自動車はそれぞれ再生に向けて走り始めている。週刊エコノミストの金山隆一編集長と、経済プレミアの今沢真編集長の対談は、両社が再生に向かう課題について話が及びます。【司会は山口敦雄・毎日新聞出版図書第二編集部編集長代理】

 −−日産自動車の傘下に入ることで、三菱自動車は再生に向かうでしょうか。

 金山隆一・週刊エコノミスト編集長 三菱自動車はもともとダイムラークライスラーと資本提携していましたが、リコール隠し発覚後、提携を解消され、三菱グループの「御三家」が支えたという経緯があります。とある企業の人が、今回、「三菱の人たちは、ダイムラーからルノー(日産自動車)に代わっただけで、ラッキーと思ってますよ」と言うんです。もし、三菱の中にそういう感覚があるとしたら、起こした事件の重大さを全く自覚できていない、世の中と相当にずれた感覚だと思います。

週刊エコノミストの金山編集長=2016年7月7日撮影
週刊エコノミストの金山編集長=2016年7月7日撮影

 ただ、それとは矛盾しますが、僕は三菱の再生は進んでいくと思っています。テクニカルなことを言うと、日産自動車の開発担当副社長を務めていた山下光彦氏が三菱自動車の副社長として開発部門のトップに入りました。彼は底上げが非常にうまい人らしいんです。山下氏が日産自動車の厚木(神奈川県)の研究所(テクニカルセンター)の担当だったときに、「家族を大事にしろ、もっと遊べ、人間の幅を広げることをやれ」と言って残業を禁止したんです。

 日産の研究所も、三菱の開発部門のあった岡崎(愛知県)と似ているところがあって、研究者も、内に籠もり、聖域化していた。そこで、ほかと交流せずにいたらダメだと。もっと世の中と対話しろ、交流しろ、一般の人の気持ちも知ろう、ということを強く言った。そういうことによって、研究所が活性化したと聞きました。そんな改革を山下さんはできるんじゃないかと思います。

 それと、日産から相当数の研究開発陣が、岡崎に乗り込むと言われています。だから、今度こそは、再生に向かうんじゃないかという期待があります。

 今沢真・経済プレミア編集長 三菱自動車の10年前のリコール隠しは、事故で死者が出るほどひどいものでした。あんな不祥事があったのに、その前からの不正がずっと続いてたわけです。相当根が深く、日産自動車は本当にやり切れるのかなとは思います。

三菱自動車岡崎工場の生産ラインで、車体を組み立てる作業員ら=2014年6月、和田憲二撮影
三菱自動車岡崎工場の生産ラインで、車体を組み立てる作業員ら=2014年6月、和田憲二撮影

三菱と日産の組み合わせは悪くない

 −−三菱一社では、なかなかできない技術開発、例えば自動運転とか電気自動車とか。日産が入ることで、共同開発は加速するでしょうか。

 金山 そうした効果はあると思っています。悪い組み合わせではない。日産と三菱が資本提携するのは、お互いに補完できると思います。でも、だから、「シャンシャン」にしてはダメです。不正が続いていた本質はどこにあったか、どうしたら繰り返さないかを自分たちがきっちり検証しないといけないと思います。

 今沢 東芝も同じです。不正が発覚して、対応してきてはいますが、私は不正への反省が足りないと思っています。1000億円を超える損失を隠していたことについて、いまだに「開示することに思い至らなかった」と言っているんですよ。海外から日本の資本市場がどう見られるか。

 三菱自動車についても、燃費不正が発覚した4月20日から、「全容を解明した」と説明した6月17日まで5回にわたり会見しました。会見のたびに新しい不正が出てきました。なぜ、そんなことになったのかをよく考えてほしいです。

 最初の記者会見で、真相を外部の第三者による委員会を設置して調べてもらうと説明していました。第三者委員会を否定するわけではありませんが、少し早すぎるという気がしました。自分たちで徹底的に調べようという気概が感じられませんでした。まず社内で調べて、それを第三者の目で検証してもらうのが本当だと思うんです。

記者会見に臨む三菱自動車の(手前から)中尾龍吾副社長、益子修会長、相川哲郎社長(肩書きは当時)=2016年6月17日、後藤由耶撮影
記者会見に臨む三菱自動車の(手前から)中尾龍吾副社長、益子修会長、相川哲郎社長(肩書きは当時)=2016年6月17日、後藤由耶撮影

試験を担当する部は経営直轄にすべきだ

 金山 自動車業界に詳しい人と話していて気づいたのですが、燃費不正をしていた試験を担当する部が、開発部門の組織の中に入っている。自分たちの部門の失点になることは上に言いにくいわけです。開発部門の中に品質管理を担当する部とか、試験、実験を担当する部を入れてはダメです。経営直轄にして直言させ、それが出世にも関わらないような組織にしないと、同じような不正が繰り返されます。

 今沢 三菱自動車の場合は、燃費という車の性能のポイントになるところで、試験を担当する部に責任を負わせていたんです。それはやはりおかしい。しかも、軽自動車は子会社にそれをやらせていたんですからね。

 それと、違法なやり方で試験をしていた問題は1991年から続いていましたが、三菱自動車の社内調査は過去10年にとどめているんです。資料の保管期間は10年だから、という説明をしています。でも、販売から10年以上の車は走っています。もっとさかのぼって調べないといけないんじゃないかと思います。第三者委員会の調査報告書は7月末にまとまることになっていますが、その点をどう見ているのかに注目しています。(つづく)

週刊エコノミストの金山編集長(左)と経済プレミアの今沢編集長=2016年7月7日撮影
週刊エコノミストの金山編集長(左)と経済プレミアの今沢編集長=2016年7月7日撮影

 <次回「企業が不祥事や内紛を隠せない時代になった」>

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長く経済分野を取材してきた今沢真・毎日新聞論説委員を編集長にベテラン・若手編集者が経済・社会の最新情勢を追います。
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