くらし20年後の暮らしとお金

老後資金で大切な「大損リスクを減らすこと」

塚崎公義 / 久留米大学商学部教授

サラリーマンと老後資金(2)

 サラリーマンは、現役時代の蓄えと退職金を銀行に預金しておき、それを取り崩しながら老後を過ごす人が多いようですが、発想を転換して「退職金は公的年金の受け取り開始を70歳まで待つために使い、70歳以降は公的年金で生活する」ことを検討しましょう。そう考えた場合、70歳時点の金融資産は「万が一の時の備え」の役割となりますから、インフレに強い資産で持ちましょう。

年金受給を70歳まで待てば、その後は何とか生活できる

 厚生労働省によると、標準的なサラリーマンと専業主婦の世帯の場合、月約22万円の年金が受け取れます。そして、年金は、受給開始を70歳まで待つと、毎回の受給額が42%増えます。将来の年金は少子高齢化によって最悪ケースで2割程度目減りするという厚労省の試算もありますが、この年金額ならば、老後は何とか生活していけるでしょう。

 従って、退職金は、年金受給開始を70歳まで待つために使ってしまって構わないことになります。もちろん、そうは言っても、70歳以降も万が一の出費に備えて数百万円は持っておきたいところです。その分は、何事もなければ相続されて葬儀費用となるはずです。

 余談ですが、筆者と異なり「財政が破綻して年金が受け取れなくなる」と考えている方には、年金を60歳から受給しはじめて、全額を米ドルに換えておくことをお勧めします。財政が破綻するような国の通貨は誰も持ちたがらないでしょうから、財政破綻と同時に円売りドル買いが殺到してドルが暴騰するはずだからです。

70歳時点での資産はインフレに強いものに分散

 サラリーマンは一般的に、住宅ローンを借りている時から、万が一に備えてある程度の金融資産を持っています。退職金を受け取ると手元資金が一時的に増えて、その分は70歳までに生活費として使われていき、70歳時点では再び万が一のための資金が手元に残ることになります。つまり、この部分は根雪のように一貫して保有されているわけです。

 使用されるまでの期間が長いので、その間にインフレになっている可能性が高いことになります。そうであれば、この部分はインフレに強い資産で持つべきでしょう。その際には、分散投資を心がけましょう。

 たとえば日本株の上場投資信託(ETF)、外国株のETF、米ドルのMMF、変動金利型国債、物価連動国債などをバランスよく持っておけば、どれかが値下がりしても大損は避けられるでしょう。米ドルのMMFは普通預金のようなものですし、物価連動国債は2017年2月以降に10万円単位での販売が検討されているようです。

投資する際は「時間分散」を心がける

 株式(ETF)や外貨は値下がりリスクがあるので嫌だという場合には、変動金利型国債と物価連動国債を集中的に持つという選択肢もあります。

 なお、株式や外貨などは、投資する際の時間分散も心がける必要があります。一度に多額の投資をすると、「後から振り返って、投資した時が最高値だった」という可能性があるからです。

 銘柄分散も時間分散も、大きくもうけるチャンスは減りますが、大きく損をするリスクを減らすことができます。老後資金に関しては大きく損するリスクを減らすことを優先すべきでしょう。

 <久留米大学教授の塚崎公義さんが、老後の生活に困らないようにするにはいま、どうしたらよいのかを解説します。今回は新シリーズ「サラリーマンと老後資金」の2回目です。「20年後の暮らしとお金」は毎週金曜日に掲載します>

預金を株式などの「インフレ耐久資産」に分散しておく

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塚崎公義

塚崎公義

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関係の仕事に従事した後、2005年に銀行を退職して久留米大学へ。「退職金貧乏 定年後の『お金』の話」「老後破産しないためのお金の教科書」「増補改訂 よくわかる日本経済入門」「世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書」「なんだ、そうなのか! 経済入門」など著書多数。

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