記者会見で頭を下げる三菱自動車の益子修会長兼社長(左)=2016年8月30日、北山夏帆撮影
記者会見で頭を下げる三菱自動車の益子修会長兼社長(左)=2016年8月30日、北山夏帆撮影

政治・経済自動車不正リポート

国交省の顔に泥を塗った三菱自 新たな燃費ごまかし

編集部

再計測でも不正(1)

 国土交通省は8月30日、三菱自動車が販売している軽自動車以外の9車種のうち、8車種について販売自粛を指示した。国交省が8車種の燃費値を計測した結果、カタログ掲載値を下回り、三菱自動車に再計測させた燃費値も下回ったためだ。さらに、国交省は、三菱自動車の再計測のやり方に不正があったと発表した。いったい何があったのか。詳しく報告する。

 販売自粛の指示を受けたのは、RVR、デリカD:5、ミラージュ、パジェロ、アウトランダーPHEV、アイミーブ、ミニキャブ・ミーブ・トラック、ミニキャブ・ミーブ・バンの8車種。

 燃費不正の経過を振り返ってみよう。三菱自動車は4月20日、軽自動車4車種で燃費を良くみせる偽装があったと発表し、生産と販売を中止した。三菱は燃費値を再計測し、顧客への賠償を決め、国交省に再発防止策とともに提出した。国交省はこれを認め、7月から軽自動車の生産と販売が再開された。

 三菱自動車は、調査の中で、軽自動車以外でも不正計測や偽装があったことを明らかにした。そして、5月に軽自動車以外の9車種の燃費値を再計測し、国交省に提出した。この9車種は販売中だが、三菱は、カタログに載せた燃費値と、実際の燃費値との差は「プラスマイナス3%程度」であり、車の個体差の範囲内であるとして販売を続けてきた。

ミラージュもRVRもパジェロも

 ところが、国交省が確認のため9車種の燃費値を計測し、カタログ値や三菱の再計測値と突き合わせたところ、8車種がカタログ値を下回り、再計測値も下回った。カタログ値とは最大で8.8%、平均で4.2%の差があった。三菱の「3%以内」という主張を大きく上回る差だった。

三菱自動車のミラージュ
三菱自動車のミラージュ

 例えばミラージュのカタログ記載値は「1リットル当たり25.4キロ」だった。三菱の再計測値は「26.0キロ」。カタログより良い値が出たと届け出た。ところが国交省の計測値は「24.0キロ」。カタログ値より5.5%悪く、三菱の再計測値より7.7%悪い値だった。

 ミラージュだけではない。RVRもパジェロも、国交省の計測値はカタログ値だけでなく三菱の再計測値を下回ったのである。国交省の担当者は「なぜこれだけの差が出るのか」と三菱に説明を求めた。その結果、次のようなことがわかった。

 燃費値を算出するもとになる走行抵抗値の測定法に問題があった。三菱が軽自動車で偽装した走行抵抗値である。走行抵抗値は、試験車を実際に走らせて計測する。計測ごとにバラツキが出るが、法規は3つの計測値の平均をとるよう定めていた。

 国交省は5回計測し、最も良い数値と悪い数値を外し、中間の3回の平均値を出した。ところが、三菱自動車は十数回以上計測し、そのうち最も良い数値3回分の平均を出したというのだ。70回も計測した車もあったという。

 国交省は、この三菱自動車のやり方について、「ばらつきを抑えた上で走行抵抗を測定するとの試験法の趣旨に反している」として「不正」と断定した。そして、三菱に対して「法律の趣旨を踏まえ、修正後の燃費値による表示が適正に行われるまで販売を自粛するよう要請する」との指示文書を渡した。燃費不正発覚後の再度の不正で、顔に泥を塗られた国交省の怒りがにじみ出ているような書きぶりだ。

燃費データ不正の発覚後に行われた三菱自動車による走行試験デモ=2016年5月2日、宮武祐希撮影
燃費データ不正の発覚後に行われた三菱自動車による走行試験デモ=2016年5月2日、宮武祐希撮影

スズキは全26車種で「合格」

 軽自動車で燃費不正が発覚した後、三菱自動車は当時の相川哲郎社長(6月に引責辞任)の監督のもとで、念には念を入れて正しいやり方で再計測したはずだった。その再計測での不正だった。

記者会見に臨む三菱自動車の益子修会長兼社長(左)=2016年8月30日、北山夏帆撮影
記者会見に臨む三菱自動車の益子修会長兼社長(左)=2016年8月30日、北山夏帆撮影

 三菱の直後に不正が発覚し、再計測を実施したスズキと比較すると、三菱自動車の異常さが浮き彫りになる。

 スズキは、三菱自動車と同様、法規で定められていない測定法で走行抵抗値を測定してきたことが発覚した。26車種を再測定し、国交省に提出した。国交省が確認のため測定したところ、26車種すべてでカタログ記載値を上回り、再測定値と比べてもほぼ同様の値になったというのである。

 そして三菱自動車の益子修会長兼社長は8月30日、国交省の販売自粛指示を受けて記者会見をし、最も良い数値を三つ選ぶ測定方法について「法令違反ではない」と驚きの主張をするのだ。次回、この記者会見を詳しく報告する。

 <次回「「法令ギリギリ拡大解釈」燃費計測は三菱自の伝統?」>

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長く経済分野を取材してきた今沢真・毎日新聞論説委員を編集長にベテラン・若手編集者が経済・社会の最新情勢を追います。
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