2015年に映画化された「くちびるに歌を」の1シーン
2015年に映画化された「くちびるに歌を」の1シーン

社会・カルチャー青春小説の系譜

かけがえのない仲間をたたえる物語「くちびるに歌を」

鶴谷真 / 毎日新聞学芸部記者

 生身の体を楽器とし、その集合体のチームワークでもって、一度切りの奇跡の歌声を目指す闘いに引き込まれる。合唱に打ち込む中学3年生たちの成長を描くのが、中田永一さんの「くちびるに歌を」だ。

五島列島の中学校合唱部が物語の舞台

 物語の舞台は長崎県・五島列島のある中学校の合唱部。本土の長崎市や佐世保市へはフェリーで2時間半ほどかかる。主人公は2人、仲村ナズナと桑原サトル。ナズナは合唱部の中心メンバーで、サトルはひょんなことから、3年になって合唱部入りすることになった。

 登場人物たちが個々に抱える内面の葛藤が、まずは読みどころである。ナズナは幼くして母をがんで失い、父…

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鶴谷真

鶴谷真

毎日新聞学芸部記者

1974年、神戸市出身。2002年毎日新聞社に入社し、岡山支局、京都支局を経て08年に大阪本社学芸部。13年秋から東京本社学芸部。文学を担当している。