講談社の本社前=2016年10月4日、田中学撮影
講談社の本社前=2016年10月4日、田中学撮影

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巨人アマゾンの「暴挙」に怒る講談社の言い分

編集部

 出版大手の講談社は10月3日、通販大手アマゾンが運営する電子書籍読み放題サービスで配信していた書籍や雑誌など約1200点を、アマゾンに無断で配信を停止されたことを明らかにした。講談社は、「一方的な配信停止に強く抗議する」と怒りの文書を同社ホームページに掲載した。出版社がこうした文書を公表するのは極めて異例だ。何が起きているのかを探った。

 アマゾンの読み放題サービス「キンドル・アンリミテッド」は8月3日スタートした。国内で出版された本、マンガ、雑誌など12万件以上が、月額税込み980円で読み放題になる触れ込みだった。アマゾンへの登録が必要で、スマホやパソコン、タブレットで閲覧できる。

 講談社の説明によると、同社はアマゾンとの契約に基づき、サービス開始時に約1200点を読み放題の対象として提供した。しかし、アマゾンから何の連絡もなく、1週間ほどで17点が配信対象から除外された。除外されたのはタレントの中島知子さん、グラビアアイドルの川村ゆきえさんの写真集など購読ランキング上位のものだった。

 同社は、「アマゾンが独断で配信停止し得るものではない。著作者や読者に大きな不利益をもたらす」として、8月中旬以降、アマゾン側に抗議し、元に戻すよう繰り返し求めたが、受け入れられなかった。

抗議中にすべての配信対象を無断で停止

 そして、抗議を続ける最中の9月30日夜から、この17点以外も順次、配信停止になり、翌日朝にはすべてが一方的に配信停止になったというのだ。

 講談社の広報室長は、「アマゾン側から事前に何の通告も連絡もなく、本当に驚いた。サービスをともに運営するパートナーとしての商売の信義があるのかどうか……」と、アマゾン側のやり方に驚きを隠さない。

 講談社がこれほど怒るのも無理はない。なぜか。本やマンガの作者や著作権者の中には、「読み放題サービス」への配信に抵抗感を示す人が少なくない。紙へのこだわりや収入面の心配など理由はさまざまだ。

 講談社の担当者が、その一人一人に「できるだけ多くの人に作品に触れてほしいので協力してほしい」と説得する作業をし、文芸書、実用書、ライトノベル、児童書、絵本、雑誌、写真集など1200点の配信にこぎつけた。それが、一方的に無にされてしまったというのだ。

 読者に説明する責任もある。閲覧できていた講談社の本や雑誌が突然すべて見られなくなった。不審に思う読者が多かったに違いない。講談社は、「無断で配信を停止されたという事実を、読者や著作者に一刻も早く知らせるため、抗議の文書を公表した」と説明する。今後も、原状への復帰とルールに従った配信を求めていくという。

閲覧数が予想以上に

 配信停止は他の出版社にも広がっている。なぜ、アマゾンは出版社の抗議を無視して無断で配信を停止するような挙に出たのだろうか。

 「電子書籍読み放題」は、アマゾンだけでなく他にも行われている。ただ、先行サービスが雑誌が中心だったのに対し、アマゾンは本やマンガも対象にしたため注目された。

 関係者によると、配信対象を広げるため、アマゾンは年内は、出版社に有利なコンテンツ利用料を支払う契約だったという。また、読者が本やマンガの10%以上を読むと購読したと見なして利用料支払いの対象にする内容だった。

 マンガや写真集は読まれる時間が速く、アマゾンの予想以上に閲覧されることになった。出版社への支払額も想定をはるかに上回ってしまったようだ。

 アマゾンは、8月下旬には、出版社へ特別条件の見直しの検討を求める通告を出し、これに反発した複数の出版社が配信をやめたり、新たな配信を見送るなどしていた。

 契約に基づいていくつかの企業が共同で事業を行うなかで、想定外の事態はときとしてあることだ。普通は話し合いで解決策を見つけるが、話し合いがつかず、一方が何らかの措置をとることもゼロではない。ただ、その場合も普通は事前通告をする。いきなり一方的な行動をすると、相手への影響がさらに大きくなってしまうからだ。

 こうした経緯についての経済プレミア編集部の取材に対し、アマゾンはメールで回答した。「多々質問があるかと存じますが、対外的にお伝えするステートメントは以下となります」との前置きで、「書籍や動画などを対象とした数多くの定額利用型のサービスと同様に、対象作品は随時変動しています」などとコメントした。

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長く経済分野を取材してきた今沢真・毎日新聞論説委員を編集長にベテラン・若手編集者が経済・社会の最新情勢を追います。
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