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中古スマホ健全流通を妨げる「端末転売」の人たち

北俊一 / 野村総合研究所上席コンサルタント

 携帯電話端末には「SIMロック」という仕組みがある。SIMロックがかかっていると、例えばドコモで購入した携帯電話は、auやソフトバンクのネットワークでは使えない。ただし、購入から180日以上たてば、SIMロックを解除することができる。

 このような仕組みを設けている理由は、端末の割賦代金の初回支払いが未納で、支払い督促後も支払われない端末が、他社のSIMカードとネットワークで使われないようにするためである。

 また、初回支払いの未納が確定し、通信停止、強制解約となった後、端末購入から約180日後に「IMEIロック」もかかる。

 IMEIとは、世界の全ての携帯電話に一つずつ割り当てられた機体番号である。通信事業者は180日目以降、踏み倒された携帯電話のIMEIを自社データベースに登録し、その端末を使えないようにロックする。SIMロックとIMEIロックを組み合わせると、料金を踏み倒された端末は、180日目以降は自社と他社のネットワークで利用できなくなるのだ。

転売目的で端末を購入、料金を踏み倒す不届き者

 このような厳格な仕組みを導入しているのは、転売目的で不正に端末を入手する不届き者が、一定数存在するためである。端末購入後すぐに転売し、代金は踏み倒す。そのような端末とは知らずに、中古端末として購入したユーザーが、180日後にIMEIロックがかかり、突然使えなくなる、いわゆる、「赤ロム」化という事案が発生しているのだ。

 しかし一方で、この厳格な仕組みのため、例えば端末購入から180日以内に、海外旅行や海外出張に行くユーザーが、携帯電話料金を安く抑えるために現地通信事業者のSIMカードを挿して使おうとしても、端末のSIMロックを解除できないので使えない。

 また、例えば長期間、滞りなく料金を支払っている善良なユーザーが、同じ通信事業者のまま機種変更をした場合でも、180日以上たたないとSIMロックを解除できない。つまり、一握りの悪意をもった人間のために、圧倒的多数のユーザーが不利益を被っている状況といえる。

SIMロック解除期間は100~120日に短縮される方向

 11月7日、総務省で「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」の第3回会合が開催された。会合の論点の一つが、SIMロック解除の柔軟化だった。結論から言うと、180日は長すぎるということで、初回未納が確定する約100~120日に短縮されることになりそうだ。

第3回とりまとめ資料へのリンクはこちら

 第2回会合では、IMEIロックという仕組みがあるのだから、SIMロックは不要なのではないかという議論もあった。しかし、各通信事業者から第3回会合で示されたデータで、初期のSIMロックは「やはり必要」ということになった。

 そのデータは、端末代金の不払い発生状況だ。新規契約で端末を購入するユーザーはもとより、機種変更で端末を購入する既存ユーザーの中に、端末代金の不払いが相当数発生しているというデータである。

 会合の構成員なので具体的な数字は言えないが、それは私の想像を超えた高い数字だった。もちろん、データの中には、“善意”のユーザー、何らかの事情で携帯電話料金を支払えなくなったユーザーも多数存在するはずだ。

 もしSIMロックを廃止すると、代金未回収の赤ロム端末が中古市場に今以上に流れ込み、MVNO(格安スマホ)を含めた他社のネットワークでも利用されることは必至である。今後、MVNO市場の拡大と健全な中古端末市場を確立するためには、何としても避けたい事態だった。その結果、SIMロック廃止は見送り、解除期間の短縮化を打ち出すことになった。

 総務省と通信事業者が今後、SIMロックとIMEIロックについて、ユーザーの利便性確保と安心・安全のバランスを十分に考慮しながら、ガイドラインを慎重かつ大胆に見直してくれることを望む。

 <「最適メディアライフ」は原則、金曜日に更新します>

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北俊一

北俊一

野村総合研究所上席コンサルタント

1965年、横浜市生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科修了。90年株式会社野村総合研究所入社。四半世紀にわたり、情報通信関連領域における調査・コンサルティング業務に従事。専門は、競争戦略、事業戦略、マーケティング戦略立案及び情報通信政策策定支援。総務省情報通信審議会専門委員。

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