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善と悪のおぼろな境目を描く吉田修一「犯罪小説集」

重里徹也 / 文芸評論家、聖徳大教授

 犯罪小説の成否を分けるものの一つは、加害者(犯人)の人物像の描かれ方にどれだけ説得力があるかだ。「心の闇」で済ませてしまうのなら、説明不足の不満を受けかねない。何のための小説か、ということになってしまう。丁寧にいえば、いかに「心の闇」に肉薄するかが問われることになる。

 読者が納得できるぐらいに加害者の心理を描いてほしいというのとは少し違う。犯罪の経緯や犯人の周囲を浮き彫りにしながら、どこで魔がさしたのか、犯人の心の根っこに何があるのか、読者に想像できるように描写してほしいと思うのだ。

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重里徹也

重里徹也

文芸評論家、聖徳大教授

1957年、大阪市生まれ。大阪外国語大(現・大阪大外国語学部)ロシア語学科卒。82年、毎日新聞に入社。東京本社学芸部長、論説委員などを歴任。2015年春から聖徳大教授。著書に「文学館への旅」(毎日新聞社)、共著に「村上春樹で世界を読む」(祥伝社) などがある。