東芝本社の看板=2015年7月29日、内藤絵美撮影
東芝本社の看板=2015年7月29日、内藤絵美撮影

政治・経済東芝問題リポート

米原発数千億円損失なら今度こそ“東芝解体”か

編集部

「数千億円損失?」への疑問(2)

 「原子力事業で数千億円の損失の可能性がある」と昨年末に発表した東芝。子会社の米原子力大手ウェスチングハウスに対する東芝経営陣の内部統制がまったく働いていなかった、とする見方は強い。数千億円という損失額があまりにも巨額であり、そのリスクを東芝経営陣が把握するのが遅すぎたからだ。

 今回の損失は、ウェスチングハウスが、米国の原発建設工事を共同で行ってきたS&W社を買収したことをきっかけに発覚した。その経緯を時系列で整理してみよう。

 まず、2015年10月にウェスチングハウスがS&W社を買収すると発表した。この発表の際、S&W社が担当してきた原発建設の現場工事を、別の米大手建設会社であるフルアー社に下請けとして発注する方向で交渉していることが明らかにされた。

 その2カ月後の同年12月末にS&W社の買収手続きが完了した。このとき、フルアー社が下請けに入ることが本決まりになった。これは、「建設工事能力の一層の改善・強化を図る」のが狙いだと説明された。原発建設にあたる作業員は、フルアー社が雇うことになった。この経過は、S&W社では、建設工事がうまく進まなかったことを示唆している。

 フルアー社は、改めて工事完成までの費用の見積もりを行い、その結果を16年10月初めにウェスチングハウスに提出した。ウェスチングハウスが約2カ月かけて見積もりを精査し、12月初めに東芝に報告した。そして、12月中旬に東芝の綱川智社長に「数千億円の損失が生じる可能性がある」と報告されたのである。

東芝の綱川智社長=2016年12月27日、北山夏帆撮影
東芝の綱川智社長=2016年12月27日、北山夏帆撮影

「チェックした時期が遅かった」

 昨年12月27日に行われた東芝の記者会見では、「フルアー社から工事の見積もり資料が上がってきたのが10月の初め、そして12月中旬に綱川社長が具体的なリスクを把握したというが、そうした時期は適切だったか」という質問が記者から出た。綱川社長は次のように答えた。

 「フルアー社がチェックした時期、そしてそれをウェスチングハウスが再度チェックした時期が遅かったと考えている」

 綱川社長は、苦虫をかみつぶしたような表情で答えた。この原発工事費の見積もりは、ウェスチングハウスによるS&W社買収の手続きの一つとして16年12月末までに確定させる必要があった。そのギリギリの時期にとんでもない結論が出てきてしまったからである。

 数千億円の損失の可能性という企業経営を左右するようなリスクがあるなら、ギリギリでなく、もっと早く第一報が上がってこなければならない。ウェスチングハウスは今回、リスクの把握も、スケジュール管理も適切ではなかったといえる。

 そして、12月末というタイミングは、東芝にとって悪夢と言っていい。数千億円の損失が現実のものとなった場合、東芝の決算期末である3月末、あるいは決算発表が行われる5月中旬までに、穴埋めの方策を考えなければならないからだ。3~4カ月で数千億円を穴埋めするのは極めて難しい。窮地に追い込まれるとはこのことだろう。

東芝本社=2015年7月21日、竹内紀臣撮影
東芝本社=2015年7月21日、竹内紀臣撮影

2兆円規模の原発建設リスク管理が東芝にできるのか

 S&W社買収に伴うリスク管理は、当然ながら当事者のウェスチングハウスが十分に行うべきだった。そして、東芝には、親会社として、子会社のウェスチングハウスに買収に伴うリスクをすべて説明させ、納得いく説明がない場合は、買収に「NO」の判断を下す選択肢もあったはずだ

 ウェスチングハウスは米国で原発4基の建設を進めている。事業規模は約2兆円にのぼる。仮に東芝やウェスチングハウスが今回の危機を乗り越えることができたとしても、ウェスチングハウスがリスク管理を適切にでき、東芝がそれをきちんと監督できるのだろうか、という疑問が生じるのである。

 <次回「債務超過回避へ巨人東芝 再度の大リストラへ」>

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長く経済分野を取材してきた今沢真・毎日新聞論説委員を編集長にベテラン・若手編集者が経済・社会の最新情勢を追います。
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