社会・カルチャー街の文化漂う 秘蔵の宿

千葉で楽しむスポーツと自然 リソル生命の森

稲葉なおと / 紀行作家、一級建築士

8700円(税込み)~

 本連載では既に80軒を超える宿を泊まり歩いているが、今回は敷地面積では最大規模の宿泊施設だ。スタッフに尋ねると「約100万坪です」という答え。私の頭上に浮かんだ「?」が見えたのかもしれない。すぐに「東京ドーム70個分です」と付け足された。

 千葉県の房総半島のつけ根。都心から車で約1時間。JR外房線・誉田駅から無料送迎バスで約20分の広大な敷地には、国内外のオリンピック強化選手も五輪直前合宿で訪れる屋内外のトレーニング施設に、宿泊施設が点在する。

広大な敷地にテニスコート、サッカー場、プール…

 屋外にはゴルフ場、400メートルトラック、テニスコート、アーチェリー場、サッカー及びラグビー場、そしてレジャープール(夏季のみ)など。屋内には200メートルトラック、体育館、25メートル温水プール、26種類38台の本格的なマシンが並ぶジム、大浴場、健康チェックができるクリニックまで。宿泊施設は、全37室が最小でも62平方メートルのスイートルームというホテルに加えて、1~2人から8人用のログハウスが74棟並ぶ。

 今回の宿泊取材の目的は、さまざまなスポーツ体験と、貴重な食の空間を楽しもうというものだ。

 着いてすぐに、フランス生まれのフォレストアドベンチャー(自然を楽しむ森の冒険施設)「ターザニア」を訪れる。長さ445メートルのロングジップスライド(ターザンロープ)をはじめ、広大な森の中に張り巡らされたワイヤを伝って、木から木へと歩き、時に飛び移って回るアドベンチャー施設だ。約2時間のコースを巡る間、森のあちこちから大人の歓声が聞こえてくる。

 利用者は家族連れがほとんどと思っていたら、カップルやグループ、企業の研修にもたびたび利用されるという。樹木の香りと高い木の上からの眺めを楽しみつつ、参加者が協力し合っての冒険は爽快感に包まれていた。

旧スイス大使館を移設したレストラン

 宿泊はホテル棟へ。スイートでありながらスイートとは思えないリーズナブルな料金の部屋からは、広大な敷地を一望できる。

 夕食はホテルの向かいに建つ旧スイス大使館を移設した和食どころ「翠州(すいす)亭」へ。もとは1930(昭和5)年に男爵の別邸として建てられたもので、国の登録有形文化財だ。外観はもちろん、屋内の建具、天井、床の間もそのまま残っており、名建築でいただく会席御膳はとりわけぜいたくな気分に浸れる。

 翌朝はホテル1階の和・洋・中そろったビュッフェ会場へ。明太子やしらすなど9種類のトッピングが並ぶ和食コーナーも魅力だが、入り口に並ぶ焼き立てのパンと、その説明書きに目が引き寄せられた。手書き文字ならではの魅力と、文面も「バターたっぷり、サックサクの食感と甘みが美味」というように、読むとつい手を伸ばしたくなる。香ばしいパンはクロワッサンなど5種類、手づくりジャムが3種類。

 サラダコーナーも、並ぶ野菜の主成分と効能について手書き文字で丁寧に書き込まれている。トマトがしわ予防に、水菜は風邪の予防になるのかと説明を読みつつ、すべての野菜に手が伸びてしまった。

世代にかかわらず楽しめる

 朝食後は夜まで屋内施設を楽しんだ。1日2160円を払えば、施設利用とさまざまな教室プログラムへ自由に参加できる。1週間のプログラム数が約100本。ぎっしり埋まった予定表を見ると、大型客船ですごす日々を思い出す。

 水泳、社交ダンス、テニス、太極拳等々。終日さまざまな教室プログラムが満載というのは、クルーズ体験に似ている。午前中は温水プールで黙々と泳ぎ、午後はヨガの初級と中級クラスに参加した。ひさしぶりのヨガ体験は、インストラクターの説明が明快でわかりやすく、聞き取りやすい声で繰り返される「自然呼吸です」という言葉が耳に残った。

 運動後は大浴場へ。森を眺めながらのひと風呂がまた心地よい。ここは子どもから学生、社会人、年配者まで幅広い客層に支持される施設だ。だがふと、別の見方も浮かび上がってくる。

 スポーツリゾートとして学生時代に合宿で訪れた人が次はカップルで訪問。結婚してからは家族で訪れ、仕事を引退後は健康チェックも含め運動と大浴場を楽しみに通うようになる。ここは生涯を通じて利用できる健康増進の施設なのだ。

リソル生命の森/千葉県長生郡長柄町上野521の4/電話:0475・35・3333/8700円~(1室2人利用時の1人料金、税込み)。「ターザニア」は3月初旬まで改修工事中。詳しくはウェブサイトで確認を。https://www.seimei-no-mori.com

 <「街の文化漂う 秘蔵の宿」は、毎週木曜日の更新です>

経済プレミア最新記事へ

稲葉なおと

稲葉なおと

紀行作家、一級建築士

1959年、東京都生まれ。東京工業大学建築学科卒。400軒以上の名建築の宿を宿泊・取材。旅行記、小説、児童文学、写真集を発表している。現在も長編小説を雑誌「ダンスビュウ」に連載中。第10回JTB紀行文学大賞奨励賞受賞。主な著書に「匠たちの名旅館」など。近著に「モデルルームをじっくり見る人ほど『欠陥マンション』をつかみやすい」(小学館)。公式サイトでお勧めホテル、名建築の写真を多数公開中 http://www.naotoinaba.com (顔写真の撮影は寺崎誠三さん)

イチ押しコラム

知ってトクするモバイルライフ
手のひらにしっかり収まる「アクオスR2コンパクト」。発売は1月

日本人の好みに応えたシャープ・アクオス小型スマホ

 シャープが、小型スマホの「アクオスR2コンパクト」を開発。ソフトバンクから2019年1月に発売されるほか、SIMフリーモデルとし…

ニッポン金融ウラの裏

NISAに最初の「5年満期」更新しないと非課税消滅

 少額投資非課税制度(NISA)が初めての期間満了を迎える。一定の手続きによって、さらに5年間の非課税期間延長となるが、いま、証券…

藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」
地下化されたワルシャワ中央駅上の広場。スターリン建築と民主化後のビルが林立する(写真は筆者撮影)

西に移動させられた国ポーランド 首都ワルシャワの今

 ◇ポーランド・ワルシャワ編(1) 36年前、高校の文化祭のディベートで、「史上最大の英雄は誰か」というお題に、「ポーランドで共産…

メディア万華鏡
週刊文春11月1日号

メディア騒がすドタキャン沢田研二の「格好いい老後」

 騒ぎ過ぎじゃないか。取り上げ方の息もなんだか長い。ジュリーこと沢田研二さん(70)が、10月17日にさいたまスーパーアリーナで予…

職場のトラブルどう防ぐ?

「部下の夫から連日クレーム」42歳女性上司の困惑

 A美さん(42)は、夫が院長を務めるクリニックの事務長を務めています。2カ月前から経理担当として働いているB子さん(33)の夫か…